「こんなふうに、先を尖らせて
カットするわけ。
そうすると、蜜のところも食べられるし、
尖っていたほうが、
みずみずしく食べられるでしょ」

ところで私は、
監督のりんごの切り方が気になるんです。

「ああ、このりんごはね、
とにかく蜜がたくさんはいってるから、
そこを逃したくないわけ。
だから中心に向かって包丁を入れるのではなく、
ちょっとずらして切るんです」

「酒を飲んでいるときって、
何杯も何杯もいけちゃうでしょう？　
これはりんごで、
酒じゃないのに、
何杯も何杯もいける、
あの感覚になります」

わからないです。

「酒を飲む人なら、わかります。
ああ‥‥ああ‥‥！！」

「なんだか、酒を飲んでいるかのようです」

え？

香りがよくて、
とんでもなくジューシーです、
監督！

「うまぁーーーい」

「‥‥‥‥！！！」

パクッ！

「そうそう。
りんごを切ると、
真ん中だけ蜜が入って、
芯を除くとなくなっちゃうのがあるでしょう？
それじゃあだめなんです。
こんなふうに、全体に蜜が散っていなくっちゃ。

牛の脂でも同じで、
一ヶ所に厚ぼったい脂があるよりも、
細かいサシがはいっているほうがうまい。

このりんごをめざして、
何年も何年もかかったんだよ」

蜜が、霜降っている！