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2014/08/21 16:45 社会で役に立つのは。

「ミヤモト・ショックは、
 僕の心に
 ものすごいショックを与えました」

何がいちばんショックでしたか。

「やっぱり、先生方に
 ミヤモトくんの感想が『正解』だと
 言われたような気がしたんです。
 でも、芥川龍之介が、
 あの『蜘蛛の糸』という短編を通じて
 伝えたかったことって
 『天国にも蜘蛛が住んでるんですよ』
 ということじゃないじゃないですか」

それこそ、トビー先生の書かれた
「独り占めはダメよ」のほうですよね。

「大げさに言えば、
 それまでの価値観が崩壊したんだと思います。
 教科書的な正解だけ考えてたら
 いちおうマルだけど、
 いちばんのハナマルは、もらえない。
 そういうケースがある。
 ですから
 ここは教科書的な正解を書くべきか、
 それとも
 ミヤモト的思考の正解を書くべきか‥‥。
 国語の試験のたびに
 そのことが気になって気になって
 ぼくは、
 高校・大学受験だけでなく
 中学受験まで経験していますが、
 小説の読解は、
 最後まで、ぜんぜんダメだったんです」

でも、そこに気づいたのは
けっこう「いいこと」だったのでは?

つまり「ミヤモト的思考」の答えもあると
つねに気にしてたってことは
そっちで考えるクセもつくじゃないですか。

「そう。まさにそうなんです。
 だって社会に出て、
 さまざまな職業・アルバイトを経験し‥‥」

幾多の「ひどい目。」に遭い。

「結果的に、パリで
 レ・ロマネスクをはじめるのですが
 そこで役に立ったのは
 みんなと同じ教科書的な正解ではなく、
 ほとんど、
 ミヤモト的思考のほうだったから」

2014/08/21 15:35 ミヤモト・ショック

「小学3年生のときに
 芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を読んで
 読書感想文を書くという宿題が出ました。
 ご存知とは思いますが、
 ざっと、あらすじをお話すると‥‥」

お願い致します。

「地獄に落ちたカンダタという罪人は
 一度だけ、
 ちいさな蜘蛛のいのちを助けるという、
 善行をなしたことがありました。
 そのことを知った極楽のお釈迦さまが
 地獄の底のカンダタへ向けて
 一本の蜘蛛の糸を垂らしたんです。
 カンダタは、これ幸いと
 蜘蛛の糸を登っていくのですが、
 ふと下を見れば、たくさんの罪人たちが
 自分のあとについて登ってくる。
 このままでは
 糸が切れてしまうと思ったカンダタが
 これは俺の糸だぞと叫んだ瞬間に
 糸は、ぷっつり切れてしまった‥‥」

教訓的なお話ですね。

小学3年生の僕は
「蜘蛛の糸を独り占めにしようとしたから
 糸は、切れてしまったと思う」
と、読書感想文に書きました。

ええ。テストだったら「正解」ですよね。

「おそらく、友だちの多くも、
 同じようなことを書いたと思います。
 でも、同級生のミヤモトくんだけは
 ちがいました」

はい。

 「天国にも
  蜘蛛が住んでいるんだなと思いました」

‥‥素朴な感想ですね。

「すると、そのミヤモトくんの感想が
 先生がたの賞賛を浴び、
 最優秀の感想文にえらばれたんです」

なんと。

「これが、国語の試験だったらどうですか。
 僕をはじめ
 その他大勢の生徒が書いた
 蜘蛛の糸を独り占めにしようとしたから
 糸は切れてしまった、
 という答えは、文句なく100点ですよね。
 しかしながら、
 読書感想文においては、
 80点かも知れないけど100点じゃない。
 100点は、ミヤモトくんの書いた
 言っちゃあなんですけど、
 ちょっと、すっとんきょうな感想のほうで
 それが、じつに小学生らしい発想だと、
 いちばんの評価を受けたんです」

ははあ。

「このとき、
 ぼくは『ふたつある』と思いました」

ふたつ、ある?

「国語で『正解』するのには
 ふたつのやりかたがあるんだな‥‥と」

なるほど。

「教科書的な正解と、
 ミヤモト的思考の正解と」

そのことを、小学3年のときに悟った。

「そうです」

そしてそれが‥‥ミヤモト・ショック。

「そうなんです」

2014/08/21 15:35 小説の読解

トビー先生、トビー先生。

本日のテーマである「国語」には
苦手意識があるって人も多いと思います。

「ええ、ぼくも苦手でした。
 とくに、どうしても
 『小説の読解』ができませんでした」

そうなんですか。

「それ以外の評論の読解や、
 古文漢文は、なんとかなったんです。
 でも、小説の読解だけは難しかった」

たしかに、受験にまつわる話で
「その小説を書いたご本人に
 問題を解かせたら、答えを間違った」
みたいなのって、よく聞きます。

「僕の場合は
 ハッキリ、できない原因があるんです。
 小学3年生のときに
 僕を襲ったそのできごとを、
 僕は、
 自分の中で『ミヤモト・ショック』と
 呼んでいるんですが」

‥‥ミヤモト・ショック。

2014/08/21 14:53 トビー先生、到着。

本日、お二人目の先生が到着されました。

ギラギラと照りつける真夏の太陽と
同じくらいまぶしいピンク色、
「ほぼ日」では
「ひどい目。」ですっかりおなじみ、
レ・ロマネスクのトビー先生です。

何を隠そうトビー先生は
広島県屈指の進学校・修道高校から
慶応義塾大学経済学部へと進み、
その後、
さまざまな紆余曲折、
試行錯誤、浮き沈み等を経て、
現在パリでもっとも名高い
日本人ポップデュオとなったお方。

NHKの教育テレビで
小学3〜6年生向けの国語の番組
「お伝と伝じろう」
にも出演しておられることから、
本日は
おもに「国語」について
おうかがいしていこうと思います。

トビー先生、
どうぞ、よろしくお願いいたします!

