おいしい店とのつきあい方。

089 飲食店の新たな姿。その9
お店に入る前にわかること。

飲食店はサービス業。
今から10年ほど前までは、
ほとんどの人たちがそう思っていたに違いない。
けれどこの10年間で、
セルフサービスの店が勢いを増し、
本来、店の人がするはずのサービスを、
それを受けるべき立場であるにもかかわらず、
客が代行させられても、不思議と感じない機会が増えた。

人と人とのつながりが、
リアルな場からSNSのようなバーチャルな場に
取って代わられるようになると、
濃密なサービスを嫌う風潮も手伝って、
飲食店にサービスを求めない人も増えてくる。

今や、飲食店はサービス業です、と
なんの疑問も持たず
胸をはって言える業界の人たちのほうが、
少数派になったのじゃないか‥‥、と思う。

でも‥‥。
やはり飲食店は人と人とがふれあうことで
シアワセを味わう場所であってほしい。
つまり「サービス」こそがステキな店の真髄。
サービス不毛の今の外食産業において、
サービスの良い店の見極め方を
ちょっと考えてみましょうか‥‥。

サービスの良い、悪いをお店に入る前に感じ取るヒントが、
昔はたくさんありました。

例えば予約の電話の受け答え。
電話を受けるまでの呼び出し音の回数だったり、
電話の向こうの気配や空気感。
受け答えの声の表情、調子に言葉遣いと、
お店のお客様をおもいやる気持ちが伝わり、
どんなサービスが提供されているのかどうかを
うかがい知る重要なヒントに溢れてた。

今では予約を電話ですることがためらわれるほど、
お店の人たちは日々の作業で手一杯。
しかもネット予約という便利な仕組みが行き渡りました。
飲食店の評価サイトと表裏一体となった
予約システムもあったりして、
電話の代わりにネットの裏側にあるお店の気配を
一生懸命感じようとするのだけれど‥‥。

飲食店の評価サイトの口コミを丁寧に読み込んでも、
料理の味に対する主観的意見は
ゲップが出るほど書かれてる。
けれどサービスに関しては、
クレームめいたコトが書かれることはあっても
よいサービスに関する言及はほとんどない。
あったとしてもどのように良かったかということは
伝わらない。
だから自分で感じるほかない、というワケ。
まず「よいサービスが期待できないお店」の特徴を
知っておくのも損はないでしょう。

お店の前に人を立たせている店があります。
いらっしゃいませと笑顔を振りまいたり、
お値打ち商品の説明をしたりチラシを配ったり。
お客様のご来店をお待ちしてます‥‥、と一生懸命。
競合が激しく、他のお店を奪い取らないと
繁盛することがむつかしいのが
今の日本の飲食業の環境だから、
そんな店も随分増えた。

そこに立っている人は、店長とか調理長とか、
「長」が付く人から
「客がいないから、店の前に立って呼び込みやってこい」
と言われてそこに立っている人がほとんどです。
果たしてそれが飲食店で働きたかった人たちの
したかったコトかというと、決してそうではなくて、
モティベーションがさがること甚だしい。

なにより、ついさっきまで呼び込みをさせられていた人が、
果たして心からの笑顔でよいサービスができようか‥‥。
店頭にたっているスタッフが
どんなにチャーミングな人であっても、
ぼくはそういうお店は避けることにしています。

それに経営的にこう考えることもできる。
いつも店の前に人が立っているということは、
それほどまでにお店が暇なのか、
それほどまでに必要のない人件費を払えるほどに、
安い原価の料理でボロ儲けができているか、どちらかです。
店のやる気とは一切関係ないと思っていい。

ちなみにお店の入り口付近はお店がお客様のことを
どう思っているか、
おもいやりとおもてなしのヒントが沢山あるところ。
どんなヒントがあるのでしょうか。

2019-07-18-THU