手塚治虫×ほぼ日ハラマキ

祖父江さんのお宝手塚グッズ ~ロックにあこがれた幼年期からお宝を埋めた話まで~

どんなに忙しくても、お手紙やサインなど、
お返しをされていた手塚治虫先生。
ブックデザイナーの祖父江慎さんも、
手塚先生との思い出がつまった、
「お宝手塚グッズ」をお持ちということで、
お話しをうかがいに行きました。

直筆で「ロック」を描いてもらった日。
一番大事なお宝グッズを埋めてしまった日。
ちょっと、ほろ苦い、
祖父江少年の幼少期と手塚先生との思い出を、
全四回でお届けします。
みなさんからの「自慢のお宝手塚グッズ」も
引き続き、大募集しています!

第4話 一番大事なお宝は埋めました

───

事前に「お宝手塚グッズをみせてください」と
ご連絡したときに祖父江さんが、
「お宝は大事すぎて埋めました」とおっしゃっていて。
どういうことなのか、
ずっと気になっていまして‥‥。

祖父江

埋めたというのはつまりね、
僕、手塚キャラクターがデザインされた、
お菓子のおまけが好きだったんですよ。
このころのおまけは豪華だったの。

テレビでもお菓子の宣伝だらけで、
ふうせんガム、キャラメル、
ココア、マーブルチョコ‥‥
なんでもアニメキャラクターが
あしらわれていたんですよね。
もう、アトムをみると、
風船ガムの味がしてくるくらい。

───

漫画本の背表紙も、
ほとんどお菓子の広告ですね。

祖父江

普段から物を買ってもらえなかったから、
勉強の本じゃなくて漫画を買うなんて、
許してもらえなかった。
でもお菓子なら「虫歯になるぞ」くらいで、
ご褒美的にときどき買ってくれたんだよね。
それで、近所にセンゴク君という
絵が上手な男の子が住んでいて‥‥あ。
どうもこんにちは。
どうぞ、どうぞ。
こちらほぼ日さんです。

(祖父江さんの来客)

───

はじめまして。ほぼ日と申します。

印刷所の方

吉本隆明さんの本ではお世話になりました。
今日は祖父江さんの見本を渡しに‥‥

祖父江

すっごい本をつくってんの。
(見本を袋から取り出す)
おおー! できたー!

全員

パチパチパチ(拍手)

祖父江

『数と夕方』(左右社)という、
管啓次郎先生の詩集です。
上製本の角丸で、ぜんぶ手作業。
ここ、ここを映すように。

祖父江

装丁もがんばったけど、
なにより内容がすばらしいんですよ。
何度読んでもグッときちゃう。
言葉が美しいの。
ずっと尊敬していて、
一緒にお仕事をしたいと思っていたんです。
いろんな人に読んでほしい。

印刷所の方

でも限定販売なんですよね。
装丁も職人技で「ギョウザ」と
僕らはよんでいるのですが、
チマチマ、チマチマ。
ひとつずつ手作業なんです。

祖父江

でも、やっぱり、
いろんなひとに読んでもらいたいよね。
読む場所を変えるとまた、感じるものが違うんだよね。
『数と夕方』っていうタイトルもいいでしょ。
これはね、僕のデザインのテーマとも近い気がしているの。

───

「数と夕方」が祖父江さんのテーマなんですか。

祖父江

僕、バンパイヤだけあって、正円が怖くて苦手なの。

───

「満月」をみると変身してしまいますもんね。

祖父江

そうそう。
正円や正方形、数字など
明快すぎるものって、鳥肌がたっちゃう。
僕にとってそれらは「死」の象徴、
神聖すぎて困っちゃう。
ぼんやりとしたバランスの悪いもの、
たとえば生き物が「生命」の象徴なんです。
その、数字と生き物の距離感や
明快さと曖昧さの中間が
この詩には描かれていて、
ほんとうにすばらしいの。
いや、読み方はそれぞれでいいと思うんですけど、
とにかく読んでほしい。
装丁させてもらえてうれしかったです。

───

ぜひ、読みたいです。

印刷所の方

途中で参加してしまい失礼しました。
どうぞ、お話をつづけてください。

祖父江

なんの話をしていたっけ?

───

あの、埋めた話です。
おまけが好きだったとおっしゃっていて‥‥
どんなおまけがお好きだったんですか?

