糸井重里は、むかしから、
急におかしなものを買う人である。
驚くようなもの、呆れるようなもの、
「これは‥‥なに?」という不思議なものまで、
じつにさまざまなものを自腹で買っている。
そんな個人的な買いものリストに、
このたび「サンパチマイク」が加わろうとしていた。
漫才に欠かせない、あのセンターマイクである。
これにはお笑い好きの乗組員も興味津々。
「なんで糸井さんが、サンパチを‥‥」
その気になる買いものの行方を、
ちょっと前のめりに追いかけてみました!
- 乗組員A
- サンパチマイクの性能とか、
そのへんはどうなんでしょうね。
- 乗組員C
- 他のマイクとなにがちがうんだろう。
- 糸 井
- 性能については、
ぼくもくわしく知らないんです。
まずは買ってみる。
そしたらサンパチマイクがメディアになって、
そこにコンテンツが乗っけられます。
誰かがそこで語ってくれるかもしれないけど、
ぼくは別に機材の話をしたいわけじゃなく、
サンパチマイクといっしょに旅がしたいんです。
- 乗組員B
- つづきのコンテンツがあればあるほど、
おもしろくなりそうですね。
- 糸 井
- もちろん。
- 乗組員B
- マイクって電子機器だから、
ふつうは進化していくものだと思うんです。
サンパチはそのへんどうなんだろう。
- 乗組員A
- ちょっと調べてみたんですけど、
当時からほとんど変わっていないそうです。
- 乗組員B
- あ、そうなんだ。
そのあたりも興味あるなぁ。
- 乗組員A
- 発売が1970年なんですけど、
その頃に設計されたマイクって考えると、
すごいことですよね。
- 糸 井
- それはギターも同じですよね。
新しいからいいとは限らないわけで。
そういえば、このあいだ、
スマホに同期できるギターを買ったんです。
- 乗組員B
- また買ったんですか(笑)。
- 糸 井
- あ、また買ってるわ、俺(笑)。
- 一同
- (笑)
- 糸 井
- そのギターはスマホと同期させて、
設定からなにからぜんぶできちゃうんです。
たぶん、電子的な部分に関しては、
それがギターのいちばんの進化系じゃないかな。
- 乗組員A
- そんなギターがあるんですね。
- 糸 井
- だけど、そういう最新とは真逆の、
60年代のヴィンテージのリッケンバッカーに
いくらでもお金を出す人はいます。
バイオリンのストラディバリウスもそうですよね。
文筆業の方々がいい万年筆を買うのもそう。
やっぱり道具はメディアなんでしょうね。
- 乗組員B
- 新しくならないタイプのメディアですね。
- 糸 井
- 昔のある時代において、
「どんな人になりたいか」って聞くと、
松下幸之助の時代は松下幸之助だったんです。
スティーブ・ジョブズの時代もあれば、
ジュリーだった時代もあると思います。
その「こんな人になりたい」のなかに、
いまは「お笑い」が入ってきていると思うんです。
- 乗組員A
- あぁー。
- 糸 井
- お笑いというところに、
集まるべくして集まったみたいな、
優秀な人たちがいるわけだから、
世の中が興味を持たないわけがないですよね。
いま日本にいるぼくらにとっては、
「お笑い」と「マンガ」というのは、
大きな人のうねりができる場所ですから。
- 乗組員A
- 最近とくにそれを感じます。
漫才師やお笑い芸人が、
憧れの対象になっているというか。
- 糸 井
- 「M-1グランプリ」がはじまったときには、
すでにはじまっていたんでしょうね。
- 乗組員A
- スタートは2001年ですよね。
- 乗組員B
- わっ、もうそんな前なんだ。
- 糸 井
- はじめて「M-1」を観たとき、
みんな無意識で思ったはずなんです。
「なんで漫才なのに、
こんなスポーツみたいに競い合ってるんだ?」って。
- 乗組員B
- それはすごく思いました。
漫才のことでいうと、
ぼくの子どものときに漫才ブームがあったんです。
ザ・ぼんちとか、B&Bとか。
- 乗組員C
- やすきよとか。1980年頃ですね。
- 乗組員B
- 当時はすごいブームで、
もちろん漫才もおもしろかったんですけど、
いまのような「憧れ」ともちがった気がします。
じぶんがああなりたいとか、
そういうふうには見てなかったというか。
- 乗組員C
- 当時は「なる職業」じゃなかった。
- 乗組員B
- そうだと思います。
だから「M-1」がはじまって、
若い人たちの競争やドラマを見ていると、
当時の漫才ブームとは、
またぜんぜんちがうなぁというのは、
いま話を聞きながらすごく思いました。
- 乗組員C
- 昭和の「漫才ブーム」のときも、
サンパチマイクはあったんですよね?
- 糸 井
- 当然そうなんです。
そこもおもしろいじゃないですか。
- 乗組員C
- それなのに、当時といまで、
どうしてそんなにちがうんだろう。
- 乗組員B
- 「競技性」が加わったのは大きいですよね。
スポーツに近くなって、
みんなが憧れやすくなったというか。
- 糸 井
- 腕っぷしの強い人が
格闘技の世界でのしあがろうとしても、
相当大変なことだと思うんです。
だけど、お笑いだったら、
「もしかしたら俺でもやれるかも」って、
そう思いやすいのはあるかもしれない。
- 乗組員B
- ああ、そうかも。
「なれるかも」という階段が見えると、
目指すおもしろみが増しますよね。
- 乗組員C
- じぶんが当事者になるから。
- 乗組員B
- そうそうそう(笑)。
「俺にもできるかも」って思いやすい。
- 糸 井
- 思えば、吉本興業のおかげですね。
吉本興業の商売は「お笑い」だから、
「その供給源がいるよね」ということで
お笑いの学校をつくった。
その第1期生からダウンタウンが生まれたわけで。
- 乗組員B
- あぁ、そうですね。
- 糸 井
- だからあの学校が過去といまを、
分けたんじゃないかな。
友だち同士で入ったやつがいたり、
うまくいかなくなって別れて、
別の友だちと組んでみたり。
まわりに絶えずライバルがいる場所があって。
- 乗組員C
- サンパチからどんどん話が広がりますね(笑)。
- 乗組員B
- おもしろいなぁ。
そういう話はいくらでもできますね。
(つづきます)
2026-03-04-WED
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