REPORT

デザイナー・惠谷太香子さんにきく
「私が、シルクの下着を
すすめたい理由」

以前「cohan」の下着でご一緒した
デザイナーの惠谷太香子さん。
じつは、惠谷さんはもうひとつ、
シルク100%の下着のブランドを持っています。
それが今回ご紹介する「ma.to.wa」。
やわらかくて、よく伸びて、家庭でも洗え、
すぐに乾き、うーんと軽い。
ストレスフリーで着ることができるこの下着、
「weeksdays」では4つのアイテム、
2つのサイズ、3つの色を準備中。
惠谷さんに、シルクのこと、このとくべつな技術のこと、
たくさんお聞きしました。3回シリーズでお届けします。

その1 シルクは、第二の肌。

ma.to.wa(マトワ)の名前は、
衣類を「まとう」という言葉からつけました。
シルクはセカンドスキン、第二の肌、
そんなふうにも呼ばれていて、
シルク100%の布を肌にまとわせることは、
とても気持ちのいいことなんです。

以前「weeksdays」で取り上げていただいた
cohan(コハン)というブランドは、
湖のそば、湖畔という言葉からついた名前で、
“リラックスをするもの”ということで、
コットンやウールなど、いろいろな素材を使います。
そちらは、ブランドが先にあり、
私があとからデザイナーとして入りました。
けれどもma.to.waは、
ずっとシルク100%の下着を作りたかった私が、
この素材と出会い、立ち上げから関わっているものです。

「どうしてそんなにシルクが好きなんですか」
と、聞かれることがあります。
なぜ私がシルクをみんなに着て欲しいと思っているか。
それは私のライフワークとして、
体にいいものを作っていきたいということがあります。
いろいろな素材の中で、シルクがいちばん人の肌になじむ。
シルクは、肌と同じ成分であるアミノ酸なので、
理論上、肌にやさしいわけなんですけれど、
みなさんのイメージの「シルク」というのは、
つるつるしていて、ピカピカしていて、
ちょっとひんやりと肌をすべって‥‥
というものだと思います。
これは、じつは、肌にあたる糸の表面の部分は、
シルクとは言えないんですよ。

もともと、蚕が吐き出す糸はとても繊細なので、
それを織物にするためには、
強度を増すために、糸にコーティングをします。
だから糸自体はシルクなんですけれど、
合成物を使って、表面に糸を硬くする加工をし、
織りやすいようにするんです。
皆さんが思われているシルクのサテンとか、
よく出ているシルクの下着は、
洗った後にパリッとするというか、シワになる。
それは糸の周りにコーティングをしているからです。

ma.to.waに関しては、その硬いコーティングをしないで、
糸をそのままニットにしています。
ma.to.waのふわっとした柔らかさは、
それゆえに出ているんです。

逆に言うと、テカテカ・ゴワゴワのほうが、
作り手としては、製品化しやすい。
だからma.to.waに関しては、
作り手がすごく苦労するんです。
それでも、実際に着る方の気持ちになったら、
こっちのほうがいい、と、
自分もユーザーのひとりとして、心の底から思うんです。
ほかの下着とは、つくるときの発想が違うんですね。

何故シルクが好きかと言うと、
やっぱり肌に馴染んで気持ちがよくて、
夏は涼しくて冬は暖かいという、
肌と同じように調節をしてくれる素材だから。
ma.to.waの下着は「白いシャツをめぐる旅。」でも
取り上げていただいていますが、
夏に着てもベトベトしないし、
冬に汗冷えしても寒くない。
旅行に持っていき手洗いをしてもすぐ乾く、
そんな評判をいただいていています。
「汗の匂いもしなくなりました」と
おっしゃるかたも多く、
消臭機能をつけているわけではないのですが、
こういうところは、さすがに自然素材ですよね。
匂いがこもりません。
結構長く着ても、乾きがいいので生乾き臭も少ないです。

シルクを編んだり織ったりしたときに、
ボロボロ落ちていくローシルクから
化粧水や乳液をつくる技術があって、
基礎化粧品の分野では注目をされていますよね。
化粧水は、滲み込みは早いんですけれども、
塗っちゃうと落ちちゃうので、
下着であれば、いつも化粧品を着ている、みたいな、
そんな感じですよね。
じっさい、シルク工場の女の子たちの、
蚕を茹でてお湯から糸を引き揚げる作業をしてる手は、
ものすごく綺麗なんですよ。
そういえば、私が小さいとき、
祖母がもうボロボロになったシルクのお腰を
切り刻んでちっちゃい袋を作って、
その中に米ぬかを入れて顔を洗っていました。
しかも、その後、何もつけないでいても、
とても肌がきれいでした。
亡くなるまでツルツルでピカピカだったんです。
私もじっさい、シルクを身に付けてから、
ストレスでできる吹き出物が
ずいぶん減ったように思います。
私みたいにふだんノーメイクで、
一切何もつけない、という人にも、すごくお勧めです。

ma.to.waの下着は、
シルクってつるつるしてひんやりするでしょう?
‥‥と思っているかたにこそ、
ぜひ、試してほしいと思うんです。

(つづきます)

2018-12-17-MON