REPORT

キューブスツール、
あのひとの使いかた
2・谷 卓さん

福岡の木工家具メーカーである「杉工場」と
「weeksdays」が、
あたらしい家具をつくりました。
それは、ましかくで、
立方体の一面だけをすぽんと抜いたような、
ふしぎなかたちをした木製家具。
なまえを「キューブスツール」といいます。
スツールですから椅子の仲間、なのですけれど、
この家具、使うひとによって、使い方は自由。

伊藤さんが「あのひとに使ってみてほしい!」
というかたのところへ出かけ、
どんなふうに使ってみたいかを取材したようすを
レポートするシリーズ、
今回は、インテリアショップ「オルネ ド フォイユ」を
運営する、谷卓さんのお宅です!

(取材・文=伊藤まさこ)

谷 卓さんのプロフィール

たに・あきら
インテリアショップ オルネ ド フォイユ店主。
着物のメーカー、雑貨店勤務後、1994年に渡仏。
パリの蚤の市でショップを開業、
2004年に東京で「オルネ ド フォイユ」をオープン。
主に商品セレクトを担当し、
フランスをはじめ、国内外で見つけた
「好きなもの」を提供している。
趣味は写真撮影(とくに猫)、
仕事とからめての海外旅行。
ガジェット好きで、最近は動画関連の
アイテムばかり買っているそう。
そして家づくり(最近サボリ気味とのこと)。
デザイナーのキムコさん
愛猫のチャイと暮らしている。

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●オルネ ド フォイユのwebsite


建築家に頼らず、
ご自分たちで「こんな感じ」と模型を作り、
間取りを考え、タイルを張ったり壁を塗ったり。
時間を見つけてはコツコツと
家づくりをしてきた谷さんご夫妻。

家を建てて2年。
去年の7月、
miiTaaiiのエプロンの取材にうかがった時から、
暮らしはどんな風に変わったのかな。
改装は進んだのかしら? 

「ここ最近、海外出張が多くなってきたんです。
だから、なかなか家のことに時間をかけられなくて‥‥」
と谷さん。
聞けば、パリ、モロッコ、ベトナム、バリ島と
世界のあちこちを飛び回っている! 
私のまわりにはパワフルな人が多いけれど、
谷さんもまたそんな一人なのです。

家に時間をかけられない‥‥と言うけれど、
ここは相変わらず、気持ちのいい空間。
ソファにかかった布や、
棚に置いた器やかごが、前に来た時と少しずつ変わってる。
小さな模様替えが部屋の空気を動かしているのかな、
なんだか清々しいのです。

今日はキューブスツールの取材。
谷さんの家だったら、
どんな風に使われるのだろう? と
楽しみにやってきました。

「何々テイスト」とひと言ではくくれない、
谷家のインテリア。
ダイニングチェアこそウェグナーの
Yチェアで揃えているけれど、
それ以外は、一見どこの国か分からないもの。
古いものもあれば、
あれ? これってなんだか見たことある‥‥
というものもあり。
「ヴィンテージの家具にも目がないけれど、
IKEAや無印のものも好きなんです」。
なんとIKEAに無印!? 
お金をたくさんかければいいというものでもない。
要はアイデアとセンス、なのですねぇ。

「でも、このキューブスツールのような、
きちんとした家具は、
うちでは珍しいかも」

と谷さん。たしかに!

キッチン横の小さなスペースに置かれたベンチの上に、
キューブスツールを置いてお茶の道具をセッティング。
床に直置きではなくて、
ベンチの上に置くんだ! とびっくりしていると‥‥

また違う台を使ってダイニングの壁に
グリーンをスタイリング。
白い壁と家具の木とグリーン、
それからカラフルなタペストリー。
いろんな質感がそれぞれを引き立て合っていい感じ。
なんだか家具も生き生きして見えます。

リビングの床に置いて、
中にはクルクルと巻いた布や小さなラグを。

最初は器、次はグリーン。
そしてここには布。
中に入れるものが変わると、
キューブスツールの印象もずいぶん変わるものです。

家族の一員、チャイもお気に入り? 
そうか、キューブスツールでひと休みするのは、
人だけじゃないんだ!
(人が座る時は、開いた部分を下にしてくださいね。)

横にはおもちゃを置いて、
チャイのための特等席。

このキューブスツール、
座ることを前提に考えられているため、
しっかり作られている。
だから、ちょっと重いんです。

「突板ではなく、ちゃんとした無垢材を使っている。
そう言った意味では一生ものですよね。
使ううちに味わいも増していくはず」

とプロならではのご意見。

「軽いと壊れやすいし、傷がつきやすかったりしますしね」

そう、重みは「ちゃんとしている」という証拠なのです。

こちらはお仕事場。
机の下にキューブスツールを置いて、
仕事道具が入った箱を中に入れました。
なんとこのテーブル、谷さんのお手製なんですって!

机と椅子とキューブスツールの色合いがぴったり。
窓の外に広がる緑の気持ちいいことったら。
こんなところで仕事ができたら、
さぞかしはかどるだろうなぁ‥‥

今回、
キューブスツールを「棚」として使うアイデアを
5通り見せてくださった谷さんとキムコさん。

スタイリングのコツは? と尋ねると、
「パーっと置いてしまうのであんまり考えていないんです」
と言いながらも、
ものが一番よく見える位置や角度を瞬時に探って、
空間作りをしていたのを、
私は見逃しませんでした!

仕事で、また家でも。
長い間、ものと向かい合ってきた「経験」が、
ものを言うのですねぇ。
勉強になりました。

2023-05-02-TUE