祖父江

好きだったのは、
アトムのキャラメルについていたフィルムかな。
アニメや映画のフィルムを1コマずつ切ったものが、
紙でマウントされて入ってたの。

一番大切にしていたのが、
『悟空の大冒険』のお菓子についていたミニブック。
小さな漫画で、中綴じのカラーでした。
当時、漫画を買ってもらえなかったから、
すごく大事にしていたんです。
でも、小さいからなくしそうじゃない。
なくさないようにするにはどうしたらいいかな、と
考えていたときに悪い友だちが、
「埋めておいたほうがいいんじゃないか」って。

───

悪い友だちがアドバイスを。

祖父江

「そうだな」と思って、
ビニール袋みたいなものに入れて、
ピチッときれいに包装して、
なるべくみつからないところに、
掘って埋めに行ったんです。

みんなにバレちゃいけないので、
目印もつけずに、
何歩進んだところって記憶して。
「これでなくさないぞ」って思った。

───

埋めた場所は覚えていますか?

祖父江

それが、どうしてももう一度みたくなって、
掘りに行ったんだけど、
どこに埋めたかわかんなくなっちゃって。
掘っても出てこないの。
というか、土に埋めたらなくなるよね、普通(笑)。

───

でも、ビニールにピチッと入れて‥‥

祖父江

丈夫なビニールではないから腐るよね、いま考えたら。
だからお宝の『悟空の大冒険』のミニブックは、
大事すぎて埋めちゃった、というお話。
なんか、犬っぽいよね。

───

(笑)。

祖父江

もしかしたら友だちは、
「そんなに大事ならうめさせろ」って、
ロックに操作されていたかもしれない。
それで僕は犬のようになって、
大事なものを埋めたんですね。

あ、あとね、
それだけじゃなくて他も埋めていましたよ。
自分で描いたエッチな絵とか(笑)。

───

手塚先生みたいですね(笑)。

祖父江

川に橋がかかっていて、
その下に、ある曜日に行くと必ずエッチな週刊誌が
捨てられていたんです。
毎週その本を悪い友だちと取りに行って、
水着の写真があるでしょ。
水着を脱いだらどうなるか想像して、
絵を描いてたんです。
最初は友だちの家の屋根裏に隠してたんだけど、
お母さんにバレて、怒られたんですよね。
それで、埋めることにしたんだ。
そのあたりから「大事なものは埋める」という
犬みたいな習慣がついたのかも。
ミニブック、もっとちゃんとみておけばよかった。

───

ミニブックを埋めるくらいですから、
漫画も埋めたくなりそうですが、
これらはいつごろ買われたんですか?

祖父江

大人になって、自由に買えるようになってから、
古本屋さんとかで集めてました。
だから、僕にとっての手塚治虫は、
アニメとお菓子なんですよ。
お菓子の絵をみるだけで、よだれが出ちゃう。

───

手塚さんの魅力はどのようなところだと、
祖父江さんは思いますか?

祖父江

なんだろうね。
手塚さんはときどき、びっくりするような
表紙の絵を描いたり、結末にしたりするんだ。
メルモちゃんの最終回、知ってます?

───

不勉強ですみません、きちんと知らず。

祖父江

最終回はメルモちゃんが自分の子どもを産むんですけど、
延々出産のうめき声で終わるんです。
「ウーン」「スーハー、スーハー」とか。
今のアニメに比べて随分とリアリティのある
描写が多かったかもね。
さすがお医者さんだね。
よくもまあ、子どもにこんなに難しい漫画を
読ませていたなと思います。

───

子どもなりに難しい話を読みとって、
それぞれの思い出になっているのは
いいなと思いました。
ロックにあこがれていた話、すごく素敵でした。

祖父江

いまだに僕は、
正円をみると毛がたちますよ。
バンパイヤになっちゃうかもしれないって、
よく思います。
正円は鳥肌が‥‥ウウウー。

───

‥‥あ、バンパイヤになっている(笑)。

祖父江

ウウウー!

───

祖父江さーん! 戻ってきてください!

祖父江

‥‥‥‥ああ、やばかった。
今のはちょっと危険なシーンだった。
バンパイヤにならなくてよかったね。

───

よかったです(笑)。
あの、もしよかったら、
手塚さんとのコラボハラマキを祖父江さんに
プレゼントできたらと思っていまして。
ロックはないのですが、
どちらをお腹に巻きたいですか?

祖父江

ええ! うっそー! うれしいなー。
メルモちゃんに決まっているじゃない。

───

へえ、メルモちゃんですか。

祖父江

うん、かわいいから。やったー!
♪メルモちゃん、メルモちゃん♪

───

そんなに喜んでいただけてうれしいです!
今日は、ありがとうございました。

祖父江

ありがとうございました。

(おわります。)

2017-12-05-TUE

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