「聞く人」が、世界を優しく支えてる。 「聞く人」が、世界を優しく支えてる。
相手の話を聞くだけで、
その場の空気を明るくしてしまう人がいます。
『安住紳一郎の日曜天国』名アシスタントの
中澤有美子アナウンサーです。

「聞く」は「話す」の影に隠れがちですが、
「聞く人」が生み出している価値や効果は計り知れません。
もしかしたら、経済や誰かの人生まで支えているかも? 
そんな「聞く」の力を信じて突き進む中澤さんが、
「上手に聞きたい!」という人へ、
ご著書『口下手で、大丈夫  
~2.4秒に1回頷く、最強傾聴力~』
をもとに
傾聴のヒントをたくさんくださいました。

聞き手としての悩みを中澤さんに相談したのは、
ほぼ日の玉木、安木、松本です。
第6回 「聞く」と「考える」の配分
安木
中澤さんは、
頭に浮かんだことを口に出すかどうか、
取捨選択されているとおっしゃいましたが、
それをやりながら
相手のお話に集中するって、
難しいことのように思います。
どうされているのでしょうか。
中澤
そうですよね。
「『次は何を発言しよう』
『どう打ち返そう』と考えているうちは、
人の話はあまり聞けていない」と、
私も本に書いてしまいました(笑)。
というのも、この本は、
放送など、第三者に聞かれているなかで
話すのではなく、相手と一対一で
じっくり話すときを前提としているんです。
そのようなときは、
私も取捨選択を意識せず、
ぜんぶの力を「聞く」に振っています。



言うことを取捨選択しながら
お話を聞くのは、お仕事で、
第三者に聞いてもらうような
インタビューなどの場面です。
そういったときは、話を聞く自分と
リアクションや質問を考える自分、と、
力の配分を分けています。
場面によって、その配分が
3:7になったり、逆になったりします。



