糸井重里、サンパチマイクを買う。

糸井重里、サンパチマイクを買う。

あこがれの漫才マイク「C-38B」を、自腹で。

糸井重里は、むかしから、
急におかしなものを買う人である。
驚くようなもの、呆れるようなもの、
「これは‥‥なに?」という不思議なものまで、
じつにさまざまなものを自腹で買っている。

そんな個人的な買いものリストに、
このたび「サンパチマイク」が加わろうとしていた。
漫才に欠かせない、あのセンターマイクである。
これにはお笑い好きの乗組員も興味津々。
「なんで糸井さんが、サンパチを‥‥」
その気になる買いものの行方を、
ちょっと前のめりに追いかけてみました!
#05 3本足で、グレー。永ちゃんのとはちがう。
前回のミーティングから2週間後。
糸井重里、乗組員A、D、Fの4名が、
ふたたび会議スペースに集まりました。
理想のスタンドは見つかったのでしょうか。
「マイクスタンド編」全3回でどうぞ!
写真
乗組員A
サンパチマイクに取り付ける
マイクスタンドについて調べてみました。
糸 井
ありがとうございます。
乗組員A
まず、サンパチマイクを販売する
ソニーの方にも確認してみたのですが、
漫才で使われるスタンドについては
ソニー製品じゃないということで、
工場の方もくわしいことはわからないそうです。
糸 井
そうですか。
乗組員A
ただ、ネットで調べているうちに、
いろいろおもしろいことがわかりました。
糸 井
ほう。
乗組員A
劇場やテレビ番組、
それこそ賞レースで使うスタンドもそうですが、
よく見るとみんな同じものっぽいんです。
糸 井
えっ!
乗組員D
びっくり。
乗組員F
同じものなんですか?
乗組員A
そもそもの歴史をたどると、
サンパチマイクには先代機があるそうで、
そのモデルはソニーとNHKが
共同で開発していたそうなんです。
糸 井
それ、最高だね(笑)。
乗組員A
そのときNHKが
「マイクスタンドはこれにしよう」と
決めたものがあったそうです。
それが劇場でも使われるようになり、
そのまま定着していったんじゃないかと。
糸 井
なるほどね。
乗組員D
すごい納得しちゃった(笑)。
乗組員F
どこのスタンドかわかるんですか?
乗組員A
あくまで推測なんですけど、
「これかな?」というのはありました。
ネットで漫才中の写真を探してみると、
スタンドの土台部分のかたちが、
じつはみんな同じというのがわかります。
写真
糸 井
ほんとだ。3本足で、色はグレー。
乗組員D
かたちもちょっと特徴的です。
糸 井
永ちゃんのとはちがうね。
乗組員F
ちがいますね(笑)。
乗組員D
これはどこのメーカーなんですか。
乗組員A
「高砂製作所」というメーカーです。
一応、確認しようと思って、
サポートセンターに電話で聞いてみたんです。
対応してくださった方の話では、
「劇場などでよく使っていただいています」と、
おっしゃっていました。
一同
おぉーーっ。
乗組員A
品番でいうと、
おそらく「MF-18TM」じゃないかと。
写真
乗組員F
よく見つけましたね。
糸 井
じゃあ、それを買えばいいわけだ。
乗組員A
いやぁ、それが、その‥‥。
一同
‥‥ん?
乗組員A
じつは高砂製作所さんは、
2017年頃にスタジオ製品の生産を
やめてしまったそうなんです。
なので先ほどのスタンドも、
いまはもう買うことができないようです。
糸 井
高砂さんがそのようにおっしゃった。
乗組員A
はい。
糸 井
そうかぁー。
乗組員D
せっかく見つけたのに‥‥。
乗組員A
で、そのあとぼくの知り合いで、
こういうスタジオ機材に詳しい人がいまして、
ちょっと相談をしてみたんです。
「どこかで買えないだろうか?」と。
そしたらその人がいろいろ調べてくれて、
別の会社に似たような商品があったんです。
糸 井
おっ!
写真
乗組員D
すごい(笑)。
乗組員A
(資料を見せながら)
それがこういうものなんですけど。
写真
乗組員F
写真だけ見るとけっこう似てますね。
乗組員D
足もそっくりですね。
乗組員A
足のかたちもそうなんですが、
もうひとつ大事なポイントがあるんです。
それは、ポールの高さを変える方法で、
これは「フリーロック方式」というものなんです。
乗組員D
フリーロック方式?
乗組員A
漫才師の方がステージに出てきたとき、
マイクの高さをスッと変えたりすると思うんです。
乗組員D
あー、はいはい。
舞台に出てきたときにスッと。
乗組員A
ふつうのスタンドの場合、
ポールの高さを変えるときに
グリップを握ってゆるめる動作が必要です。
でも、このフリーロック方式だと、
ポールを上下させるだけで
自由に高さを変えられるそうです。
糸 井
あぁ、それは大事ですね。
乗組員D
まさに漫才仕様だ。
写真
乗組員A
あと、土台も通常のスタンドより、
かなり重さのあるどっしりしたつくりです。
なんでそんなに重いかというと、
安定感がないと漫才中に倒れちゃうみたいで。
乗組員D
スタンドにそんな秘密が(笑)。
糸 井
グラグラしたら困りますもんね。
きっと昔のNHKの人たちも、
そういうことを話し合ったんだろうね。
乗組員D
そのスタンドは購入できるんですか。
乗組員A
メールで確認したところ購入は可能でした。
受注生産で、納期は3カ月。
業者用なので値段はけっこうします。
おそらく1本14~15万くらいは‥‥。
乗組員D
14万!
乗組員F
けっこうしますね。
乗組員A
業務用となると、どうしても‥‥。
糸 井
それは「スタンド」だと思うからで、
「俺の愛」だと思えば決して高くない。
写真
乗組員F
「俺の愛」(笑)。
乗組員A
あと、他の選択肢としては、
ネットで中古品を探すという手はあります。
さっきの品番で調べてみたら、
個人のフリマサイトで
1本だけ販売しているところがあったんです。
糸 井
あ、それはいいんじゃないか?
高くても安くても。
乗組員A
中古品なのでキズはありますけど。
糸 井
不都合があれば別ですけど、
ちゃんと使えるならそれでもいいね。
乗組員D
あ、たしかにネットに出てますね。
(パソコンで検索しながら)お値段は‥‥12000円。
これ、もう買っちゃっていいんじゃない?
乗組員A
ただ、個人のフリマサイトなので、
買う前にちゃんと確認はしたいですね。
糸 井
ウソかもしれない。
乗組員A
あるいは、ニセモノの可能性もあります。
最近は大手のフリマサイトでも、
そういうのがけっこうあるみたいで。
乗組員F
ページに連絡先もあるから、
買う前に聞いてみてもよさそうですね。
糸 井
もしリサイクル品が買えるなら、
それでもいいんじゃないかな。
スタンドの由来を知った以上は、
まずはそっちから当たってみましょうか。
(つづきます)
2026-03-06-FRI