weeksdaysには初登場のブランド
「MEYAME(メヤメ)」。
学芸大学にあるショップ兼アトリエを伊藤さんが訪ね、
デザイナーの染谷めぐみさんと裕亮さんご夫妻に
ブランドの歩みについてインタビューしました。
今回「weeksdays」で取り扱うCOTTON KNIT TEEは、
めぐみさんが心身ともに
いろいろな“変化”を経験したことから
生まれたデザインだそう。
そのしなやかで、美しい創作のひみつ、
たくさん聞かせていただきました。

MEYAMEのプロフィール

MEYAME メヤメ

「ずっと手元に残しておきたい服」をコンセプトに、
公私共にパートナーである染谷めぐみさんと
染谷裕亮さんが立ち上げたブランド。
母体となる株式会社 SO CHRONICLEは2017年に、
「MEYAME」は2018年秋冬シーズンにスタート。
色をとても大事にしているMEYAMEでは、
デザイナーとしてめぐみさんが
まずそのシーズンの色を一人で決め、
それ以降のデザインに関わる仕事はすべて
裕亮さんと共同で進めていく。
最初に作りたいものを、出来るだけ多く
リストアップしたなかから、
これ以上減らせないというところまで厳選、
そこから具体的なデザインに取り掛かる。
何年か後に着ても違和感のないデザイン、
質のいい素材、
着心地がよく身体をきれいに見せてくれるパターン、
そして、どこか少し色気を感じるような
コレクションを発表し続けている。

■Instagram
■website

染谷めぐみさんのプロフィール

染谷めぐみ そめや・めぐみ

MEYAMEデザイナー。
地元の長野県でセレクトショップの
販売・バイヤーを5年ほど経験。
上京しセレクトショップ
「Shinzone(シンゾーン)」で販売、
バイイング、MD、デザイナーを経験。

家庭では一児の母。家で仕事をすることも多く、
家を居心地の良い空間にすることが好き。
「最近は特にコーヒーが好きで、
ミルで豆をひくときのガリガリという手応えと
音、香りに癒されています」

■めぐみさんのInstagram

染谷裕亮さんのプロフィール

染谷裕亮 そめや・ゆうすけ

MEYAMEデザイナー、
株式会社 SO CHRONICLE代表取締役。

セレクトショップ「Shinzone」に15年間在籍、
販売、営業、店舗運営、MD、バイイングなど
幅広い業務を経験。

めぐみさんとは一緒にデザインをしているが、
ディレクター的視点の方が強いという。
「彼女の考えていること、作りたい服、
スタイルが形になっていくことを大切に、
客観的な視点を持つのが僕の役割だと思っています」
夫婦で始めた会社も4人のスタッフが入り、6人に。
「喜んでもらえるものを楽しみながら丁寧に作り、
届ける、という想いで日々取り組んでいます」

