国産ジーンズ・カジュアルウェアブランドの
JOHNBULL(ジョンブル)。
本社は国産ジーンズ発祥の地である
岡山県倉敷市・児島(こじま)にあります。
今回「weeksdays」で取り扱うものを含めて
ジーンズが作られる工程を見せていただけると聞いて、
伊藤まさこさんが児島を訪れました。
JOHNBULLの自社工場と、
加工を委託しているWells(ウエルズ)という会社の工場。
見たこともない最新型の機械と、
機械にできない仕事をこなす職人の技を間近で見て、
「わぁ」「すごい!」がたくさん飛び出しました。
知らなかったことばかりで、ほんとうにすごいんです。
写真=畑唯菜(weeksdays)
菅野伸哉さんのプロフィール
菅野伸哉
㈱ジョンブル副社長
生産部で経験を積み、2025年副社長に就任。
長年の現場経験とマネジメント力を活かし、
企業のさらなる発展に取り組む。
藤村生互さんのプロフィール
藤村生互
㈱Wells 取締役副社長
2003年に二十歳で入社後、この道一筋。
様々なアパレルブランドからの加工依頼を担当し
こだわりのものづくりを追求するデニム加工クリエイター。
02替えのきかない道具たち
- 伊藤
- 型紙を切るのも、自動でできるんですか。
- 菅野
- 型紙の出力機がナイフで切れ目を入れてくれますが、
それを切り分けるのはパタンナーの仕事です。
一つ一つ確認しながら手で切り分けて、
パーツごとにセットしていくんです。
型紙ができたら生地を裁断していくんですが、
これも専用の機械があるんですよ。
まず、生地を裁断する前に、
「延反機(えんたんき)」という機械に入れて広げます。
原反は生地をロール状に巻いたものなんですが、
デニムだとだいたい1巻きが50mで
かなりの重さになるので、
男性がセットすることが多いです。
サンプルを作る場合は1枚だけ裁断するんですが、
量産では200~300枚作るので、
生地を重ねて一度に切るというやり方をしてます。
- 伊藤
- 重ねるだけでも大変そうですね。
- 菅野
- 昔は両サイドにスタッフがいて
引っ張りながら重ねたりしていたんですが、
今はパネルに「◯mを◯枚重ねる」とセットすれば
機械が自動でリフトアップして重ねてくれます。
重ねた生地は重たいので動かないんですが、
動かしたいときは下からエアーが出て
浮くようになっているので、
女性でも一人で動かせるんですよ。
- 伊藤
- こっちは切っているんでしょうか。
- 菅野
- これはCAM(Computer Aided Manufacturing)という
自動裁断機なんですけど、
ナイフが高速で動いて切っていく仕組みです。
生地には上からナイロンを被せて真空にしているので、
中の布はズレないようになっています。
ちょうど今トップスを裁断しているところですね。
- 伊藤
- 生地に無駄がないですね。
- 菅野
- そうなんです。
パタンナーが成形したパーツにあわせて、
機械の方で生地のロスが出ないように計算し、
幅や長さを1度マーキングします。
そのデータをパタンナーが確認して大丈夫であれば、
そのまま裁断していきます。
- 伊藤
- 作るものによっては、
パターンの向きは縦がいいとか
横に取りたいみたいなことがありますよね。
その辺りも機械のほうで判断してくれるんですか。
- 菅野
- パーツの向きは全てパタンナーが決めるんですが、
パンツの場合は穿いたときに横方向に伸びやすいように
縦の地の目(経糸の方向)になるように取るので、
基本形をデータに入れると
自動で身頃を縦にマーキングしてくれます。
- 伊藤
- すごいですね。
- 菅野
- 裁断が終わったものは、
次の工程の縫製スタッフに渡しやすいように
パーツごとに仕分けをしてから束にまとめて、
生産の指示書に沿って準備しています。
指示書には、
品番と色番、サイズ展開、
ワンウォッシュやユーズド加工、
数量の振り分けなどが書かれています。
- 伊藤
- 指示書にはステッチの幅とかも
書かれてるんですか?
