英国のファクトリーブランド
「Yarmo(ヤーモ)」から、
襟が印象的な「ラッフルシャツ」が登場します。
ヨーロッパの老舗ブランドを
早くから日本に紹介してきたアパレル商社、
グラストンベリーの内田起久世さんに、
「Yarmo」というブランドの特徴や
おすすめの着こなしについて伊藤さんがインタビュー。
内田さんが「万能」と語るこのシャツ、
グラストンベリーの “別注” なんですって。

写真=山川路子(weeksdays)

内田起久世さんのプロフィール

内田起久世 うちだ・きくよ

株式会社グラストンベリーの
ブランドディレクター兼プレス。
グラストンベリーは、英国を中心に、
『Sanders』『Yarmo』『Honnete』など
伝統的な製法や技術を大切にし、
確かなものづくりをする老舗ブランドを
長く日本に紹介している。
「衣料・アクセサリーなどを取り扱うにあたって、
アイテムの背景にある歴史やストーリーとともに、
マーケットに丁寧に広げていくことを心がけています」
weeksdaysでおなじみの
『ALWEL』にも携わっている。

01
英国の作業着をレディースウェアに

伊藤
内田さん、今日はどうぞよろしくお願いします。
はじめに「Yarmo」というブランドについて
伺わせてください。
「weeksdays」では2024年に
キルティング仕様になったコートを紹介したんですが、
そのとき、ブランド紹介が
きちんとできていなかったんです。
そもそもYarmoというブランドは
どのくらい前からあるんでしょうか。
内田
創業が1898年ですから、
もう128年になります。
英国のワークウェア工場から生まれたブランドで、
イングランド東部地域のノーフォーク州
グレート・ヤーマス(Great Yarmouth)という
海岸沿いの町にちなんで「Yarmo」と名付けられました。
グレート・ヤーマスは港町で船が出入りするので、
船員さんが着られるワークウェアを
たくさん作っている時期もあったそうです。
本社の人にブランドのことを聞いたら、
歴史も長いし彼らも言いたいことが多すぎて、
もう大変なことになるんです。
伊藤
128年! 老舗なんですね。
内田
グラストンベリーでYarmoの取り扱いを始めたのは
弊社の設立当初からですから、
25年以上のお付き合いになります。
うちの社長がロンドンで、偶然、
Yarmoのドライバーズジャケットを
見つけたのがきっかけでした。
伊藤
どんなお店で見つけられたですか。
内田
ロンドン中心部のウエスト・エンドの
大通りから一本入ったところに
カーナビー・ストリートという通りがあるんです。
そこは1960年代から
個性的なお店が集まっているところなんですが、
ワークウェアをずらりと並べている
古い日用品店があったんですって。
そこで「ドライバーズジャケット」を見つけて。
伊藤
ということは、運転手のためのジャケット‥‥?
内田
そうなんです。バスの運転手さん用なんですよ。
ずっとハンドルを握っている姿勢が取りやすいように、
肩からアームが前方に向けてついていたり、
そのアームがカーブしていたり、
座ったままでも裾がもたつかないように
丈が短めになっているんですよ。
伊藤
そんなジャケットがあるんですね。
知らなかったです。
それがYarmoだったんですね。
内田
はい。
当時、Yarmo工場では他にシェフパンツ、
ビブ&ブレイス(ビブは胸当て、ブレイスは
肩ひものこと)というオーバーオール、
ボイラースーツと呼ばれているツナギなどを
扱っていたそうです。
伊藤
じゃあ、主に男性が作業着として
着るものだったんでしょうか。
内田
Yarmoでは男性用、女性用という区別はないんですが、
時代を考えると、男性が着ることが
多かったんじゃないかなと想像します。
グラストンベリーで扱い始めたとき、
日本ではサイズ的にもワークウェアというところでも
メンズ服のイメージだ‥‥とは思ったんですが、
