「神田川」の頃の
恋愛至上主義時代の男の人は、
やさしさ至上主義になっていた、
そういう時代でありました。
いっぽう、女性は、幼い頃から
お互いに、やさしい、ということを
しなかった親を見てきました。
昔からいるボーイフレンドは、
きっとやさしくなかったことでしょう。
やさしくなくても、うまくいっている親、
日常がたんたんと続いていく状況を
経験してきたのです。
けれども、3畳一間にいる
目の前の彼の、
このやさしさはいったい何だろう。
その、言葉でやさしい、という部分に、
なんらかの弱みのようなものを
どうしても感じてしまいます。
3畳一間の幸せが
いつまでもつづくわけがないというのは
わかっている。
これは、女の子が社会の側に
立ちそうになっている瞬間の歌です。
若かったあのころ、何も怖くなかったのに、
ただ、その人のやさしさが怖かったのは、
そういうわけじゃないかと思うのです。
男からすれば、「弱ったなぁ」という
ほんとうに困った歌です。