- 菅野
- 縫製の指示についてはまた別で、
「縫製仕様書」というものを作っています。
うちでは縫製は「ライン縫製」といって、
一から十まで1人が縫うのではなく、
各工程別に担当が分かれていて
次の人に渡しながら組み上げていきます。
昔は全員で同じものを1000枚~5000枚ほど
量産していた時代もありましたが、
今はいろんな種類のものを同時に少量作る、
というやり方をしていて、
こっちのラインではジーンズ、
あっちのラインではGジャンを縫っているような感じです。
少人数でやることで効率が上がるんですが、
若い人たちにいろんな工程を担当してもらいながら
技術を継承している最中です。
- 伊藤
- 得手不得手もあるでしょうが、
いろいろな工程がわかると、
作るものの全体が見えてきていいですね。
- 菅野
- 縫製の工程をスタートする前に、
「前工程」といって
縫製スタッフがすぐ縫えるような状態にするための
準備作業があります。
たとえばポケットを縫いつけるために
アイロンでポケットの端を1cm内側に折ったり、
縫う時に伸びやすい箇所の裏に
芯地を貼って伸びにくくしたり。
今は機械も発展してるので、
それぞれ専用の機械で同じものを大量に作れば
その方が効率がいいんですけど、
いろんな種類のものが流れてくると
機械では対応しきれないので、
やっぱり手作業が必要になりますね。
これが「縫製仕様書」です。
- 伊藤
- どこをどう縫うか、書かれているんですね。
- 菅野
- パーツの縫い方、
縫い目を何mmで縫うかというステッチ幅、
「運針」といって、
3cm間に針目を何回落とすかという指示まで
全て書かれています。
ジーンズは運針を大きめに縫ったり、
ドレスシャツは細かく縫ってきれいに仕上げたり
調整しているんですが、
ここまで細かく指示しているところは
少ないんじゃないかなと思います。
- 菅野
- 縫製に使っているのは平(ヒラ)ミシンといって、
デニムのような厚物に対応できる工業用のものです。
家庭用ミシンと同じで上糸と下糸があるんです。
ここで生地を縫い合わせたり、
オーバーロックミシンで布の端をかがったりしています。
- 伊藤
- 基本は直線縫いですか。
- 菅野
- そうですね。
でも、たとえばGジャンの脇の
カーブがきつい部分なんかは、
直線縫いだけでもかなりの技術が必要です。
平ミシン以外に
ジーンズを縫うための一番特徴的なミシンがあって、
「巻き縫いミシン」というものです。
- 伊藤
- 巻き縫い‥‥、をするミシン?
- 菅野
- はい。
先ほどの平ミシンは
生地を中表に2枚重ねて縫えば
開いたときに縫い目が裏にくるんですけど、
巻き縫いミシンの場合は2枚の生地の端を
縫い代の中に巻き込んで縫うので、
表からも裏からも端が見えないし、
とても強度が出るんです。
とくにジーンズの場合は「尻」といって
ヒップ中央の縦の切り替え線は
座るときに一番負荷がかかる場所なので、
破れないように巻き縫いにします。
ミシンに「ラッパ」というアタッチメントがついていて、
生地を通すと自然と巻ける仕組みなんですけど、
簡単に見えてこれがなかなか難しいんです‥‥。
スタッフに実際に巻いてもらいましょうか。
- 伊藤
- ぜひ見たいです。
- 菅野
- パンツの「尻」部分は、
お尻の左右のパーツが逆向きにカーブしているんですね。
それをアタッチメントのラッパの中で
合わせていくんですが、
カーブがきつい箇所がとくに技術が要ります。
- 伊藤
- そうでしょうね。
中表に合わせて縫うのだとイメージできますけど‥‥。
最初に生地をセットすれば、
縫われて出てくるんですか。
- 菅野
- そうですね。
ラッパが巻き込んでくれるんですけど、
生地を入れすぎるとズレて縫われていってしまうので
手で調整しながら縫っています。
- 伊藤
- すごい技術ですね。
しかも、ダブルステッチで出てきました!
強度もしっかり。
- 菅野
- こういった特殊な加工ごとに
部品もいろいろそろっています。
たとえばウエストのベルト部分にあたる
帯状のパーツは、
身頃の生地を上から挟み込むようにつけるので
手作業だと工程が多いんですが、
こういう専用のアタッチメントを使うと
挟んだ状態で一度にミシンで縫えるんです。
他にもいろんな種類の部品があって、
全て手作りで作ってもらったものです。
- 伊藤
- えっ。手作りなんですか?
- 菅野
- はい、特殊なものなので。
けれど今は作ってくださる職人さんもいなくなったので、
壊れたらおしまいです。
みんなで管理しながら、大切に扱ってます。
- 伊藤
- それは貴重ですね。
- 菅野
- こちらの「Union Special」
(Union Special Machine Company/1881創業)
というアメリカの老舗メーカーのミシンも、
日本に数台しか残っていないんです。
ワークウエアが普及した当時はよく使われていたんですが、
量産型ミシンの生産が衰退していって、
今はこれと同じミシンは作られていません。
- 伊藤
- これも現役で使われているんですか?
- 菅野
- はい、使っています。
機械も古いしツギハギで直しているので
使いづらいんですけど、
これでないと作れないものがあるんです。
細かい話ですが、
国産ジーンズのステッチのゲージ(間隔)が
0.6mm幅なのに対して、
このミシンでは0.72mmと若干広めなので、
ちょっと無骨な印象に仕上がります。
それから糸調子(糸のテンション)を強くして
生地をぎゅっとしめながら縫うと、
「パッカリング」といって、縫い目が波打つんです。
- 伊藤
- あえてパッカリングができるようにしてるんですね。
- 菅野
- そうです。
普通の洋服の場合はパッカリングが起こらないように
きれいに縫うのが基本ですけど、
ジーンズの場合は「アタリ」といって
洗った後に生地の凹凸によって
色が落ちる部分と溜まる部分ができて
独特の表情が出るので、
あえてパッカリングをつくるようにしています。
この機械なら縫製のパワーもあって
糸調子をかなりきつくできるので、
国産ミシンで縫うのとは全く印象が変わるんです。
- 伊藤
- 全然知らなかったです。
作るものによって、
使う機械も使い分けられているんですね。
(つづきます)
2026-03-08-SUN