REPORT

「暦帖」ができるまで。

まさに暦帖を製本するというその日、
伊藤まさこさんと「weeksdays」チームは
長野県伊那市にある、美篶堂の工場を訪ねました。

迎えてくださったのは、美篶堂の社長である
上島(かみじま)明子さん、
そして専務の上島真一さん。
工場では、スタッフのみなさんが(女性が多い!)
きびきび、てきぱきと「暦帖」を製作中。
できあがるまでを、順番に教えていただきました。


▲こちらが美篶堂の工場。田園のなかに建っています。


▲上島明子さんと、上島真一さん。ふたりはいとこ同士です。明子さんのお父さんが、美篶堂の創設者であり会長の松男さんですが、この日はご不在でした。松男さんは「親方」と呼ばれているそうです。


▲「親方、言っていました。この暦帖を見て、『こういうものが、つくりたかったんだよ』って」と、明子さん。わぁ、うれしいです!


▲印刷したものが折った状態で積まれています。


▲1折ずつ順番に重ねて、丁合いをとります。「手丁合い」といいます。大きな工場ではこれもオートメーションですが、美篶堂は手作業です。


▲重ねた折の束を、計量します。1折は15g。間違えていると目方が変わるので、そのチェックです。


▲重ねて順番を確認します。通常の製本だと「背丁」といい、折った部分に印刷されるのですが、手施工の場合はそこに入れられないので、「地」の部分に入っています。


▲折りの束をかためるのに使う糊。製本用のボンドをそのまま使うので、「生(き)ボンド」と呼んでいます。見た目は木工ボンドのようですが、性質がまったく異なり、粘度が高く、柔軟性があるので、なんども開け閉めしても、割れにくいんですって。


▲たっぷり塗ります。でもこれはまだ「仮がため」。


▲表紙と裏表紙の裏側にあたる「見返し」をつけます。このまま半日置いて、絵本製本特有の、「小口の糊入れ」をします。その次が「本がため」です。


▲半日ほどおいたもの。ここから「小口の糊入れ」です。印刷がされていない面どうしをくっつけるために、小口の端にすっと、細く、糊入れします。これもかなり高度な技術! ちなみに一般的な絵本では、全面に糊をつけて機械で圧力をかけて完全に貼り付けますが、暦帖は、小口だけ。そうすることで、軟らかいまま仕立てることができるんです。


▲次に「三方紗化粧裁ち」といい、天・地・小口の三方をきれいにカットします。これは機械を使います。機械の名前は「断裁機」と言うそうです。


▲この「三方紗化粧裁ち」で2ミリカットしますから、糊は、それよりもやや広めに塗っているわけです。


▲ここから「本がため」です。壊れないように、さらに寒冷紗を貼ったり、しおりや花布(はなぎれ)をつけたりする作業が始まります。


▲天にあたる部分にしおりをつけます。


▲背に寒冷紗を貼ります。束を丈夫にする作業です。
しっかり張り付くように、タワシでさっとこすって密着させます。


▲天地に花布をつけます。


▲強度を増すために薄い「背紙」を貼ります。手製本の作業って、紙が手のあぶらを持っていくので、冬は指先がカサカサになってしまうんですって。


▲表紙をつけます。開いたときに隙間が出て、背が浮くように、左右の溝に糊付けします。ここでは生ボンドではなく、水を混ぜた和糊(わのり)を使います。


▲機械で圧力をかけて圧着させます。


▲1ページ目と表紙をつけるため、こんどは見返し全体に糊入れ。うすーく、うすーく、のばしていきます。


▲最後に全体をプレス。このあと、1日ほど乾かせば、暦帖のできあがりです。

2019-11-05-TUE