ひびのこづえさんのプロフィール   ひびのこづえさんと ものづくりのはなしを。   2001年の冬、当時まだどこにもなかった 「おしゃれなハラマキ」を ほぼ日がつくりはじめてから10年。 節目となるこの年に、 ひびのこづえさんにデザインをお願いできたことは、 ほぼ日のハラマキチームにとって おおきな経験とうれしさになりました。 ハラマキの制作を振り返りながら、 「ものづくり」のおはなしをあらためて ひびのこづえさんからうかがいます。 聞き手は、ほぼ日ハラマキの提案者・糸井重里。 ほぼ日ハラマキの担当者・ゆーないとも同席です。ひびのこづえさんと ものづくりのはなしを。   2001年の冬、当時まだどこにもなかった 「おしゃれなハラマキ」を ほぼ日がつくりはじめてから10年。 節目となるこの年に、 ひびのこづえさんにデザインをお願いできたことは、 ほぼ日のハラマキチームにとって おおきな経験とうれしさになりました。 ハラマキの制作を振り返りながら、 「ものづくり」のおはなしをあらためて ひびのこづえさんからうかがいます。 聞き手は、ほぼ日ハラマキの提案者・糸井重里。 ほぼ日ハラマキの担当者・ゆーないとも同席です。
 



ひびのこづえさんと糸井重里による
「ものづくり」をテーマにしたこの対談コンテンツは、
すでに最終回をむかえています。
(未読の方、よろしければぜひ第1回からお読みください)
この対談のあとも「ほぼ日ハラマキチーム」は、
引き続きひびのさんとお仕事を続けています。
ある日、その打ち合わせの席で、こんな会話がありました。

「ひびのさん、ハラマキ工場に行ってみませんか?」
「ええ、ぜひ」
「工場の方々もよろこんでくださると思うので」
「ハラマキができる現場を見てみたいです。
 職人さんにもお会いして、
 素材や技術の可能性を探ってみたいし」
こうしてわれわれ「ほぼ日ハラマキチーム」は、
ひびのさんをお連れして、新潟へ。
長岡市にあるニット工場、
『白倉ニット』にお邪魔したのでした。
というわけで、急に再開しました、
「ひびのこづえさんとものづくりのはなしを。」。
このコンテンツの第3回で話題になった
「新潟のハラマキ工場」を、
番外編として2回にわけてレポートいたします。
▲ご案内いただいた工場2階のお部屋にて。
ひびの はじめまして、ひびのです。
ほぼ日 ひびのさん、
このかたが桑原さんです。
桑原 はじめまして。
▲桑原さんは「ほぼ日ハラマキ」のご担当です。
ひびの そうですか、あなたが桑原さん。
ほぼ日 そして、こちらが白倉さんです。
白倉 はじめまして、
『白倉ニット』の白倉です。
▲白倉さんは『白倉ニット』社長の息子さんです。
ほぼ日 よろしくお願いします。
さっそくですが、きょうはどのような順番で
見学させていただけるのでしょう?
白倉 そうですね、あまりお時間もないようですので、
やはりハラマキの工程を
お見せできる範囲でご案内します。
ひびの たのしみです、よろしくお願いします。
白倉 まずはですね、
ほぼ日さんから届いたデザインを、
桑原が、機械を動かすためのデータにします。
ひびの データにする、というのは?
桑原 いわゆる「ドット画」に変換していく作業です。
たとえば‥‥。
▲専用のソフトでイラストをドット画に。
ほぼ日 それはひびのさんの新作、
「アニマルハート」のイラストですね。
桑原 はい。
いただいたデザインは遠目にはきれいですが、
近くで見るとモザイク状になっているんです。
拡大すると‥‥。
ひびの ああー。
桑原 ハラマキは2色の糸で編んでいくので、
モザイクの部分を1ドットずつ、
どちらの色にするか決める必要があります。
原画の良さを保って
それを判断するのが難しいです。
ひびの なるほど。
桑原 あとは、やはりこうしてドットに直していくので、
あまり細かいイラストだと
時間をかけても再現ができなかったり‥‥。
ほぼ日 時間はかかりますか。
桑原 「クレイジーフラワー」だと、
1サイズ修正するのに3日でした。
ほぼ日 1サイズ、3日。
‥‥そうか、
ハラマキのサイズXS、S、Fそれぞれで、
このデータをつくるんですね。
桑原 そうですね。
たとえばひとつの絵をFサイズで表現する場合、
広い面積を使ってドット画にします。
でも同じ絵を子供サイズで表現しようとすると
描ける面積が狭くなってドット数も限られるので、
それ用のデータを別につくる必要があるんです。
ひびの ‥‥もう、いやですか?
一同 (笑)
ひびの こんなつらい思いはしたくない?
桑原 あの(笑)、原画を再現できないのが残念で。
もとの絵が細かいと
再現できないのが申し訳ないというか‥‥。
ほぼ日 この工程は、ほんとうにたいへんなんですね。
いつもありがとうございます。
あの‥‥桑原さん‥‥
今後もいろいろな柄をオーダーすると思うんです。
なので‥‥これからもどうぞよろしくお願いします!
桑原 はい(笑)。
白倉 (笑)次の工程に進みましょう。
ここで入力したデータを持って編み機に進みます。
行きましょう。

