
おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。
シャープ
Xのフォロワー数80万超、シャープ公式アカウントの中の人として知られる。第50回佐治敬三賞をはじめ受賞多数、著書に『スマホ片手にしんどい夜に』。現在は「中の人」のままでシャープを離れ、各出版社のマンガの広告やPR企画も行なう。
- ──
- ターンテーブル奏者としてもならし、
こんど、ドイツのeconoreというレーベルから
ASUNAさんとデュオ収録した
カセットテープもリリース予定だという
シャープさんとテクノの間に、
VOWの「とれま」がいただなんて‥‥!
- シャープ
- そうなんですよ。
- ──
- なんか感動。
- シャープ
- あ、そうですか(笑)。
- ぼくは経済学部に通っていたんですけど、
大学生になって、ようやく
「芸術」というものが
おもしろいものだと思いはじめたんです。
で、赤瀬川原平さんを見て
「あれっ、同じことをやってる!」とか。
- ──
- ようするに、シャープさんの場合は、
「超芸術トマソン」より、
「街のヘンなモノVOW」のほうが
「先」だったんですね。 - それ、ぼくとまったく同じ青春です。
- シャープ
- ちょうどそれくらいのころに、
「へえ、これがサブカルというものか」
「自分の好きなものは、
この棚にならべて楽しめばいいんだな」
みたいなことも理解できてきた。
- ──
- 名付けによる整理・分類が進んだ、と。
- シャープ
- それに、ぼくがすごくいいなと思うのは、
VOWって、投稿してる人が
いたって「ふつうの人」じゃないですか。
- ──
- はい。
- シャープ
- その匿名性もカッコいいなと思ってます。
- つまり、VOWを知るまでの自分って、
「おもしろいことを
言ったりやったりしていいのは、
そうしていいって認められた人だけだ」
みたいな思いがあったんです。
- ──
- つまり、
テレビに出ているおもしろい人とか、
ラジオでしゃべってるおもしろい人とか、
エッセイを書いているおもしろい人とか。
- シャープ
- そう、そういう職業の人たちにしか、
おもしろいことを言ったり
やったりする権利はないと思ってた。 - でも、VOWをながめているときに、
「あ、ふつうの人、おもしろい」
という大事なことに気がついたんです。
- ──
- そういう意味でいうと、
名もなき若者が
おもしろい、カッコいいと思ったものを
街からひょいっと拾ってきて
Tシャツにしちゃう、
それが爆発的にヒットしちゃうみたいな、
黎明期の原宿ストリート的な気配も、
ちょっとあったんでしょうね、
かつてのVOWにも。 - それこそカッコいい、クールなニオイが。
何せ掲載誌が『宝島』だったわけなので。
- シャープ
- ええ、そうだと思います。
- ──
- 若き日のアンダーカバーの高橋盾さんと
エイプのNIGO®さんが連載していた、
その同じ雑誌に
われらがVOWも載っていたわけですし。
- シャープ
- ヒップホップのサンプリング文化とか、
渋谷系の引用のカッコよさとかと
さまざまに「地続き」だった
若者の文化の中の一角、
みたいな感じだったんじゃないですか。
VOWも。 - だから、ぼくはいまでも、
ふつうの人がおもしろいということを
証明し続ける場があってほしい、
ずっとそんなふうに思っているんです。
かつては、10年前のTwitterが、
そういう場所だったと思うんですけど。
- ──
- 10年前、の「Twitter」。
- シャープ
- あの場に集まってきた人たちが、
それぞれにおもしろいものを見つけて、
「おもしろいでしょ?」って
ツイートして
ワイワイ言い合ってたじゃないですか。 - ぼくが好きだったころのTwitterって、
そういうところだったんです。
- ──
- いまはちがうんですか。
- VOWって
ネット時代に置き去りにされていますので、
公式アカウントも弱小すぎるし、
そのへんのこと、よくわからないんですよ。
- シャープ
- いまは「批評的な空間」になってると思う。
もっといえば「批判」。 - 何かの事象を取り上げるにあたっても、
目線が
「これはいかがなものか」なんです。
で、それに対して、みんなで
「それはいかん。けしからん」ですよ。
- ──
- 昔はもっと無邪気だったの?
- シャープ
- 誰かが見つけてきたおもしろいものを
「おもしろいでしょ?」
「おもしろいね!」
「いいでしょ?」「いいね、いいね!」
ってやってたじゃないですか。 - いまは、一方的に自分の主張をするか、
何かを糾弾するか、
何かの間違いを指摘する場になってる。
- ──
- そんなヒリヒリするような鉄火場では、
VOW、生きていけない‥‥。
- シャープ
- ゆうても「コンテンツ」だったんです。
昔は、Twitterって場そのものが。 - いまは、宣伝の場、糾弾の場、
よくてニュースサイトみたいなところ。
ぼくは、昔のTwitterみたいに、
「ふつうの人がおもしろい」
ということがきちんと証明される場所、
そういう広場が
あり続けてほしいと思っているんです。
- ──
- その点、VOWという場所は
いまだに
まったくふつうの人たちでできています。 - 総本部長であるわたくしも含めて。
- シャープ
- ですよね。だから、期待をしてるんです。
これからのVOWに。 - なんかね、Twitterって
とくに日本で流行ったじゃないですか。
あれ、ぼく、
けっこうVOWのおかげだと思ってて。
- ──
- えっ。と、いいますと?
- シャープ
- 80年代終わりから90年代にかけて、
インターネットが出てくる直前の時期に、
少なくない人たちが、VOWで
インターネットの練習をしてた気がする。 - いまでもスーパーの誤植の写真なんかが
バズったりしてますけど、
そこのリテラシーって、
みんなVOWで高めてたんじゃないかな。
- ──
- われらがVOWが、ちっちゃくでも
いまのSNS時代に影響を与えていたとしたら、
浮かばれますよ。 - 過去の星の数ほどのVOWネタたちも。
- シャープ
- おもしろい現象を採取することって、
たぶん世界中で
日常的に行われていると思うんです。
ここ間違ってるよねとか、
ヘンな看板あったよとか。
- ──
- はい。
- シャープ
- でも、そこによけいな一言を添えて、
投稿して、さらに編集部が
よけいな一言を被せたり、
ツッコミを入れていくっていう様式、
それこそ、
かつての「Twitter」じゃないですか。
- ──
- ホントだ。
- Twitterの母だったのかもしれないと。
VOWってやつは。
- シャープ
- あながち的はずれな見方でもないと、
ぼくは思ってます。
◎お茶がしゃべった! 👉️お客も思わずびっくり。(東京都/w-w)
♨️「クララが立った!」を超える衝撃か。
(つづきます)
2025-09-12-FRI
