おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。

>成相肇さん プロフィール

成相肇(なりあい・はじめ)

東京国立近代美術館主任研究員。戦後日本の前衛芸術を中心に、ファインアートとその周縁に流動する視覚文化を研究。著書『芸術のわるさ』(かたばみ書房)に瞠目すべしだ。

前へ目次ページへ次へ

第4回 操作する人の手際によるもの。

──
ちなみにですが、成相さんって
赤瀬川原平さんを研究していたんですか。
成相
研究というほど本格的ではないですが、
作品については当然知ってますし、
いろいろと調べたこともありますし、
お仕事をお願いしたことも、
個人的にお会いしたこともありますよ。
──
多岐にわたる赤瀬川さんのお仕事の中で、
超芸術トマソンって、
どういった立ち位置だったんでしょうか。
成相
ご存じのように、赤瀬川さんという人は、
千円札を模した芸術作品をつくって
国から訴えられたり、
尾辻克彦という筆名で小説を書いて、
芥川賞を受賞したり。
──
はい。
成相
もういろんなことをやっているんですが、
路上観察は、南伸坊さんや
編集者の松田哲夫さんとはじめた活動。
路上を歩きながら
おもしろいと思うものを発見し観察する、
それを「超芸術トマソン」と名付ける、
その一連の行為自体が、
ぼくは、
すでに芸術活動に近かったと思うんです。
──
冒頭でもおっしゃってましたね。
成相
それまでの赤瀬川さんが取り組んできた
前衛芸術の延長線上に、たしかにある。
でも、それらは
美術館に展示するようなものではない。
だから、芸術というより、
もっと一般性を持った遊びの行為として
赤瀬川さんは捉えていたのかなあ。
──
それって「70年代」だと思うんですけど、
ってことは、VOWの源流となった
「Voice of Wonderland」が
『宝島』誌上に誕生した時期と、
そんなには離れていないってことなのか。
成相
そうだと思います。同時代でしょう。
理由もなく笑えるのがVOWだとしたら、
トマソンの場合は
赤瀬川さんたちが
「これ、おもしろいと思うんだけどね」
という
発見者の視点から理由づけをしていて、
そこらへんが、少し違いますけど。
──
おもしろいと思ったものを路上で発見し、
写真に撮ってみんなに見せて、
解説して、
どうおもしろいのかを理解するための
補助線を引いて、
「ね、おもしろいでしょ?」がトマソン。
成相
逆に、建物の改築の過程で、
たまたま、どこへもつながっていない
「ただ上って下るだけの階段」
がうまれてしまっても、
それはVOW的ではないと思うんです。
──
ええ、それだけでは、たしかに。
ただ、超芸術トマソンに、
空中に浮かぶドアがあったりしますよね。
建物の外壁の高い場所に付けられた、
そこから出たら墜落しちゃうよってドア。
あれも赤瀬川さんたちが見つけたから、
超芸術トマソンとして後世に残ったけど。
成相
ええ。
──
あの同じドアをVOWの投稿人が見つけて、
VOWらしいコメントをつけて
VOW総本部に投稿したら、
たぶんVOWネタになるんだと思うんです。
成相
ああ、なるほど。そうですね。
──
つまり「取り扱う人」が決め手なのかな。
成相
かつて、赤瀬川さんの撮ったものですが、
「金曜日は不燃物です」
といった趣旨のことが書かれた
ゴミ捨て場の写真があるんです。
その「金曜日」のところが
「金」って省略して書かれてるんですね。
だから、見方によっては
「カネは不燃物です」とも読めるんです。
──
おおー、おもしろい。
お金は燃えない‥‥燃やしてはならない。
成相
そう。ご存じのように、赤瀬川さんって、
千円札裁判をはじめ、
「お金」というものに対して、
さまざまなことを考えていた人ですよね。
お金とは「紙」でできているものだから、
火をつければ燃える、燃やせます。
でも実際に燃やしたら犯罪になっちゃう。
そのへんのことを踏まえると、
「金は不燃物です」という注意書きは、
非常に深い意味を帯びてくるんですよね。
──
赤瀬川さんならではの「視点」だなあ。
成相
あれも、見る人が見れば、
VOWネタにもなっちゃうでしょうね。
だから、両者の境界線というのは、
それを操作する人の手際によるのかも。
──
いやあ、おもしろいですねえ。
VOWの投稿人のみなさんだったら、
なんて書いてくるだろう。
下(シモ)のほうに振ってくる投稿が
チラホラ届く気がする(笑)。
成相
先日も、路上観察学会の40周年で
シンポジウムを開いてたみたいですが、
トマソン的な活動をしてる人たちって、
いまもいるんですよ、じつは。
たとえば、
片手袋研究家の石井公二さんという人。
手袋ってよく片方だけ落ちてますよね。
路上に。
──
ええ。片方だけですよね。なぜか。
成相
そういう片手袋の写真を撮っていたら
おもしろくなっちゃって、
片方だけ落としてしまうということが、
どんな状況で発生するのか、
タイプ別に分類したりしているんです。
本まで出してます。
かなりトマソンの活動に近いんだけど、
この人が片手袋へ向ける視線って、
より文化人類学的だなあと感じますね。
──
分類とか整理・系統立てたりし出すと、
トマソン方面に寄っていくのかな。
成相
ああ、そうかもしれないです。
──
ものごとを整理・分類して、
理解・把握したい‥‥という欲求って、
人間には、
多かれ少なかれあると思いますが、
おそらく、これまでのVOWには、
そいうやって
なんらかの視点で「研究」する動きは、
なかったと思います。
成相
やったらおもしろそうですけどね。
──
VOWの分類学。
成相
そう。

◎ハイパーインフレ進行中 👉️近所のスーパーが異様に値上がりしてました。(神奈川県/つーちゃんパパ) ♨️ハッピーターンコクのやみつきカレー味、167兆5925億9259万2593円だって。おトクじゃん。あー、微妙に手持ち足らんし。ペイペイでお願いします。と、小学生が言う未来もすぐそこ。 ◎ハイパーインフレ進行中 👉️近所のスーパーが異様に値上がりしてました。(神奈川県/つーちゃんパパ) ♨️ハッピーターンコクのやみつきカレー味、167兆5925億9259万2593円だって。おトクじゃん。あー、微妙に手持ち足らんし。ペイペイでお願いします。と、小学生が言う未来もすぐそこ。

(つづきます)

2025-04-15-TUE

前へ目次ページへ次へ
  • 街でヘンなモノを見つけたらこちらからVOWに投稿してね!(外部サイトへ)