
おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。
シャープ
Xのフォロワー数80万超、シャープ公式アカウントの中の人として知られる。第50回佐治敬三賞をはじめ受賞多数、著書に『スマホ片手にしんどい夜に』。現在は「中の人」のままでシャープを離れ、各出版社のマンガの広告やPR企画も行なう。
- ──
- わたくしVOW三代目総本部長と
シャープさんとは同い年なんですけれども、
VOWとは、
どのようなおつきあいをなさってました? - そもそも、ご存知でした‥‥か?
- シャープ
- もちろん知ってました。
- ぼくはパラパラと読み飛ばす感じじゃなく、
ちゃんと読んでたほうです。
ひとりで黙読・熟読していたタイプなので。
- ──
- 向き合っていたんだ。VOWと。
同じ青春かもしれない。
- シャープ
- ぼくがVOWを知ったのは、
たぶん中学か高校のころだったと思います。
掲載誌の『宝島』じゃなくて、
単行本になったやつを読んでいました。 - 誰かに借りたのか、
自分で買ったのかは正直、覚えてないけど。
- ──
- 主にどこで読んでいたんですか。
ぼくは実家のトイレなんですが。
- シャープ
- ぼくも実家でしたね。自分の部屋かな。
学校とかじゃなかったです。 - だからそうですね、
当時、誰から教えてもらったんだろう。
もしかしたら、
うちの妹が持ってきた可能性もある。
- ──
- あ、そうなんですか。つまり、家庭内感染。
そんな、人をウィルスみたいに! - ちなみに、この取材をしていると
「ちゃんと自分で買ってました」って人が、
なぜかあんまりいなくて(笑)、
「友だちに借りた」とか、
「部室に落ちてた」とか言うんですよ。
現代美術作家の加賀美健さんにいたっては
「道ばたで拾った」そうです。
- シャープ
- ははは、なんかVOWっぽい(笑)。
- ──
- そう、ほほえましいエピソードだなあとは
思ってるんですけど、
それでいて、シリーズ累計では
「940万部」も出てるっていうから不思議。
- シャープ
- だから、そういう意味では、ぼくは、
VOWとは
プライベートでつきあっていた感じですね。
VOWについて、学校とかで
友だちとワイワイ話すこともなかったので。
- ──
- いませんでしたか、VOW友。
- シャープ
- いなかったですねえ。
家に帰ってからひとりで耽る密かな楽しみ、
みたいな存在でした。 - 中学高校が男子校で、
アメフト部みたいな価値観が主流だったんで、
彼らとも仲よかったんだけど、
VOWを貸し借りするような友だちって、
いなかったんです。
- ──
- VOWなる人々というのは、孤高なのかなあ。
- いや、でも、そうかもしれない。
投稿人のオフ会とかも聞いたことないし。
よく考えたら自分にもVOW友いないし。
だからこの取材がおもしろいんだと思う。
- シャープ
- ああ、青春時代の密やかな愉しみを
白日のもとにさらしてる感じなわけですね。
- ──
- そうそう、そうなんです。
- じゃあ今回、久々にごらんになってみて、
あらためて
おもしろかったネタとかってありました?
- シャープ
- ヘンな名前のアパートのシリーズを見て、
へえ、こんなのあるのかって。 - 「ベッカム」とか「ゴ・ジーラ」とか。
ともに『VOW全書⑪』より
- ──
- ホテルのチェックインのときなんかに
住所を書くのが
恥ずかしくなっちゃう系の物件ですね。
- シャープ
- そのせいか最近、アパートの名前を
チェックするようになったんですよ。
- ──
- あ、マジですか。何か見つけました?
- シャープ
- 先週だったかな、
「レオナルド」というマンションと
「ダヴィンチ」というマンションが
向かい合って建ってました。
- ──
- わはは、ルネッサンスか(笑)。
同じオーナーなんでしょうね。
- シャープ
- うん。別々のオーナーが張り合ってたら
もっとおもしろいけど。 - ただやっぱり、個人的に
めっちゃ覚えてるのは「とれま」ですね。
強烈に記憶に残ってます。
- ──
- どうして、そんな印象に残ったんですか。
たしかに名シリーズではあるけれど。
- シャープ
- ぼく、高校生のころから
テクノが好きだったんですけど、
田中フミヤさんって、
日本で最初のテクノレーベルをつくった、
有名なDJがいるんです。
- ──
- ええ。お名前はもちろん存じ上げてます。
- シャープ
- その田中さんのレーベルが
「とれまレコード」っていうんですよ。
- ──
- えっ。
- シャープ
- で、そのレーベルのロゴが、
たぶん、VOWの「とれま」の画像を
サンプリングしてるんです。
『VOW 30周年スペシャル』より
- ──
- ええええっ‥‥! 知りませんでした!
とれまレコード? 何たるハイセンス!
- シャープ
- カッコいいでしょ?
当時めちゃくちゃクールに感じたんです。
- ──
- へええ‥‥! あの「とれま」のネタが、
テクノでクラブな人たちに。
- シャープ
- テクノ系のレコードって
匿名性が高いって言ったらいいのかな、
情報らしい情報が
何にも書いてないことも多いんです。 - その田中さんのアルバムも
「とれまレコード」のロゴマークだけが
印刷されているだけで、超クール。
- ──
- 超クール‥‥! シャープさんは、
VOWにもテクノにも精通していたから、
即座に「VOWだ!」と認識し‥‥。
- シャープ
- ええ。
- ──
- そして「超クール!」と!?
あの、VOWの「とれま」のマークが?
- シャープ
- はい。街に転がってる「変なモノ」を
サンプリングして、
ペタっと貼って、
レーベルマークにしちゃってるんです。 - でも、VOWネタの「とれま」だって、
もとは街に転がってるものを
採取してきて、投稿してるわけでしょ。
- ──
- いかにもそうです。
- シャープ
- 言ってみれば、剽窃的な行為の連鎖。
そこに「作家性」は希薄。
でも、その在り方が、クールだなと。 - 誰の仕業かわからないような匿名性や、
互いに侵食しあっている感じが、
最高にカッコいいなって思ってました。
- ──
- シャープさんにとって、VOWとは、
カッコいいものでもあったのか。
- シャープ
- そうなんですよ。
◎みんなでなっちゃお! ……歯?
👉️歯茎の台座付きです。バッドばつ丸がなぜか泣いてるのが気になります。
(青森県/りんちゃん)
♨️すごい。これで公式グッズってのが、サンリオさんの底しれぬところ。
金歯のキティちゃんもいる。
(つづきます)
2025-09-11-THU
