おいしい店とのつきあい方。

060 食いしん坊的 外食産業との付き合い方。25
お店の味じゃなくてメーカーの味?

スターバックスを真似する会社は
所詮ものまねと思われて、
スターバックスを超えることができないばかりか、
苦労する。
ドトールコーヒーが成功したのは、
スターバックスを真似せず、独自路線をいったから‥‥。
なのだけれど、そんなドトールもちょっとだけ
スタバのコトが羨ましいと思って真似をしたことがある。


エクセルシオールっていう
カフェ系セルフコーヒーの店がありますよね。
スマートで都会的な店作り。
大規模店で、ドトールコーヒーにはない
本格的なエスプレッソマシンがドンッと置かれてる。

スターバックスを真似する人はみんな
スターバックスより良くしないといけない‥‥、
って思い込む。
例えばコーヒーをもっと美味しくしなくちゃいけないとか、
スターバックスが扱わないような
飲み物、料理を導入しようとか、工夫をしちゃう。

エクセルシオールの場合は、
お店の中のキッチンで料理を作って
提供することを選びました。
展開の当初はクロックムッシュのような簡単な料理。
それからピザが導入されて、
最近ではパスタまでもがメニューに並ぶ。
もうコーヒー専門店といういうよりも、
セルフサービスのカフェレストランのようになってる。

当然、本格的な調理人がいるわけでなく、
簡単に調理できる工夫をしてる。
素材を重ねてオーブンに入れるだけ。
素材に調味料をかけて加熱するだけ。
はじめて食べたのに、
いつかどこかで食べたことがある味のように思えてしまう。
どこで食べた味に近いんだろう‥‥、
と考えながら食べるとなるほど。
コンビニエンスストアの料理の味に似ている。

お店の味じゃなくてメーカーの味。
そういう味のものが世の中には溢れています。
今のお客様は、安く食べることを好みます。
安く売りたいと思えば当然、
安く仕入れたり、安く作るための工夫が必要になる。
同じものを安く売ってしかも儲ける‥‥、
となると大量生産することが一番の近道。
昔はそのためにお店を増やし、
自前のセントラルキッチンを作ることが最高の方策‥‥、
といわれていたけど今では自社工場は流行らない。
自社の分だけ作っているようでは、
本当のコストダウンは果たせないから、
メーカー品を使って料理を作るお店が相当増えた。

先日、行列ができるというので有名な
餃子の専門店に行って食べたら、
はじめてなのになにかどこかで食べた味がする。
厨房の中を見ると凍った餃子を
餃子焼き機器に並べて焼いてて、
その形、味に風味がどう考えても
スーパーマーケットで売ってる
ナショナルブランドの冷凍餃子。
タレもメーカー品だし、
せいぜい特徴があるとするなら
ラー油と、餃子を焼くマシンの掃除を
徹底的にしているコト。
餃子は焼き加減でまるで味が変わるから、掃除は大切。
‥‥、ではあるけれど、
なんだかこれでいいのかしらって思ってしまう。

人は食べ慣れたものをおいしいと感じるようにできている。
今まで食べたことがないものを食べて、
おいしいと感じる料理も、
二度、三度食べるだけの魅力があるかはわからない。
何度か食べると食べ飽きる料理もあれば、
何度食べても飽きない料理もあって、
後者こそがその人にとって本当においしい食べ物。

地方にいくと、なぜ、こんな料理に
人は熱狂するんだろう‥‥、って料理がたくさんある。
理由は生まれてずっと食べ続けているから
おいしく感じて当然で、
おふくろの味というのも食べ慣れているからおいしい料理。
大抵それらは個性的だけどおいしい料理で、
昔からから日本にはたくさんありました。
でも最近の食べ慣れた味のほとんどは、
誰もがおいしく感じる平均的な味‥‥、
つまりメーカーが周到なマーケティングの末
作り出した食品です。

そしてそういう食品を重宝しているのが、
今の外食産業の店。
今の外食産業において成功するためには
「感動させる」ことよりも
「失望させない」ことを優先すべきなんだと思うと
なんだかさみしくなります。
個性あふれる多様で多彩の食の世界を守るためには、
何をしなくちゃいけないんだろう‥‥、
と最近、とみに思うのです。

2018-12-27-THU