REPORT

かごのつきあいかた

伊藤まさこさんスタイリングの撮影で、
かなりの頻度で登場する「かご」。
「かご収集30年」とおっしゃるほど
たくさん持っているというのだけれど、
ご自宅兼アトリエは、いつもスッキリしています。
その「かご」はいったいどこに収納されているの?
ふだん、どんなふうにお使いなんだろう?
伊藤さんに、プライベートでのかごの使い方、
収納のことなどを、教えていただきました。

野沢温泉のあけびのかごがそうであったように、
どのかごにも、
作られた土地ならではの気候や風土、
人々の暮らしが背景にあります。

最初は「かわいい」という、
ただそれだけの理由で買っていたかごですが、
ルーツを探ってみると、
それぞれとても興味深く、
知れば知るほどまた好きになる。
それの繰り返しで、
いつのまにやら家にはたくさんのかごが集まりました。

作られた国はばらばら。土地もいろいろ。
値段も数百円から、ちょっといいブランドの小さなバッグが買えるくらいのものまで。
でもどれが一番大切ということはなく、
どれも大切。

たとえばダイニングに置いているこの竹のかごは、
岐阜の山の中をドライブしていた時に見つけた
「売っているものすべてが埃まみれ」というかんじの
古道具屋で手に入れたもの。
店主に何に使っていたのかたずねてみると、
「それは炭入れだねぇ」とのこと。
中に貼られた和紙がまっ黒だったのはそのせいなんだ。
家に帰って、ぬるま湯につけ、
中の和紙も、編み目につまっていたよごれも
すっかり取り払ってこざっぱりさせて。
まさか、囲炉裏の横に置かれていたこの炭入れが、
今ではMacの充電器が入っていようとは、
編んだ人も使っていた人も
想像もしていなかっただろうなぁ。

小さな栗のかごは友人のバスク土産。
こまごましたものを入れて、
掃除道具と一緒に台所の壁に。
最後の編み手と言われる、
このかごを編んだおじいちゃんだって
日本や北欧の箒やほこり取りと一緒に置かれているなんて、
想像もしていないだろうなぁ。

偶然が重なってひとつの家に集まってきたかご。
たくさんあってもうるさい存在にならないのは、
「好き」という私の基準以外に、
自然の素材を使ったくらしの道具だから、
というのもあるのかも。
だってどのかごも、
ちっとも出しゃばらず、気取らず。
どこかひかえめな顔をしていませんか?

さて、かさばるかごの収納ですが、
私の場合は「置けるところならどこでも」
というかんじです。
たとえば冷蔵庫やワインセラーの上。
たとえばクローゼットの空いた部分。
食器棚の中にも、バスルームの扉の奥にも。
ワインセラーの右下の竹かごの中には、
ひとまわり小さな竹かごが。
入れ子にできるものは、
なるべくして全体のかさを減らしています。

それから、よく聞かれるのは手入れの方法。

古道具屋や蚤の市などで買ったものは、
じゃぶじゃぶ洗ってしまうこともありますが、
それはかなりの荒治療。
ふだん少し汚れが気になるくらいだったら、
固めに絞った布で拭いてみてください。
それからよく乾かすこと。
からりと晴れた日は、
こんな風に風通しのよいところに置いて。

ある職人さんはこんなことを言っていました。
「長持ちさせたかったらとにかくよく使うことだね」って。
大切だからとしまいこまず、とにかく使う。
なるほどなぁと思った、説得力のある言葉でした。

高校生の時に出会った柳のかご。
そこからはじまった私のかご収集ももう30年。
これからもっと増えるのか、
それとも少しずつ淘汰されていくのか?
これからの自分の変化が楽しみでもあります。

2018-11-07-WED