REPORT

かごをさがして信州へ。
後編 アメ色に変わるかご。

今回抽選販売をする「あけびのかご」。
その買い付けのこと、製作のようすを、
たっぷりの写真とともにおとどけします。
(写真=沖田悟)

あけびのかごに使われる蔓は、
奥信濃の標高500~800メートルの山地で
自生する落葉性つる植物から採ります。
その弾力性のつよさ、丈夫さから、
江戸時代に「背負い篭」などの生活必需品として、
また「花篭」「鳩車」などの工芸品に使われました。
大正時代にはあけびの篭のトランクやバスケットが
旅行用品として人気にもなったそうです。

蔓を取るのは、毎年10~11月。
春から秋にかけて生長した蔓を採集し、
手入れをしてから家の中に吊るして保存します。

「製白蔓」をつくるためには、
温泉に浸けて表皮をやわらかくし、剥ぐ必要があります。
野沢温泉には、「麻釜」(おがま)と呼ばれる
源泉湧出地があります。

▲「麻釜」までは、坂道をのぼっていきます。
今回お世話になった「三久(さんきゅう)工芸」の
久保田敏昭さんが案内してくださいました。

▲着きました。「麻釜」は国の天然記念物。
地元の人以外は、使うことができないそうですよ。

「麻釜」は、あけびの蔓などの
工芸専用というわけではなく、
湯温の高い「大釜」や「茹釜」(90度)では
山菜、野菜、卵などを茹でるのに使われています。
あけびの蔓を浸すのは、70度ほどの「丸釜」。
根曲竹やあけびの蔓などの工芸品の材料のほかに、
むかしは蚕具の消毒にも使われたとか。
それより少し高温の「竹伸釜」や「下釜」もあり、
この5つの「湯だまり」を総称して「麻釜」と呼びます。

▲敏昭さん、「こんなふうにやるんですよ」と、丸釜へ。

▲よいしょっ。

▲40分ほど浸すそうです。

さて「三久工芸」さんのあけびのかご。
使う蔓に均質ではない個性がありますし、
型を使わずに編むため、
ひとつひとつに異なる味わいがあります。

皮をむいた「製白蔓」のいいところは、
軽さとなめらかさ、だけではなく、
虫がつきにくいことと、
使っていくうちに出てくる艶にあります。
使い込むと、こんなふうに色が変わっていくんですって。

▲左が、できたばかりのかご。右は、三久工芸のおくさまのもので、
10年ほど経ったもの。「これは毎日使っていたわけではないんです。
もし毎日使っていれば、5年くらいで、
こんな色になるんじゃないかしら」

「ああ、二十代のうちに買っておきたかった。
そうすれば、いまごろ、
うんと艶のあるかごが、たのしめたのになあ」
‥‥と、伊藤さんの買い付けに同行した
「ほぼ日」乗組員(50代女性)の声でした。

ところで、この「あけびのかご」、
手入れはどんなふうにしたらよいのでしょう?
まず、基本的には「ブラッシング」。
汚れても水洗いはせずに、乾いたたわしなどでこする。
そうすることで使い込むほどにきれいな艶が出てきます。
そのためには、できるだけまいにち使うのがおすすめ。
使わないときは風通しのよい場所に置いてくださいね。

そんなふうにしてつくられた「あけびのかご」。
入荷数がとても限られていますので、
抽選販売とさせていただきます。
どうぞ、ご検討くださいね。

2018-11-06-TUE