「weeksdays」初登場の、革小物のi ro se(イロセ)。
かねてから「かわいくて、ちいさくて、使いやすい財布」を
探していた伊藤まさこさんが、
いま、とても気になっているブランドです。
「weeksdays」で扱わせていただくミニウォレットは、
一枚の革を縫製せずに折り込んで組み立てた2つ折りで、
「いったい、どうなっているの?」というふしぎなつくり。
これをつくっているのは、ふたりの兄弟を中心にした、
わずか6人のチームなんだそうです。
そんなi ro seのみなさんに、伊藤まさこさんが取材。
ものづくりのひみつを、たずねました。

i ro seのプロフィール

i ro se イロセ

2003年にスタートした革小物のブランド。
イロセは、日本語の古語で「兄弟」をあらわし、
「色」の語源でもあるといわれることば。
新しい発見、遊びを形にしながらも奇をてらわず、
使う人、場所を選ばない、
どこにでも溶け込むような
ニュートラルなデザインに落とし込んで
兄弟ふたりでプロダクトづくりを行なっている。

「幼少期に家の中にある廃材を使って
二人でおもちゃをつくっていました。
周りにあるものを使って、
何かをつくるのが日常的な遊びであり、楽しみでした。
今も、幼少期の遊びの続きをi ro seに置き換えて、
新しいおもちゃをつくりだす様な感性で
プロダクトを制作しています」

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02
「手」で考える

伊藤
はじめて革小物をつくったはいいけれど、
それを広めて販売につなげるためには、
また別のアイデアが要りますよね。
どんなことをなさっていたんですか。
i ro se
当時、同世代のブランドがいっぱいできた時期で、
友だちが展示会をするんですよ。
その一画を借りて出展していました。
一件だけ引き合いがあって、
「やった、食いつなげた!」って。
伊藤
なるほど。その次はどんなものを?
i ro se
紙袋っぽいバッグでした。
伊藤
i ro seのおふたりは、
ものづくりの発想がとても面白いと感じるんです。
トタンの形状を模したものとか、ありますよね。
いったいどういうところからそんな着想を?
i ro se
机上で考えることが多いですよ。
あとは材料を知って、使えるかな、って。
たとえば革屋さんに行くといろいろ革があるんですけど、
その中に皺くちゃの紙みたいな革があって、
これを使って何かできないかな、って。
それはすごく景気がいい時代に、
実験的につくったものだったらしいんですが、
すごく面白いなと思って、
その材料からイメージを膨らませたりしました。
それから、ペーパーナプキンと同じ発想で、
ものの構造から「なにか面白い形ができないかな」
って、いじりながらつくっていくこともあります。
あるいは「螺旋(らせん)ってかっこいいな」という
ワードから発想をしていくことも。
そして、材料をいじっていると、
好きな形と、道具としての用途が
ぴったり合致するときがあって、
そうやって製品が出来上がっていくことが多いですね。
ちなみに、二人とも、スケッチをしないんですよ。
デザイン画ではなく手でつくる。
伊藤
ということは、お互いに現物を見ながら
「あ、いいね!」あるいは「え、それ?」みたいな
やりとりをなさっていくんですか。
ひとりだけの視点じゃなくて。
i ro se
ええ、お互いの反応を見ながら。
伊藤
きっと、とても仲がよいんでしょうね。
素敵なことだと思います。
そうして22年続けてこられたって、すばらしいです。
おふたりがつくられるものは、
基本的に用途があると思うんですが、
オブジェ的なものは?
i ro se
最近たまにつくってます。
でもオブジェってなると、
まだちょっとピンときてないところがあって。
やっぱりひとつでも
用途があるとつくりやすいんでしょうね。
「お題がもらえる」というか‥‥。
オブジェだとちょっとふわふわし過ぎちゃって、
着地点がまだちょっとわかっていません。
伊藤
なるほど。逆にお客様から
「こんなのつくってほしい」というリクエストは。
i ro se
IDケースとか、よく言われるんですが、
自分たちが使っていないものって難しいです。
腑に落ちるまでに時間がかかる。
スマホケースもリクエストが多く、
つくっていたこともあるんですが、
毎年、スマホのサイズや厚みが変わったりして、
なるべく廃棄をしたくないと思うと
「i ro se」には向いていないのかなって。
伊藤
ブランドって、年に1、2回、
新作発表会をしますよね。
そのスケジュールに合わせて物づくりをしますが、
i ro seでは‥‥?
i ro se
最初の10年はがんばって
シーズンに合わせた新作を発表していました。
いまも半年に一度、展示会を開きますが、
必ず新作があるというわけじゃないんです。
最初は、つくりたかったら売らなければ
次の運転資金ができないぞ、
だから新作に挑戦するぞと思っていたんですが、
性格上、疲れてしまって。
そんななかで、ライフスタイルショップという
お店の形態が拡がっていく中で、
小物が売れ始めて、
無理せずとも運営できるかたちになっていきました。
2010年を過ぎていた頃だと思いますが、
お財布をつくりだしてから変わったように思います。
伊藤
それは「欲しいお財布がない」、
というとこから始まったんでしょうか。
i ro se
いや、そんな感じでもないんです。
なんだっけな‥‥、そうそう、形からでしたね。
たとえばこの「FOLD」っていうシリーズは、
円を重ねてなにかできないかなあと思って、
紙でいろいろ切って貼って試したんです。
そしたらバッグじゃなくて、
コイン、カード、お札を別々に入れられる、
理にかなったデザインと造形ができたんです。
これをつくりだしたら、他になかったからでしょうか、
売れていったという実感があります。
当時は皆さん、ブランドもののお財布を
使ってる方が多かった中で。
伊藤
性別も問わず、のデザインですものね。
ところで、今回「weeksdays」でご一緒する
ミニウォレット誕生のきっかけは
どんなことだったんでしょうか。
i ro se
この「SEAMLESS」(シームレス)というのは
一枚の革を縫製せずに
折り込んで組み立てるというつくりで、
長くシリーズ化しているものです。
キーホルダー、ブックカバー、メガネケース、バッグなど
いろんなアイテムを展開しています。
このシリーズがうまれたきっかけは、
バッグやお財布をつくる革の職人さんが
高齢化でだんだんいなくなっちゃって、
自分たちでもつくれるものを考えないと
この先ちょっと怖いなあ、と思ったことでした。
そしてこのシリーズは、
友人の結婚パーティで引き出物のカードケースを頼まれて
つくったのが最初でしたね。
伊藤
スマホの出現で、
わたしはお財布がどんどん小さくなったんですが、
カードや小銭はまだ必要。
以前は名刺ケースをミニウォレット代わりにして、
小銭をなるべく使わない生活をしてみたんですが、
駐車場のお金を払うときとか、
やっぱり、小銭って必要なんですよ。
それで、せっかく持つのなら「かわいいものにしたい」と。
これまで黒など無難な色を選びがちだったんですけど、
バッグの内側って黒とかネイビーが多くて、
黒くて小さなお財布は、一瞬、行方不明になるんです。
使う時に「ない?!」と慌てたりして‥‥。
だから今回、お願いできてよかったです。
i ro se
ありがとうございます。
これ、使い方もいろいろです。
お財布にされてる方はもちろん、
カードケースや名刺入れにしますという方もいます。
ぜひ、楽しんで使っていただけたらと思います。
伊藤
はい、ありがとうございました!
(おわります)
2025-08-19-TUE