3ケンカ別れしたビートルズ、
「全員がジョージ」のムーンライダーズ。


- さっきのパロッツの演奏を見ていたら、
いろいろ細かいところに気づきましたよ。
「ジョン・レノン、似てるなぁ」とか。

- あまりに横顔が似てるから、
さっき、ぼくらの間では
整形疑惑さえあったよね(笑)。
- 会場
- (笑)

- そして、ギターのストラップね。
あれはビートルズが
アップル社の屋上で最後のライブをやった
「レット・イット・ビー」のときと
同じですねえ、どうやらね。
これも「諸説ある」んですけど。

- これのことですか。


- そうです。これも「諸説」あって。
この模様の大きさが違うストラップが2種類
存在するんですよ。
ジョン・レノンの身長から割り出して、
使っていたのは「大きい方か、小さい方か」で
もめてたりするんですよ。

- へえー!

- わたしは2種類とも買いました。
自分の中でもめたくないので!
- 会場
- (笑)

- 好きだねぇ(笑)。
そういう意味では、
最近知ったばっかりなんだけど、
あのライブのときに、
メンバーが毛皮のコートを着ているんだけど、
それ、全員の奥さんのなんだって?

- リンゴだけ、奥さんのコートですね。

- あ、そうなんですか。

- リンゴは赤いコート着てました。
しかし、あそこでポールは頑張って、
ジャケットを着てないんです。

- 寒いのに、着てないんですよね。
それは、おしゃれのため?

- いや、あの時期のポールは
頑張って、踏ん張っていたんじゃないですかね。


- 「寒いくらい、なんだよ!」って?

- そうそう。
「寒いくらい、なんだよ、ジョン!」
っていう張り合いがあったと思うし、
もうジョンは去っていってしまうのか
っていうようなところもあったと思うんですよ。

- ジョンはきっと、
「見てくれなんかいいから、あったかいもの着るよ」
「動物の毛皮も着ちゃうよ」って(笑)。

- そうそう(笑)。
このころも動物愛護だったのかな、ポールは?

- どうなんでしょうね。
で、平気で
メンバーじゃないビリー・プレストンがいたりして、
なんだかバンドというよりは
セッションに見えましたよね。

- そうだね。あのビリー・プレストンの
明るい性格のおかげで、
もめごとがふっと収まるんですよ。

- あぁ。

- 第三者が介入してくると、
ちょっといいところを見せようって、誰でも思いますから。
とくに30代くらいだと。

- ビリー・プレストンが
ピアノで入れてきたあの音も陽気で、
すごく調和的っていうか、
「仲良くやろう」の音、してますよね。


- そう。「みんな仲良くやってほしいな」っていう
音になってると思う。
だって、『レット・イット・ビー』の映画を
見ればわかるけど‥‥
もめてるのを見てるだけだから。

- 暗すぎるもんね。

- 「演奏中は、陽気にいくぞ」って
思ったんだろうね。

- 今の人たちは、彼らがケンカ別れして
ああいう結果になるっていうことを知りながら
あの映画を見たわけですよね。
だけど、リアルタイムで追っていたときに
『レット・イット・ビー』の映画を見たら、
みんな泣いたと思うよ。

- そうね。
「あぁ、そうなって
『アビイ・ロード』を作ったのか」というのは
あとからわかることだもんね。
当時は情報が少ないし、
「レット・イット・ビー」という曲が
あまりにも最後っぽすぎるんで。

- そうだよね。

- でもね、ケンカしていたあの状態から
「アビイ・ロード」っていうアルバムを作った。
「いくらケンカしてても、
スタジオに入ったら真面目にやるぞ」っていう
労働に対する情熱はすごいね。

- そうだよなぁ。
曲の細かいところを
ちゃんと「ああしよう」「こうしよう」って
作り込んでる部分が、
結果として説得力あるもんね。

- そう。
そしてポールは当時、嫌われつつあったけれども、
折衷案をうまく作り出していたと思う。
ジョンを立てつつ、
「アビイ・ロード」を作ったんじゃないですかね。

- なんか切なくなってきちゃったよ。


- 切ないね。

- バンドって、そういう宿命を
だいたい持つじゃないですか。
おたくみたいに、長く続いているバンドもあるけど。

- あ、わたしたちのこと?
ええと、長い理由は‥‥

- あんまり会わないから?
- 会場
- (笑)

- いやぁ(笑)。
集団でうまくやっていこうっていう
気持ちがみんなにあるのと、
みんなで何か作っていることに対する
愛情が、まだある。

- みんなでやることのおもしろさか。

- うん。おもしろいぞと。
で、「1人じゃだめなのよ。助けてよ」って
言えるような人たちが周りにいるということは、
なんとか続くんです。

- あぁ。みんなそれぞれが、
「俺が一番」とかあんまり思わなそうなタイプだね。

- ぜんぜん思わない!
全員がジョージ・ハリソンだと思いますよ、
ムーンライダーズってバンドは。
- 会場
- (笑)


- いい話だね(笑)。
そう思って見ると、
ムーンライダーズって、いいなぁ。

- そう思って聴いてくださいね。

- そういう押しの弱さがまた
ファンにはたまらないよね。

- でも、ジョージ・ハリソンだって
ときどきカッとなるからね。
バンドを抜けちゃったりもするし(笑)。

- 普通は、そうなるよ。
でも、だからこそ
「長いことやっていこうぜ」っていうこと自体を
楽しみにしてるっていうのが、
長く続く、ひとつの理由なんだろうな。

- 長くやろうとしてやってるわけじゃないんだけども、
「いっしょにいるとバカな話できて、おもしろいな」
っていうのが、根底にあるってことですね。

(つづきます)
■ザ・ビートルズ
「ドント・レット・ミー・ダウン」
■ザ・ビートルズ
「レボリューション」

