おいしい店とのつきあい方。

048  食いしん坊的 外食産業との付き合い方。その13
支払うキモチ。

仮に、100万円のお金を手に入れようとします。
いろんなやり方が考えられます。

ひとりの人を必死に説得して、
100万円を払ってもらう方法がある。
その説得には相当の努力を必要とするでしょう。
しかも100万円払ってもよかった‥‥、
と思ってもらうために
どうすればいいのか考えれば考えるほど、
気持ちが重たくなってくる。

裕福で気前のいい友人が10人いたら、
その10人から10万円ずつ集めて
100万円にする方法もある。
ひとりから100万円もらうより、
もらう方の気持ちはちょっと楽になります。
でも案外、裕福な人ほどお金に対してシビアで、
その10万円で一体
どんなことをしてくれるんだい‥‥、
とずっと期待を持たれ続ける。
下手をすると10人の友人を
一挙になくすことになるかもしれない。

ならば100人から一万円ずつ。
いやいや、1000人から
1000円ずつならもっと簡単。
いっそ、1万人から100円ずつ集めることができたら
どれほど気持ちが楽だろう。
出した方も100円くらいならと思ってくれるし、
もらった方も100円程度なら
そんなに責任を感じなくてすむ。
100万人から1円ずつ集める商売ってないかなぁ‥‥、
って夢のようなことを考える。

ひとりからお金をもらうということは、
当然、知っている人から直接お金を頂戴する‥‥、
ということになる。
100万人から集めるってことは、
見ず知らずの人からお金を集めるということになって、
お金をもらったということに対する責任感が
若干希薄になったりする。


金を稼ぐのが上手な人に、
金持ちになる奥義を教えてもらったことがある。

普通のお金持ちになりたかったら、
身近な人をシアワセにして、
そのシアワセの対価をたっぷりちょうだいすればいい。
けれど、「ものすごい」お金持ちになりたかったら、
見ず知らずの人たちから
ちょっとづつお金を集めるようにすればいい。
その人たちは多ければ多いほどいいし、
遠ければ遠いほどいいんだと。

自分が払ったお金が誰のふところをあたためるのか。
それを知らずにすめば、
そのお金が誰にどのように使われようが
心穏やかにしていられる。
そういうお金を集めた人も、
責任をあまり感じなくてすむからだ‥‥、
と言い切るのです。

チェーン店とはそういう存在なのでしょうね。

大抵のチェーン店の経営者は顔を見せない。
だから使ったお金が
誰のふところに入っていくのか知らずに
ボクらはお金を使う。
たとえ彼らが何億円も稼いでいたとしても
それに対して自分が使ったお金は微々たるもので、
しょうがないか‥‥。
だって「ビジネスマンとして
成功した人たちなんだもんな」
と冷静でいられたりする。
それでもときおり有名になりたがる経営者がいて、
稼いだ金を湯水のように使って議員になったりすると、
けしからんってムードになる。
そんなムードがブラック企業の経営者という
烙印を作ったりするから、
いかに「誰も知らない人」であることから大切か‥‥、
って、稼ぎ上手の人の言うことの説得力をしみじみ思う。

一方、オーナーシェフの店や経営者が
店にたっている飲食店では、
儲けはこの人のふところに一旦入るに違いない‥‥、
と誰にもわかる。
そうか、こいつが儲けるために、
オレたちが金を払ってるんだ‥‥、
と思った途端にすべての責任がお店の人のものになる。
どうせ、儲けてるんだから
お客様の言うことを聞いて当然じゃないかと、
モンスターカスタマー的気持ちが首をもたげたりする。

今でも、地方都市で飲食店をやってる人が、
ベンツを買うと人気をなくして客足が減ってしまう‥‥、
なんてことが平気である。
遠くの人がシアワセを謳歌することに対しては無関心で、
身近な人がシアワセになることを妬む気持ちの人がいる。
なんだか不思議な日本だなぁ‥‥、
と最近、しみじみ思うのです。

今日は少々、愚痴っぽい。
ただ個人経営のお店を応援したいなぁ‥‥、
と、来週、続きを述べましょう。

2018-10-04-THU