今回、「weeksdays」が
「大人の女性のためのTシャツ」づくりを依頼したのは、
素材と着心地を重視し、着る人が幸せになるような
大人の服づくりを目指すブランド、
STAMP AND DIARY(スタンプアンドダイアリー)。
とある「いい生地」との出会いから、
オリジナルのTシャツをつくりましょう、と話が進み、
9か月をかけて完成したのです。
主宰の吉川修一さんにお話をききました。

吉川修一さんのプロフィール

吉川修一 よしかわ・しゅういち

株式会社STAMPS代表。
1965年東京生まれ。茨城育ち。
大学卒業後、数社のアパレル企業で営業、
マーケティングと店舗開発に携わる。
国内外のファッションとものづくりに触れた経験から
2013年にSTAMPSを設立。
「STAMP AND DIARY(スタンプアンドダイアリー)」や
「utilité(ユティリテ)」などの
オリジナルブランドの制作のディレクションから
フランスのバッグ「TAMPICO(タンピコ)」や
英国の「BEAUMONT ORGANIC
(ボーモントオーガニック)」、
「Wallace#Sewell(ウォレス アンド スウェル)」など
インポートブランドのセレクトまで手掛ける。
最近ではアパレルにかぎらず、
日々を豊かにする「もの」全般を取り扱っている。

●STAMPS オフィシャルウェブサイト

その1
「顔が違う」素材との出会い。

伊藤
昨年の7月でしたか、
STAMP AND DIARYの展示会にうかがったとき、
吉川さんからこのTシャツのもととなった
素材をご紹介いただいて、
そこから企画がスタートしましたね。
吉川
そうですね、「すごくいい生地なんですよ」って。
じつはこの生地、ぼくらにとっても新しいもので、
とあるかたの紹介で知ったばかりだったんです。
見るからに上質で、
「何かが違う」っていうオーラをこの素材に感じました。
細い糸が作れるようなコットンの長繊維で、
あえてちょっと太い糸を作り、
それを天竺にしているんです。
だから、ベーシックなTシャツの素材と近いけれど、
「顔が違う」というのかな。
伊藤
「顔が違う」。
吉川
しかも、ゆっくり編んでいるので、
1日に50メーターとか70メーターぐらいしか編めない。
それをその工場でひたすら生産を続けているんですね。
というのも、この生地じゃないと、というブランドに
確実にいつでも供給できるよう、
工場を回して、多めに生産をしているんだそうです。
世の中にそんなに出回ってるものではないけれど、
それゆえに、品質感、希少性の高さにたいして
価格は控えめになっていて、
それだったらSTAMP AND DIARYでも扱えるぞ、と。
伊藤
いい出会いがあったんですね。
吉川
はい。今回、この生地がさらにいいなと思ったのは、
筒状に編まれた状態で染色しているところです。
通常は筒状の輪のままで染めず、
切り開いて一枚の布の状態にし、
引っ張りながら染めるのですが
そうするとつるっと薄い表情に仕上がるんですよ。
そこには裁断のしやすさなど、
効率的な利点もあるんですけれど、
生地としてのふくらみがなくなっちゃう。
でもこれは輪っかのまんまですから、
目のやわらかさが残る手法で染められるんです。
それは製品としての品質の高さにつながります。
伊藤
うれしいことばかり。
しかも、手に入れやすい価格設定ですね。
吉川
その生地を使っているハイブランドの価格を考えたら
もっと高めの販売価格を設定すべきだ、
という社内の意見もあったんですが、
あるライバルというか、
嫉妬するぐらいいいTシャツを
作っているブランドが多数あり、
そこは僕が目指した値段に近いところでやっている。
そこでちょっと「男」が出たというか、
うちだってできる! っていうところを
見せたくなっちゃったんですよ。
伊藤
(笑)
吉川
スタッフに反対されながら、
STAMP AND DIARYというブランドは
このくらいの価格帯で行きたいんだよ、と。
伊藤
吉川さんががんばってくださったおかげで、
「weeksdays」の価格も抑えることができました。
ありがとうございます。
最初にわたしが展示会で拝見したのは、
その生地を使ったSTAMP AND DIARYの製品でしたが、
吉川さん、「いっそ、weeksdaysの
オリジナルをつくりましょう!」って。
吉川
「この素材で何かつくりたいですね」と。
たっぷり仕入れることにしていたから(笑)。
──
伊藤さんはその夏、
年齢とともにTシャツが似合わなくなる、
という問題を考えていましたね。
二の腕を出すことにも躊躇する人が増える、って。
「いいじゃない、そんなの!」と大胆に着たいという
気持ちもないわけじゃないけれど、
「そうは言ってもね」という現実もあって、
じゃあ、自分たちに似合うTシャツを
つくればいいのかもしれない、と。
吉川
そのとおりだと思います。
ジェーン・バーキンさんとか、
お年を召してもTシャツ1枚、みたいな、
ああいう格好良さって不可能ではない、
そんな気がするんですよ。
ジェーン・バーキンさんはその最高の場所にいますが、
もうちょっと多くの人の着られるものが
あってもいいのかなって。
伊藤
ええ、わかります。
吉川
ジェーン・バーキンさんとて、
やっぱり肉厚の生地のものを着てらっしゃいますよね。
薄い生地でも、もちろん、ゆるーく、
Vネックとかで着るケースもあるんですけど、
デニムに合わせるときは、
ちょっと番手の太い生地のTシャツ、
例えば昔のアメリカTシャツの、
糸が太くて透けないタイプを着ている、
そういう格好良さの印象があるんです。
この素材を見た時、
ちょっとだけそのイメージがよぎりました。
そういえば、このお話が始まった当時、伊藤さんが、
ハイブランドの3枚セットのTシャツで、
ちょっとびっくりする価格帯のものがあって、
それがすごくいいと教えてくださいましたね。
伊藤
イタリアのブランドでしたね。
Tシャツなのにこれ? という高めの価格のものですが、
着ているとその人がよりよく見えるんですよね。
──
Tシャツって、そんなに可能性があるものなんですね。
素材やパターンの工夫で、
若い人だけのものじゃない、
そんなものづくりがまだまだできるし、
やっているハイブランドもある。
吉川
そう思います、僕も。
伊藤
そのTシャツを着ていたのは年長の友人の男性なんですが、
「そっか、ちゃんとした素材を選べば、
それなりの年齢の男性でも、
きれいにTシャツが着こなせるんだ!」って。
──
たとえば若い人のTシャツって首がゆるめですよね。
それを中高年男性が着ると、
ちょっとだらしなく見えるんです。
吉川
ハハハ! 気をつけなくちゃ。
それこそ肉厚の生地で
首まわりがキュッとしたほうがいいと思います。
中高年の男性は。
(つづきます)
2022-04-17-SUN