なので、そうですね‥‥
聞く自分と質問する自分との
力の配分ができていれば、
質問を考えながらでも、相手のお話のなかに
「これは聞き逃せない」というキーワードを
見つけたら、必ずそれがキラーッと輝いて、
ビビビッとくるはずです。
そうなったら「ちょっと待ってください。
そのキーワードについて
先にお尋ねしたい」と、
用意していた質問を流して
話の流れに沿った質問をすることが、
臨機応変にできると思います。
だから‥‥その場の自分の感性を
信じていいのではないでしょうか。
たどたどしくて、すみません(笑)。
写真
安木
いえいえ、とんでもないです。
聞く自分と質問をする自分で
力の配分を分けるということ、
勉強になりました。
玉木
ご著書の内容は、「相手のお話を聞く」
ということに全振りしているんですね。
中澤
はい。なので、「聞く」のなかでも、
いちばん極端なバージョンなんです。
ここに書かれていることを
完璧に実践するのは難しくても、
目の前の人の話を聞くときに、
1分でも意識していれば、
お相手には、ものすごく
「話、聞いてくれたなー」
と感じてもらえると思います。
「30分、1時間、2時間、この態度で
人の話を聞きましょう」という本では
ないんです。10分でも‥‥10分は長いなー。
玉木
10分でも大変かもしれません(笑)。
中澤
10分でも疲労困憊ですよね。
1、2分はやってみよう、
という感じで実践してみていただけたらと
思っています。
松本
日常会話でも、インタビューでも、
沈黙の時間や長い間ができたときに
「大丈夫かな」と不安になってしまいます。
そして、間を埋めようと余計なことを
口走ったり、
「いやぁ、ほんとにすごいですよね」と、
とにかく褒めようとして
なんでもかんでもポジティブに
言う人になり、空回りしたりします。
聞き手は、沈黙や間の時間を
どんなふうに受け止めて次の話に
つなげるのがいいんでしょうか。
写真
中澤
間は怖いですよね。
とくに、お相手が目上の人だったりすると、
いたたまれない気持ちになるのは
よくわかります。
けれども、意外と相手は、間について
ほんとに気にしていないんですよね。
その間を使ってなにか考えていたり、
次に言う言葉を練ったりしていることが
大半です。
だから、堂々としていていいし、
聞き手である自分の責任だと感じる必要は
ないと思いますね。
その空間を作っているのは
自分だけじゃなくて、相手も一緒なので、
間ができたのもお互いさまです。
「間を埋めなきゃ、どうしよう」
と思わなくてもいいんです。
いまも、松本さんの感じのよさは
じゅうぶんに伝わっているので、
焦らなくて大丈夫だと思います。
松本
‥‥! ありがとうございます。
玉木
中澤さんに
「感じがいい」と言ってもらうなんて、
こんなに自信になることがあるでしょうか。
松本
本当に。
これからは自信を持って
取材に行けます(笑)。
安木
私も「間」に関する質問です。
第三者が見たり聞いたりする
インタビューや取材の場合も、
間があっても大丈夫なのでしょうか。
写真
中澤
編集なしで、そのインタビューが
視聴者に届いてしまう場面ですね。
安木
はい。そのとき、間とテンポ、
どちらを優先したらいいのでしょう。
中澤
第三者の目もあって、
間があまりに怖いときは、
考えながら喋ってしまっては
どうでしょうか。
「こうなんですね。そしていま、
このようにおっしゃいました。
ということは、こうなんですか?」と、
脳内で考えを整理するようすを
そのまま口に出してしまえば、
間は埋まります。
安木
たしかに。
中澤
相手にとっても
「自分の言ったことが伝わっている。
そしてこの質問が出てきたんだな」と、
こちらの質問の意図が
わかりやすくなるので、
いいことづくめです。
最初から完成された質問を繰り出す必要は
まったくなくて、
ゆっくりゆっくり考えをたどっても、
見ている観客のみなさんも
一緒に理解しながら進めると思います。
玉木
テレビやラジオで見かけるような、
マシンガントークのやりとりを、
必ずしも目指す必要はないんですね。
中澤
そうですね。素早いトークは心地よくて
「あっぱれ」と感動しますし、
そんなやりとりに酔いしれたいし、
自分もできたらいいなと思うけれども、
そうじゃないコミュニケーションも
普通にあっていいはずなんです。
テレビなどでマシンガントークを
見慣れていると、それができない自分に
劣等感を持ってしまいますが、
あれが特別なんです。
普通の私は、落ち着いて
普通のコミュニケーションをとって、
なんら問題ないと思っています。
写真
玉木
誰かに注意や確認をしたいとき、
悪意を伝えたいわけではないのに、
どうしても言葉がきつく伝わってしまう
ことがあります。
そんなときに、ちょっとでも柔らかく
コミュニケーションをとるには、
どんなことを心掛ければいいでしょうか。
中澤
確認したいことに
ダイレクトでアクセスして、
それだけで去ってしまうと、
きつく聞こえるのかもしれません。
確認事項の前後に、
なにかクッションを設けると
いいのではないかと思います。



たとえば
「あの案件について確認なんだけど」
といきなり伝えるより、
「あの案件、こういう間違いや
ミスが起こりやすいから、確認したくて」
という一文を入れるとか。
そして最後に「なにか困ったことが
できたら教えてね」
「そこまでできてるなら安心したよ」
といった言葉を加えるんです。
こんなふうに前後のクッションがあると、
ソフトに受け取られますし、
「私のために言ってくれてるんだ」
とも伝わって和むんじゃないでしょうか。
玉木
「挟む」ということにハッとしました。
最初にワンクッションを入れるようには
していましたが、
確認し終わったあとも、
もうワンクッション入れて
お返しするんですね。
中澤
余裕がある場合は、
そうできたらいいなと思います。
余裕がなかったり、
毎回クッションを挟むのは
まどろこっしくて無理だなと思ったら、
プロジェクトが全部終わったあとにでも
「あれ、よかったよ。ありがとう」
と伝えたりして、長期的に
コミュニケーションをとるのも
いいと思います。
(明日に続きます)
2026-09-27-SUN