祖父江さんのお宝手塚グッズ ～ロックにあこがれた幼年期からお宝を埋めた話まで～

祖父江さん、こんにちは。
今日はよろしくお願いします
‥‥って、すごい！！
これが祖父江さんのお宝手塚グッズですか。

うん、一部だけどね。
これが僕の大事な手塚さんのグッズ。
今日は、なんだっけ？
なんで僕、これ用意したんだっけ？

手塚治虫先生が来年生誕90周年ということで、
ほぼ日ハラマキと手塚プロがコラボして、
一緒にハラマキを作ることになりまして。
こちらが商品サンプルです。

あ。ウランちゃんいるんだね。
ウランちゃんは冷え性だよね、きっと。
スカート短いし、寒そうだよね。

そうかもしれませんね（笑）。
せっかくコラボをしたので、
手塚先生のキャラクターの魅力を
いろんな人に知ってもらいたいと、
「私のお宝手塚グッズ」を読者に募っていまして。
祖父江さんもお宝手塚グッズをお持ちと伺い、
お話しを聞きに来ました。

お宝ね、たしかこの漫画の山の中にあってね。
‥‥これ！　これが大事なの。
「ロック」のイラストを中学1年生のころ、
手塚さんに直接書いてもらったんだ。

直筆ですか！
ロックは手塚作品にレギュラーのように、
出てくるキャラクターですよね。

そう、一番好きなの。

いつごろ、どこで描いていただいたんですか？

あれは当時衝撃的な事件だったんだけど、
1973年ごろに、手塚作品のアニメをつくってきた
虫プロが倒産してしまうのね。
倒産前に手塚関連グッズの大売り出しが、
僕の地元、愛知の百貨店の催事場であったんです。
たしか僕が中学1年生のときかな。
原画オークションとかがあってね、
手塚さんが好きだから、わくわくして、
１人で行ったんですよ。

そこで、手塚さんがキャラクターの絵を
描いてくれるイベントがあってね。
僕の番がやってきて列を進むと、
手塚さんが椅子に座っているんですよ。
机に大きなケント紙とペンが置いてあって、
「こんちはー」って僕、ドキドキしてて。
「何を描きましょうか？」と聞かれて、
「ロックを描いてください」と言ったら、
手塚さんに「ロック？」って聞き返されて。
「バンパイヤの？」って念押しで（笑）。
アトムかレオかリボンの騎士の依頼ばかりなので、
ロックを頼む子なんていないんですよ。

めずらしくて、
驚かれたんでしょうね。

たぶんね。 手塚さんは「へえ」って言いながら、
ちょっとね、うれしそうな感じだったの。
「ロックのどこが好き？」と聞かれて、
「カッコいいから！」って僕が答えたら、
「ふーん」ってニコニコしながら
描いてくれたのがこれ。

すごく簡単な下書きを鉛筆で描いて、
その上からインキとマジックで描くんだけど、
描き終えたイラストの下書きを、
アシスタントの人が消しゴムで消すの。
でも、消してほしくないじゃない。
印刷するわけじゃないし、
全然違う絵が描かれていたから、
鉛筆の線がみたかったんだよね。
「消さないでください」って言ったのに、
「え？」とかアシスタントさんが言ってまだ消すの。
「消さないで！」って必死に止めて、
だから、すこし鉛筆の線が残っているんだよね。

ありますね。

このロックがね、すごくいいんですよ。
いろんなところでロックを描かれているけど、
こんなうまい絵はないの。
一番好きなロックの絵。

それはどうしてなんでしょう。

うーん‥‥。
ロックって『バンパイヤ』や手塚作品の中で悪者なのね。
きっと、手塚さんがいろいろチャレンジしていたときに
描いたキャラクターで、
今になって振り返ると、
ロックが出てくる作品はあんまり人気がないんだ。

だから、中学1年生の子に、
「カッコいい！　ロックが好き！」と言われて
うれしかったんじゃないかなあ。
けっこうニコニコしながら描いてくれてた。

手塚さんのうれしい気持ちが、
イラストに出たんですかね。

「めずらしいねえ、ロックが好きなんて」と
言われたもんね。
だからこのロックには、
愛が入っているよね、手塚さんの。
だから一番カッコイイんだと思う。