オタク的につくる、東京スタイル。

ゴールドウィン 村井絢子さん

予告04

強力な消臭機能をもっている上に、
シンプルなのに美しいシルエットが魅力的な「MXP」。
機能面だけじゃなく、
形づくりにも力を入れて作られています。
MXPのものづくりについて、
株式会社ゴールドウインでMXP事業を担当している
村井さんにお話をうかがいました。

村井 絢子(むらい あやこ)

「MXP」プロダクトディレクター
糸の開発から、製品の形はもちろん、
ブランドビジネスの骨組み全般を取り仕切る。
プライベートでは道なき山を走る
トレイルランニングのレースなどに参加するほどの
アクティブウーマン。

仕立ての良さと消臭機能を共存

――
今シーズン、あたらしくラインナップに加わったのが
レディスのシャツワンピースと、
バージョンアップしたメンズのボタンダウンシャツ。
どちらもしなやかなオックスフォード生地で、
MXPならではの消臭機能がついているんですよね。
村井
もともとは「ライクラ」という伸縮性のある
ポリウレタンの糸に
消臭効果のある「マキシフレッシュ」を巻きつけた横糸と、
コットン100%の縦糸を織り上げた生地を使っていましたが、
シワになりやすい性質があったので、
縦糸だけポリエステルと綿の混紡糸に変えました。
――
シワになりにくくなったのはうれしいですね。
あらためて、このシャツの魅力をうかがいたいです。
村井
このシャツをつくるのに、
アメリカのトラッドなシャツから
ヨーロッパのデザインシャツまで、
いろいろなシャツを研究したんですが、
「これぞ東京のシャツ」というのをつくろうと思って
できたのがこの1枚です。
――
東京らしいシャツ!
村井
シルエットはオーバーサイズでもタイトでもなく、
日本人男性の標準体型に合うサイズ感ですが、
すそのカーブをつけすぎず、
サイドの“くり”が深すぎないのがポイント。
――
たしかに、ふつうのシャツと比べると
ラウンドがなだらかなような。
村井
シャツをタックアウトしてもインしても
サマになるバランス感を研究しつくしました。
最近はビジネスカジュアル化がすすんで、
シャツ1枚でラフにタックアウトして
お仕事される方もいるので、“くり”をやや浅めにしつつ、
すそを出していても長く見えない着丈に
落としこみました。
――
着丈が長いシャツを出したままにすると、
ちょっとルーズに見えてしまいますよね。
村井
ええ、そうなんです。
だから、アウトしても長すぎず、
インしてもかがんだときに背中が出ない長さにするべく、
何度も修正してできあがったのがこのカーブです。
――
あちらを立てればこちらが立たずを
みごとに解決した、絶妙なバランスなんですね。
村井
メンズは熊本のHITOYOSHIさんにお願いしています。
――
ほぼ日の「白いシャツをめぐる旅。」でも
お世話になっているブランドさんです。
村井
HITOYOSHIさんの大きな特徴は、襟にあります。
襟を立たせる土台となる帯状のパーツである
台襟が外側と内側についているんですが、
内径と外径の差を緻密に計算して、
内側のパーツをほんのすこし短く作っているんです。
それぞれを合わせて平らに置くとゆがみが出るんですが、
それを襟の立体的なかたちで縫製したときに、
そのゆがみが消えてピシッときれいに襟が立ちます。
――
二次元でなく、三次元で服が着られることを考えて
細かく形が作られているんですね。
村井
細やかな神経をつかって縫製すると、
時間がかかるし効率もわるいので
ふつうそういった作り方はされていないんですが、
HITOYOSHIさんはそれを強みにして
ほかにはないシャツを仕立てられています。
――
MXPは消臭に注目されがちですが、
形の良さ、デザインの良さもしっかり感じます。
村井
MXPは消臭という軸はあるんですが、
それ以前にやはり服としてのたたずまいがうつくしくないと、
お客さまに手にとっていただく
その一歩が踏み出せないと思うので、
HITOYOSHIさんのおかげで
凛としたたたずまいのシャツができあがりました。
――
レディスはオックスフォード生地でロング丈のワンピース、
これがとてもかわいい!
村井
肩が落ちるドロップショルダーで、
かなりゆとりのあるシルエットになっています。
メンズはスタンダードなデザインですが、
レディスはちょっとトレンドを加えてかわいらしく。
サイドにかなり大きめのポケットもつけています。
――
ポケットは大きいですが、
身幅があってドロップショルダーだから、
意外と気になりません。
村井
着ていただくとたっぷりした感じになって、
リラックスした印象になります。
――
リラックスウェアっぽいたっぷり感ですが、
外着として、仕事着にもいけますよ。
村井
丈がすねの下くらいまであって、
ひざの横まで開くぐらいの深めのスリットが
入っているからでしょうか。
これ1枚で着ていただいてもいいですが、
ワイドパンツやロングスカートを下に重ねていただく、
マニッシュなスタイリングも合いそうです。
――
いいですね!
下に合わせるアイテムで印象も変わりそう。
村井
あと、えりの部分も見ていただきたいポイントなんです。
――
襟の裏ですか?
あ、ボタンダウンになっている!
村井
そう、隠しボタンにしているんです。
メンズは表からボタンが見えますが、
レディスは隠す仕様に。
MXPはミニマムでクリーンなデザインを追求しているので、
女性のほうはあえて襟をすっきりさせて上品に見せています。