2014/08/21 14:35 では、松家先生

松家仁之先生。
たくさんのお話をありがとうございました。

いつもやさしくて、
いろんなことにくわしく、
偉業をたくさんされてきたのに
(そしてこれからも、される方であるのに)
フランクに接してくださって、
しかも、こちらの話も、
ときには驚いたりして聞いてくださる。
こんなコミュニケーション上手代表が、
ひきこもりだったなんて‥‥
ありがとうございました!

松家仁之さんの小説の最新作は
8月28日発売予定で、
「優雅なのかどうか、わからない」
(マガジンハウス刊)
です。あの、CasaBRUTUSで連載していた
あれですよ!!
チョ〜たのしみです。
単行本化にあたって、全面改訂されたそうです。

そして、酒井順子さんとのトークイベント
近く予定されているそうです。

松家先生は、お姿も素敵なのですが、
お声とお話も、もう、たいそう素敵なので、
ぜひ、お近くのみなさん、行ってみてください!

松家先生、また、近いうちに。
ありがとうございました!

2014/08/21 14:35 おでん賞賛

「はうわー。おでんがうまいです。
 いま、感動の嵐です。
 シェフさんを尊敬します。
 自分のおでん歴のなかでも最高です」


「やったー!」

では、松家先生、
おでんを食べながら、最後のシメを。

「勉強というのは、あんがい、
 知らないことを知るよろこびが
 あると思います。
 漢字でもことわざでも、英語でも、
 勉強していると『へー』『そういうことか』と
 思うことが含まれています。
 そういうのって、おもしろいですよね。
 勉強はつらいだけじゃありません。
 受験も、
 暗いトンネルというわけではないと思います」

2014/08/21 14:27 頭とハート

「なんでも、やるのは、
 その人の頭とハート。
 ね? ここなんですよ」

2014/08/21 14:13 おでんが来た!

ここで特製の
静岡おでんが運ばれてきました。

「うまそう!!!」

松家先生、これをたのしみにして
本日来てくださったのです。

「で、さきほどのお話のつづきですがね。
 それは、レポートだけの問題ではないのです。
 ものごとというのは
 複雑にからみあっているものです。
 問題の大きさに
 呆然となったままではいけないと
 ぼくは思います。
 
 さきほど、災害のときに
 おにぎりをむすぼうと思った人がいたら
 それでいいのです、
 という話をしましたが、それと同じ。

 例えば、難民問題って、とても
 手に負えないと思うでしょう。
 複雑に絡み合ったいろんなことを
 解決するなんてできないと思ってしまう。

 でも、難民の衛生問題を解決しよう、
 と思えばどうでしょうか。
 手を洗えば
 伝染病の被害は格段に減るとも言われます。
 もともと手を洗う習慣がなかった人たちに
 手洗いをしてもらうためにはどうしたらいいか、
 これを考えることにしましょう。

 じっさい、それを考えた人がいました。
 その人は、石鹸のなかに小さなおもちゃを
 入れることを思いつきました。
 石鹸で手を洗うということを
 たのしいものにすればいいじゃないか、と
 考えついたのです。

 全体の問題は解決できないかもしれないけど
 それはすばらしい仕事です。
 問題は、大きいままでは解決ができません。
 それこそ、糸井さんがいつもおっしゃる
 『できることをしよう』だとぼくは思います。
 勉強も、仕事も、同じです。
 その人にできることをすればいいと思います」

2014/08/21 14:10 おたよりに答えます

「まずね、レポートというものは
 課題があるわけです。
 ゼロからやるわけではなく、 
 目の前にある何かを調べていくものです。
 やっかいなのは、その課題が
 あまりにも漠然とした大きなテーマであること。
 レポートのテーマというのはだいたいが
 そういう感じですよね。

 あまねく全体を考察するのは不可能です。
 大切なのは、絞り込みです。

 私はここに関心を持った、
 ここについて意見を書けそうだ、
 そうやって、課題テーマで広げた大風呂敷を
 自分なりにたたんでいくことが大切です。

 たとえば‥‥そうですね、
 東京の交通渋滞についてレポートを提出、
 というときには、
 東京の道路事情や人口の分布、車や産業の流れ、
 東京の成り立ちや地形まで
 その原因を調べていくことになるでしょう。

 その原因のひとつに、
 自分なりに絞りこんでいきます。
 道の流れだったらそれだけでいい。
 そこに自分なりに関心を持つことができれば
 それについて分析してみるといいのです。
 それが考察です。

 いっぽう感想は、
 『車乗んなきゃいいじゃん、
  地下鉄便利だし、いいよ』
 ということでいい。
 感想は自分勝手な意見でかまいません」

そうですね。
あまりにも壮大なテーマを示されて
そんなこと結局解決できないしなー、と呆然となって
夏休みの20日くらいを費やしてしまう
ということが多いと思います。

「大きなテーマに惑わされてはいけません。
 東京都庁だって、
 東京都のことはぜんぶやります、という課は
 ありません」

2014/08/21 14:05 質問コーナー

それではここで、
読者のみなさんからの
質問コーナーに行かせていただきたいと思います。

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<おたより>
中3の女子です。
宿題でレポートを書くものが多いのですが、
「結果」と「考察」、
「考察」と「感想」のちがいをつけて
 書くのが苦手です。
 感想はうまく自分のことばで表すことができず、
 とても短い感想になってしまいます。
 どうしたらよいでしょうか。
(眉)
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「ふふーむ。レポート」