(全員で移動する)
ほぼ日 ‥‥あ、「アニマルハート」が編まれています。
桑原 そうですね、
この編み機でちょうど編んでいるところです。
ほぼ日 さっきのデータがこの編み機に入れられて、
それで編んでいるわけですね。
桑原 はい。
ひびの 1枚編むのにどのくらいかかるんですか?
白倉 Sサイズですと、だいたい20分ちょっとですね。
ひびの 20分。
白倉 編み機には、編み針がたくさんついていて、
これが上下に動いて編むんです。
桑原 上にあるこの3色の糸で、
「アニマルハート」を編んでいます。
ほぼ日 赤い糸は、ワンポイントのハートマーク用ですね。
なるほど‥‥。
ここでこうして、おおよそ20分かけて、
1枚のハラマキが編まれました。
で、これを縫製する?
白倉 いや、まだまだです。
まず、編まれたものは検品をします。
ひびの 検品。
白倉 穴があいていたり、目がこぼれていないか、
人間の目で検品します。
一枚一枚。
▲見落としがないよう、数人のペアで1枚ずつ見ます。
ほぼ日 もし、なにかトラブルを見つけたら?
白倉 編み足します。
ほぼ日 編み足す?
白倉 そこに道具がありますでしょ。
それで編み足して直してしまうんです。
▲この針は、編み機の中に並んでいる編み針です。
ほぼ日 へえーー。
白倉 あ、ちょうどいま、トラブルがあったみたいです。
‥‥それは?
(セーターを手に作業台へ戻ってきた女性に)
女性 ちょっと、穴がね。穴が空いてるの。
ほぼ日 すみません、お仕事中に。
その穴を見せていただいても‥‥
ああー、けっこう大きな穴が。
女性 そうね、ほどけちゃてる。
ほぼ日 これ、直るんですか。
女性 直します。
ほぼ日 どのくらいかけて?
女性 これだとね、5分かかっちゃうかな?
ほぼ日 5分。
女性 ひとめひとめ、
目をつくんなくちゃなんないから時間かかる。
ほぼ日 いや‥‥5分でできることに驚いたんです。
半日仕事くらいかと。
女性 ちょっと、やってみるね。
5分、見てられる?
ほぼ日 せっかくなので‥‥。


▲超絶技巧のお直しを動画でご覧ください。
ほぼ日 すごい、すばらしい!
一同 (拍手)
ひびの 穴がなくなりましたね。
ほぼ日 魔法のようです。
失礼ですが‥‥どのくらいこのお仕事を?
女性 ええとね、ずいぶん長く(笑)。
ほぼ日 それは、おおむね?
女性 おおむね、20年くらいかなぁ(笑)。
ほぼ日 そうですか、20年。
いやぁ、ありがとうございました。
(ハラマキはまだまだ未完成。後編へとつづきます)

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2012-08-07-TUE