ほぼ日の塾から生まれたコンテンツ。
このコンテンツは、「ほぼ日の塾 実践編」で塾生の方が課題としてつくったコンテンツをデザインし直したものです。
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わたし、就活が楽しいんです。

5月下旬、ある会社の面接で、
「もしうちから内定出たら
就活どうしますか?」
と聞かれた。

この質問自体は、それほど珍しいものではない。
どこの企業も他社(特に同業)の選考状況は
気にして細かく聞いてくるし、
「内定出たら就活どうする?」も、
この後複数の企業で聞かれた。

就活生はたいていどこの会社でも
「御社が第一志望です!」と言うので、
「内定が出たら就活をやめるか」と聞いて、
「すぐにやめます、他社は辞退します!」
と答えるか否かで、
その本気度をはかるらしい。
 
わたしは、この質問の答えを用意していなかった。

面接に呼んでいただく度に、
この質問をされたらどうしようかな、と考えたけど、
どんなに志望度が高い会社でも
「すぐに就活やめます!!」という答えが、
どうもしっくりこなかった。

だから、もしこの質問をされたら
その場で考えて正直に言おう、という
我ながら度胸のある心づもりをしていた。

そしていよいよ、
「うちから内定出たら、就活どうしますか?」
と本当に聞かれた。

その時、わたしはこう答えた。
今振り返っても、割と素早く、
淀みなく答えたと思う。

「もちろん入社させていただくという前提で、
でも就活は最後までやりたいと思っています。

というのも、わたし、就活がすごく楽しいんです。

普段の大学生活じゃ出会えないような
社会人の方や他の大学の人とたくさん話せて、
会社の考えや仕事のことを詳しく聞けて、
誤解を恐れずに言えば、ちょっと不躾な質問まで
受け入れて答えてくれる。

わたしは入社したらずっとそこに勤める心づもりで
就活をしているので、きっとこんな経験、
一生のうちで今しかできないと思うんです。

だから、内定をいただけても、
選考中のものに関しては結果が出るまで
続けるつもりでいます。」

計画通り、その場で正直に思ったことを伝えた。
それは本当だ。
けれど、口にして初めて、
「あ、わたしは就活を『楽しい』と思っているんだ」
と実感した。

社会人や他大の学生と話す面白さ、
ESを書き上げた時の喜び、
面接で会話が弾んだ時のうれしさ‥‥
その時々では感じていたけれど、
「就活」を「楽しい」と自覚したのは、
この時が初めてだった。

面接官の方は、相槌をうちながら真剣に聞いてくれ、
こう返してくれた。

「それはその通りだと私も思います。
 
たくさんの会社をしっかり見て、
自分の頭でじっくり考えて、
それから本当に入りたい会社を選ぶべきだ。
だから就活は続けた方がいい。
ま、その結果、うちに入ってくれたら
それが一番いいんだけどね!」
 
本当に良い会社だなと思った。

毎日のように会社説明会に行っていたころ、
よく社員さんが
「最終的には、『人』が良くて入社を決めました」
と言うのを耳にした。

色んな会社の人がそういうことを言うので、
正直、そんな話はうんざりで、
「出た!『人で選びました』!
わたしはそういう曖昧な話じゃなくて
どうやって御社から内定をもらえたかを
知りたいんですけど!!」
なんて大変失礼なことを思っていた。

でも、この面接の時に
「人で選んだ」ってこういうことなのかな、
と思った。

その面接をした会社は、
こんなことを言ったわたしに本当に合格をくれて、
内定をいただくことができた。

わたしはというと、
この会社に入りたいと心の底から思ったけど、
様々な事情や自分の考えがあって、この会社の方々の
「内定」というご期待には沿えないという結論に至った。
だけど、「就活が楽しい」という
わたしの思いを「それでいい」と肯定してくれ、
受け入れて内定をくださったことに、
何よりも感謝している。

(つづきます)
2016-09-12-MON