本屋さんで大人気の本を手にしたことをきっかけに、
あちこちでずっと活躍しつづけている
平野レミさんに、ひさしぶりにお会いしました。
レミさんのつくる料理のように、
たっぷりまるごと栄養をもらえるようなインタビュー。
みなさんは、鏡の中の自分、笑ってますか？
お話をうかがったのは、ほぼ日の菅野です。

※このインタビューは、毎週水曜にほぼ日がお届けしているメールマガジン
「ほぼ日通信WEEKLY」の再編集版です。

＞平野レミさんのプロフィール

平野レミ プロフィール画像

平野レミ（ひらの　れみ）

料理愛好家。シャンソン歌手。
NHK「平野レミの早わざレシピ！」など、
テレビや雑誌などを通じて
数々のアイデア料理を発信。
レミパンやエプロンなどの
キッチングッズの開発も手掛ける。
『私のまんまで生きてきた。
ありのままの自分で気持ちよく
生きるための100の言葉』
『ド・レミの歌』（ポプラ社）など著書多数。
ほぼ日では、和田家のカレーを
紹介してくださったWADA CURRYの動画が人気。
夫は和田誠さん。
父はフランス文学者の平野威馬雄さん。
子は和田唱さん、和田率さん。

写真：鈴木拓也

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第６回 やっちゃったほうがいい。

──
ターニングポイントを迎えているという
最近のレミさんの、仕事の醍醐味はなんでしょうか。
平野
醍醐味というよりも、
もとからうれしくない仕事はやらないのよ。
全部うれしいからやってるの。
しかも、ちゃんと身の丈にあった仕事だから、
全部が醍醐味でたのしいし。
──
レミさんの身の丈が
すごく高いのでよくわからないです（笑）。
平野
我慢したり、無理したりしない、これだけよ。
でもみんなはお勤めもしてるし、
ぜんぶがそういうわけにはいかないでしょうね。
──
いえ‥‥、たとえ組織に属していても
「いやだと思うこと」が認められたらいいなぁと、
私はつねづね思っています。
とはいえこんな私でも我慢することが
実際はありますし、
そこにはいろんな事情が存在します。
前向きな我慢もあります。
でも最近、ちょっと
「しかたないと思いすぎている」んじゃないかな、
と気づいて。
平野
そうなの？
──
レミさんのことを、
私たちは遠い遠い世界の人と
思ってしまうかもしれない。
でも目の前にこうしていらっしゃるし、
自分も少し切り替えれば、
近づける気がほんとうにします。
鏡に笑いかけることを第一歩にしていけば、
学校に鼻緒の下駄で通う幸せな毎日を‥‥
平野
アッハハハ、そうかもしれないけど、どうだろう。
みんなほんとにそんなことしたい？

──
レミさんの本を夜な夜な開いていると
そんな気になってきて、
一歩近づける気がします。
勝手に自分の状況をせばめるように
思い込んでるだけなのかもしれない。
まるごとレミさんになれなくても、
少しだけでもエッセンスを受け取れば、
明るい兆しが見えて勇気が出ます。
平野
ああ、勇気、勇気か。なるほどね。
──
レミさんにとっての料理も、
最初はピアノの八木先生が
褒めてくださったことがきっかけだったんですよね。
余裕のある大人がそばにいて、
背中を押してくれて‥‥。
平野
八木正生（やぎまさお）さんね、
うん、うん、そうよ。
八木さんみたいな人が現れて
「ちょっとやってみたらどう？」って
言ってくれたときには、
みんなもやっちゃったほうがいいよ、
とりあえずダメもとでね。
──
そうですね、ダメもとで大丈夫。
平野
うん。あのとき八木さんが
私にすすめてくれたのは、
料理のリレーエッセイだったの。
私、文章なんか書けないと思ってたし、
断ろうとしたけど
「書いて。いいから、書いてごらん！」
って言ってくださった。
あれがないと、いまの私はたぶん
なかったんじゃないかしら。
──
「失敗を恐れずにやる」って、
むずかしいかもしれませんが。
平野
そうね。
自分を大事にするのはとってもいいことだけど、
ちょっと大事に思いすぎているのかもしれないよね。
ちぢこまっちゃ、もったいないから。
──
はい、もっといろんなことに
チャレンジしていきたいです。
レミさんがこれからやりたいことはなんでしょう？
平野
やりたいこと？ やりたいこと？
私、やりたいことある！
世界中、行きたい。
自分だけであちこち飛び回りたい。
もうね、ほんとに語学やってればよかったと思うの。
だっていろんな人としゃべってみたいもの。
顔が違って、いろんな考え方があって、
おもしろいだろうねぇ。
たくさん外国語を話せたら、
仕事なんてほっぽらかしちゃって、行くのになぁ。
──
レミさんは小さいときに、
自宅にいろんな人が訪れていたので。
平野
そうよ、そうよね。
うちのお父さんのところへ、
アメリカ人もフランス人もドイツ人も、
たくさん来てた。
お父さん、いろんな言葉ができたからね。
いろんな国の人たちが泊まって、
家でゆっくりすごしてて、よかったなぁ。
お父さんもさぞたのしかったろうと思う。
いろんな友だちがいて、いろんな話ができて。
私、お父さんみたいな人生、いいなぁと思ってる。
だから来世は絶対、勉強する！ もう絶対、やる。
あのときの高校の英語の先生みたいな人が
来世で出てきても、負けないで絶対に
宿題していかなくちゃ。
──
教科書を読み間違えたときに
注意した先生ですね。
幼い頃、おもしろい大人が
まわりで話していたという環境が、
レミさんの最初の巨大な栄養になっているんですね。
平野
ほんと、なってると思う。
金子光晴さんって知ってる？
詩人なんだけどね。
その人がうちのお父さんの出版記念会に
来たことがあったの。
だけど１日間違えちゃって、
出版記念会の会場じゃなくて家に来ちゃって（笑）、
お祝いのお金もうちのお父さんに直接渡しちゃって。
そのときふたりで
「おめでとう」
「ありがとう。今日じゃないけどね」
って言ってたの、ハハハ。
ほかの人たちもみんな、おもしろい話ばっかりよ。
大人になってからは、
和田さんがその役割をしてくれた。
和田さんのお友だちもおもしろい人ばっかり。
──
赤塚不二夫さんとか。
平野
横尾忠則さんとかね。
──
横尾さんともまた、
レミさんといっしょに会いたいです。
いやぁ、長い時間お話をうかがいました。
ありがとうございました。
今日、台満餃子作ります！

（おしまいです。ありがとうございました！）

2025-07-27-SUN

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  • レミさんの本、続々出ています。

    『私のまんまで生きてきた。』は、ページをめくるたびに
    レミさんの「名言」が次々と飛び込んでくる本。
    長年レミさんに注目してきた、
    今回のインタビュアーの菅野にとっても、
    あらたな発見がたくさんありました。
    寝る前に開くと、レミさんに元気をもらって眠れます。
    そしてけっこう、声を出して笑ってしまいます。

    また、新装復刊された、レミさんによる初エッセイ
    『ド・レミの歌』もおすすめです。
    黒柳徹子さんによるエッセイ
    「レミちゃんのこと」も巻末収録。