COLUMN

上質なねむりとキレイなお肌

大塚篤司

心地よい眠りを考える
今週の「weeksdays」。
5人のみなさんに「眠り」をテーマに
エッセイを書いていただきました。
3人目は、医学博士の大塚篤司先生。
でもご本人いわく「全く医学的じゃない」んです。

おおつか・あつし

医師・医学博士。
近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。
1976年生まれ。千葉県出身。
2003年信州大学医学部卒業。
2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て
2017年より京都大学医学部特定准教授。
2021年4月より現職。皮膚科専門医。
がん治療認定医。アレルギー専門医。
がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、
AERA dot.・京都新聞「現代のことば」連載をはじめ、
コラムニストとしても活躍。
医師・患者間の橋渡し活動を行っている。
著書に『最新医学で一番正しい
アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)

『教えて!マジカルドクター
病気のこと、お医者さんのこと』(丸善出版)

『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版)
がある。

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ほか。

不規則な生活が続くと肌荒れがおきます。
医療従事者に多いのですが、
夜勤が続いた看護師さんはニキビで困ってますし、
ぼくは当直後に吹き出物ができやすい。
皮膚科医なのに、口の周りにでっかいニキビを作って
患者さんを診察するのは、説得力がありませんね。
いまはマスクで隠せますが。

ねむりって肌の調子にとても影響します。
反対に、肌の調子が悪いとねむりに影響します。
かゆくてあまり寝れなかったというのは、
アトピー患者さんからよく聞かれる声です。
肌にとっても大事なのが”ねむり”なんです。

じゃあ、皮膚科医が考える上質なねむりってなんだろう、
というのが今日の主題です。
でも、全く医学的じゃないのであしからず。

私たちがねむりと表現する時、
寝付きと、途中に起きちゃうかどうかの
中途覚醒を指します。
患者さんから、「よく眠れません」と言われたら、
「寝付きが悪いですか?」か
「夜中に起きちゃいますか?」を聞いて、
それに合わせたお薬を出します。
でも、ねむりにはこの2つ以外に
もう一つステップがあります。
それが寝起きです。
寝起きが良いだけでその日は良い一日と思えたり、
寝起きが悪いと活動のエンジンがかかるまで
時間を要します。
とても大事な寝起きなのに、
寝起きをコントロールする薬はまだないのです。
なので、
「寝起きを良くするお薬をください」と言われても、
「そんなものはありません」と答えるしかありません。

そこで本題に戻るわけですが、上質なねむりとはなにか? 
ぼくは“幸せな寝起き”にあると考えます。
いまだ医学では扱うことが出来ない
“幸せな寝起き”ができたら、
それは上質なねむりではないかと。
では、どんな寝起きは幸せな寝起きなんでしょう? 
怖い夢を見なかったとか、
目覚まし時計をかけずにゆっくり寝れたとか、
いろいろと思い浮かぶと思いますが、
ぼくが経験した中で一番だった幸せな寝起きは、
車の中です。まだ幼稚園くらいの頃、
家族でお出かけした帰り道、
車のなかで寝てしまうことがしばしばありました。
家についてもまだ眠いぼくは、
親に起こされても寝たふりを続けます。
そうすると親は諦めて、
家に布団を敷いてから、ぼくを空輸します。
ふわっと体が浮いて、外気に触れて、
父親のぬくもりを感じながらお布団に着地する。
もう一度お布団で寝ることもありましたが、
大抵は目が覚めてましたから
ごそごそっと起き上がるわけです。
これが幸せな寝起きだったなぁと思います。
さすがに大人になってからは
抱っこで目覚めることはなくなります。
でも、目が覚めたら好きな人が隣で寝てる、
なんて場面は幸せですよね。
恋人でも家族でも。
一人で寝てたって、
目覚めたときに大好きな人が思い浮かべば
幸せな気分になります。

巷でよく耳にする
「綺麗になったね。好きな人でもできた?」
なんていう言葉は、幸せな寝起きが続いて、
肌もすっかり綺麗になった影響もあるかもしれませんね。
うん、ありそうだ。
今年はこれを研究してイグノーベル賞を目指しますか。

2023-02-13-MON