とろとろで、ほかほか。

――
メンズ、レディスともに
LUXCELL WARM(リュクセルウォーム)のシリーズ
(販売第二弾で取り扱い予定)は
昨年から継続していますが、
リュクセルウォームをまだ知らない方にも
ぜひ知っていただきたい機能をもっています。
村井
リュクセルウォームは
「モダールエアー」という名のレーヨンを使っていまして、
この素材の大きな特徴がふたつ。
まず、やわらかさ。
綿の数倍と言われるやわらかさです。
――
そんなに!
あぁ、とろとろします!
村井
そうなんです。
そのため、モダールエアーは
女性用の下着につかわれることが多い素材です。
しかも、このやわらかさに反して
適度に強度もあるので、
引っ張ってもやぶれにくい。
――
やわらかいのに強い。
村井
そして、もうひとつの特色が、吸湿性。
水蒸気になった汗を吸ってくれるスピードが
綿よりはやい。
綿ももちろん吸湿性は良いですが、
「モダールエアー」にはかないません。
――
へぇ!
村井
さらに特筆すべきなのが、
色落ちがしにくく、発色がよいこと。
綿は洗濯の回数をかさねると
どうしてもしらっちゃけてきますが、
「モダールエアー」などのレーヨン素材は
色もちがいいので、
何度洗っても色あせにくいんです。
――
それはうれしいです。
村井
そして、このリュクセルウォームは
「モダールエアー」のやわらかさだけでけでなく、
光電子という遠赤外線効果で人の熱を返してくれる
セラミックを練りこんだポリエステルを混紡しているので、
体の芯を冷やさない効果があります。
――
急速にあたたかくなるっていうより、
じんわりあったかさが長続きする感じなんですよね。
村井
たくさんの方に愛用していただいていますが、
妊娠されている方にも評判で、
おなかまわりへの当たりがやさしく、
あたためてくれるので重宝されているようです。
また、自宅で仕事されることが多くなった方からは
「移動距離が少なくてずっと座っていると、足元が冷える」
というお悩みもあるようで、
そういう方にもよくお使いただいています。
――
やわらかいし、あったかいし、
家で着ていてもリラックスした心地でいられそうです。
村井
やはり熱くなりすぎないというのが長所なので、
気温が下がって底冷えするようなときから
冷房で足元の冷えが気になるときまで、
ロングシーズンおつかいいただけるアイテムかなと思います。
――
ベースレイヤーに着てごわつかないし、
1枚でも見ばえがいいので、「ちょっとそこまで」の
ワンマイルウエアとしてもぴったりだなって思います。

オタクなものづくり

――
MXPのお話を村井さんからうかがっていて思ったのですが、
ものづくりへのこだわりがオタク的ですよね。
村井
(笑)
――
すみません、ほめ言葉です(笑)

しっかりリサーチをかさねて
研究されてつくられていて毎度感心していました。
それがオタク的だなと。
村井
ありがとうございます。
飲み会とかだと揶揄されがちなんですけどね、
「根暗でオタクだよね」って(笑)
――
そんなオタクな村井さんが手がけられた
MXPのアイテムに「アーバンサバイバルキット」があります。
Tシャツにショーツ、ソックスにタオル、
モバイルチャージャーまで入ったキットです。
「服だけにかぎらず、こんなのもあるなんて!」と、
おどろきました。
村井
今起こっているウィルスや豪雨などにより、
世の中の状況や人々の意識は
変わってきています。
そんな中で発売することになったので、
当初イメージしていたシチュエーションは
なかなかないですが‥‥
もしも、急なお泊まり、出張や、
つい楽しくなって飲み明かしてしまったときに、
下着ぐらいは着がえて、
ココロも体もクリーンにその日を過ごせるように
というシーンを想定して企画したものです。
――
え、そういうエマージェンシーだったんですか。
災害用かと思っていました。
村井
そうなんですよ。
なので、水も非常食も入っていないので、
本当の意味での
エマージェンシーバッグではないんですけどね。
――
ウィットが効いていて、
それでいて機能はちゃんと実用的。
見た目のデザインもかっこいいです。
村井
中身はファインドライのウエアとソックス、
そしてこのキットでしか手に入らないタオル。
これも消臭機能つきなんですが、
じつは今治タオルなんです。
――
タオルの産地として有名な今治ですね。
村井
今治で生産しているということだけでは、
「今治タオル」として認定はされなくて、
基準が何項目もあるんですが、
それをすべてクリアしないと認定を受けられないんです。
それが厳しくて、けっこう合格しないのもあったりして。
――
厳格な審査を通ったんだ。
村井
「大きめにプリントを入れたデザインで
合格するタオルはないので、試験にも出さない」
ってタオル業界の方に言われて
不安だったんですが、
ダメ元で試験に出してみたら、なんと一発合格!
綿糸だけでなく
高機能糸マキシフレッシュが10%入って、
しかもプリント入りのMXPのタオルが認定をとれたのは
めずらしいようなんです。
――
晴れて今治タオルとして、
このキットに加わったわけなんですね。
村井
認定がとれたと知らせがきたときは、
「キター!」ってオフィスで声を上げてしまうぐらい
うれしかったですね。
やるからには、とりたかったので。
――
そんなエピソードをうかがっていると、
やっぱり村井さんは“モノづくり”オタクです(笑)
これからも、村井さんの“モノづくり”を
いろいろたのしみにしています!

(おわりです)

MXPメンズ オックスフォード
ボタンダウンシャツ
¥16,500(税込)

MXPレディス オックスフォード
ロングシャツワンピース
¥19,800(税込)

MXP

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