なぜ、たなかまくんの席が 傘置き場になっているのかというと‥‥。
 「すみません、まずこの手前の 透明の傘2本は、ぼくのです」
最近雨がつづくもんね。 私たちの部屋には傘立てがなく、 自分で管理することになっています。
「ところが、この2本をここに置いてたら、 ある日から、この緑の傘が増えたんです」
これは、見た感じで ぜったいたなかまくんが持たなそうな傘だよね。 なぜに、あなたの机に?
「そうなんですよ。 なにかが増えたけど、 それがいったいどういうことか、 しばらくわからなかったんです。 ところがぼくは、見てしまいました。 出勤してきて、当然のようにここに傘をかける Mさんの姿を」
ああ、Mさんなら、やる。 合理効率が好きだもの。 たなかまくんの席、出口に近いから 帰りも忘れることなく傘を手にできます。
「同じものが置いてあるところ、 そこには同じものが増えていく」
そのとおり、その法則です。 私もこれからここに傘を置くことにしようかな。
「やめてー」 |