私自身はメンズっぽい服をオーバーサイズで着たり、
古着と合わせて無骨な印象を生かす着こなしが
すごく好きだったので、ユニセックスで、
女性に向けても着られる服として打ちだしました。
伊藤
オーバーサイズは今でこそ一般的になりましたけど、
当時は新鮮だったんじゃないですか。
内田
そうですね。
そのうち、Yarmoをレディース服として
気に入ってくださるお客さまも増えてきたので、
女性らしいアレンジを加えたアイテムを
別注することを始めていきました。
Yarmoの工場では今でも
昔からのワークウェアを同じように作っていて、
英国では地元の方たちが愛用しているんですけど、
たとえばジャケットの丈はそのままだとかなり長いので、
レディース寄りに短くしたり。
伊藤
日本人との体型の違いもありますしね。
伊藤
ところで、グラストンベリーという名前は、
英国の地名が由来でしたっけ。
内田
はい。イングランド南西部の
サマセット州にある小さな町の名前です。
1970年代から行われている大きな音楽フェス
「グラストンベリー・フェスティバル」でも有名で、
弊社社長が音楽好きなのも
その地名を社名にした理由の一つだと聞いています。
弊社設立の頃の英国は
アートや音楽、ファッションのムーブメントなど
ポップカルチャーが盛んになってきて、
デザインミュージアム(世界で初めてモダン・デザインを
対象にロンドンで開館したミュージアム)ができたり、
映画では『トレインスポッティング』が
流行ったりした時代でした。
日本にいる私たちの中では
英国というと質実剛健でクラシック、
みたいなイメージもありますけど、
私たちグラストンベリーが立ち上がった頃というのは
そういうポップな雰囲気も
世の中に流れていたのかなと思います。
伊藤
『トレインスポッティング』と聞いて
なるほど、と思いました。
御社の扱うアイテムの世界観と合っている感じがします。
クラシック音楽ばかりの音楽界に
ビートルズが現れて世界を席捲したとか、
ヴィヴィアン・ウエストウッドのように
パンク・シーンから生まれて世界的になった
アパレルブランドもある。
英国って、伝統の中から革新的な
いろんな文化が生まれるのが不思議ですね。
内田
ほんとですよね。
私はYarmoのような質実剛健なブランドも、
英国のポップカルチャーも、
どちらも大好きなんです。
クラシックも聴くし
オアシス(ロックバンド)も聴く、みたいな。
伊藤
内田さんの着こなしから、
ロックやパンクのような要素も感じます。
今回「weeksdays」で取り扱わせていただく
ラッフルシャツのようなかわいらしいテイストのものを
作業着のメーカーが、というのも、とても面白いです。
内田
このアイテムはグラストンベリーの別注で作ったもので、
ここ数年うちの定番商品にしているんです。
Yarmoは作業着のメーカーなので、
本来はこういった装飾のある襟は作っていないんですよ。
襟の形違いなら、
バンドカラー(首元に帯状の布が立ち上がった形の襟)
のシャツはもともとあるんですけど。
伊藤
それも素敵ですね。
ポケットが大きくて。
内田
そうなんです。
Yarmoで作られたオリジナルの形のものを
そのまま日本で紹介するときには、
ワークウェアではなくファッションとして
着られることになるので、
今回のようなプロデュースをすることもありますし、
オリジナルを紹介するときは
「これと合わせるとかわいいですよ」
ということをお伝えするようにしています。
たとえばバンドカラーシャツは
ドライバーズジャケットの下に着ると素敵ですし、
今回のラッフルシャツだったら
私はボイラースーツの中に重ねるのが好きです。
このボイラースーツも
Yarmoのロングセラーアイテムなんですが、
シンプルなTシャツと合わせるよりも、
ラッフルシャツの襟先が
ちらっと見えるのがいいなぁと思って。
伊藤
ほんと素敵。
同系色で合わせるのがまたいいですね。
(つづきます)
2026-04-20-MON