家庭では一児の父。
幅広いジャンルの本を読むことが好き。
最近、学芸大学の事務所近くに
お気に入りの古本屋さんを見つけたことが喜び。

01
コロナ禍がおおきな転換点に

伊藤
染谷さん、はじめまして。
今日はよろしくお願いいたします。
裕亮
こちらこそ、よろしくお願いします。
めぐみ
お願いします。
‥‥ちょっと緊張しています。
伊藤
そんな! 大丈夫ですよ。
まずは、ブランドのなりたちから
お伺いできたらと思っています。
裕亮
はい。
MEYAMEというブランドは、
2018年の秋冬に2人でスタートしました。
その前までは、
Shinzone(シンゾーン)」という
「デニムに似合う上質なカジュアル」をコンセプトにした
レディースのセレクトショップで、
妻が10年、僕が15年ほど働いていたんです。
どちらも、販売からMD(マーチャンダイザー)、
バイイング、企画まで、
幅広い分野を担当してきたんですけども、
「もう少し女性らしいものを作りたい」
という思いが出てきて、
2人で独立することを決めました。
Shinzoneが扱っているのは
カジュアルスタイルの服が多かったので。
伊藤
最初からレディースブランドにしようと思われたんですか。
裕亮
はい。
実はShinzoneという会社は、
僕の父が創業したんですけれど‥‥。
伊藤
あら、そうなんですね。
裕亮
兄も立ち上げに参加して、
創業3年目に僕が入社しました。
その時点で取り扱っている服が
レディースだけだったということもあって、
僕自身、今に至るまで
レディースだけに携わってきています。
めぐみ
私はShinzoneで10年働いて、
自分の年齢が上がってくると、
服に求めるものが変わってきたと感じたんです。
デザインはもちろん重要ですけれど、
それだけではなくて、
着心地の良さだったり、
きれいに見えるけど楽ちんに着られて、
でも色気や品もある。
そんな服を着ていきたいな、
と思うようになって。
伊藤
わかります。
年齢とともに、
身体や心って変わりますよね。
めぐみ
そうですよね。それで夫とたくさん話し合って、
簡単ではないかもしれないけれどやってみよう! 
と、レディースブランドとして独立を決めました。
伊藤
おふたりとも「いずれは独立しよう」と
思われていたんですか。
裕亮
いえ、どちらも思っていなかったんです。
Shinzoneは僕にとっては家業でもあるので、
続けていこうという気持ちがありました。
けれども一緒に入社した仲間が成長したり、
業務も安定して回るようになってきたりと、
会社が大きくなってきたタイミングだったというのが
大きなきっかけになったかなと思います。
「今なら2人で独立して、
新しいことをはじめられるんじゃないか」と。
めぐみ
そうですね。
突然タイミングが来たという感じでした。
伊藤
なるほど。
転機が訪れたんですね。
伊藤
ブランドを立ち上げて、
一番最初に作られたものは何でしたか。
裕亮
秋冬のコートです。
でも、「やりたいことをやろう!」
という気持ちが強く出すぎてしまって‥‥。
めぐみ
最初だからと、気負いすぎてしまいました。
伊藤
あら。
それがよくなかったんですか。
裕亮
素材や作り方も妥協をしないで作ったんですが、
そのぶん価格が高くなってしまって、
ある人に、
「趣味でやってるのかと思った」
と辛辣に言われたんです。
そういうふうに見えているのか‥‥、
とショックでしたね。
伊藤
そんなことがあったんですね。
実際、そのコートの売れ行きはどうでしたか。
裕亮
ものすごく厳しかったです。
Shinzoneで働いていたときにいろいろな経験をして、
わかっていたはずなのにやってしまった、
という感じでした。
そこから軌道修正です。
伊藤
どんなふうにしていかれたんでしょう?
裕亮
まず、やりたいことをやり続けるためには
当然お客さまから求められないといけないので、
「欲しいと思ってもらえて、
なおかつ自分たちも納得できるものを作る」
というのが課題でした。
伊藤
それは、すぐにできたんですか。
それとも、簡単なことじゃなかった?
めぐみ
簡単ではありませんでした。
それができるようになったのは、
立ち上げてから3年目くらいでしょうか。
裕亮
2018年に立ち上げて、2020年頃には、
「このままだと続けられないな」
とまで思うようになったほどです。
コロナ禍がはじまり、世の中の状況がどんどん厳しく、
暗いムードになっていく中で、
自分たちにできることは何か、2人で考えました。
それで、
「どうせ作るなら思いっきり明るいものにしよう」と、
2021年の春に作ったのがこちらです。
伊藤
わぁ、かわいい! 
裕亮
この時に初めて、
今回扱っていただくCOTTON KNIT TEEや、
ブランドの核となるアイテムが生まれました。
伊藤
作るものとお客さまが求めるものが
近づいてきたということですね。
めぐみ
そうかもしれません。
今も作りたいものを作らせていただいてはいるんですけど、
ブランドを立ち上げた当初の、
気負いすぎた「鋭さ」のある服から比べると、
自分たちの作りたいものも
少しずつ変化してきたように思います。
子どもが生まれてわかることがあったり、
コロナ禍に
「着るなら明るい色がいいな」
と思ったこともそうですね。
伊藤
ああ、それはすごくありますよね。
めぐみ
そんなことがきっかけでつくるものも変化していって、
MEYAMEが今の感じになったのが、
この2021年のコレクションでした。
裕亮
これができたときに
「あ、やっていけるかな」
と思えたのを、鮮明に覚えています。
伊藤
へー! 
展示会にいらした方の反応も変わりましたか。
裕亮
そうですね。
見ていただいたときの反応も違いましたし、
実際にオーダーの数も増えました。
伊藤
手応えを感じられたんですね。
価格も、最初のときと変えられたんでしょうか。
裕亮
はい。
お求めやすくしようと、
思い切って舵を切りました。
「もっと知ってもらいたい」
「たくさんの方に着ていただきたい」
という率直な思いがありましたし、
それならまず、価格のハードルを下げようと。
伊藤
初めて購入するブランドって
着心地がわからないから、
買う人にとってはどうしても、
価格が判断基準の一つになってしまいますものね。
でも、作りたいものと価格のバランスを取るのは、
難しくなかったですか。
裕亮
簡単ではないですけど、
納得いかないものを作ったことは一度もないと
自負しています。
素材をどう扱うかというような点で、
自分たちの腕も上がってきたなという実感もあります。
伊藤
すごい! 
ピンチになってから、
すごくたくさんのことを得られたんですね。
(つづきます)
2025-04-21-MON