愛らしいハンドメイドアイテムの数々を販売する、
スコットランドのお店『トレジャートローブ』。
その名前のとおり、
宝物がぎっしりつまった秘密の洞窟のようなお店です。
そこにあるのは、すべて血のかよった生身のひとの手が
つくりだしたものだけ。
なので、棚にならんだあみぐるみのひとつひとつも、
いまにも動き出しそうな、いきいきとした顔つきです。
おうち時間を一緒に楽しめる、そんなあみぐるみたちを、
スコットランドから直輸入し、販売することにしました。

せっかくならば、素敵なお店のことをたっぷり紹介したい!
三國さんの英国取材と買いつけ旅行の
コーディネートを担当してくださった
ライター・編集者の安田和代さんにお願いし、
日々、このお店を支えるひとびとと
つくり手さんにお話を聞いてもらいました。

文・写真/安田和代

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第4回 あみぐるみはクリエイティブで楽しい。 つくり手、ノーマさんのお話(前編)

トレジャートローブの店頭に
個性豊かなあみぐるみや、
ティーコージーなどのニット作品を
出している、ノーマ・カリーさん。
今回、ほぼ日のためにあみぐるみを
制作してくださったのがノーマさんです。
三國万里子さんが見そめて日本につれてきた
「ハリネズミ夫人」のつくり手でもあります。
ノーマさんにとって、
ものを編むこと、つくること、
それについて考えることについて
お話をうかがいました。


ノーマさんには、これまでに本当にたくさんの
ハリネズミをつくっていただき、
どうもありがとうございます。
ようやくご本人にお目にかかれてうれしいです。
今日はまた、いろいろな作品をお持ちになっていますね。
ノーマ
そうなんです、店頭に置いてもらうために
いくつか持ってきたんですよ。
値札をつけるのもつくり手のしごとなので、
ちょっと値札をつけてしまいますね。
あ、ひょっとしてそのウサギは、
ティーポットにかぶせて使う
ティーコージーですか?
ノーマ
そうそう、ポットの注ぎ口とハンドル部分が
外に出るように、青いドレスの両側に
穴があいています。
おなじみのハリネズミもいますよ。
いま、バレリーナをつくるのが楽しくて、
チュチュを着たネズミももってきました。

昔からあみぐるみをつくっていらしたのですか?
ノーマ
トレジャートローブに出合うまでは、
実は、あみぐるみは、
ほとんどつくったことがありませんでした。
それまでは、家族のためのセーターとか
カーディガンとか、実用的なものだけを
つくっていたんです。
そうでしたか。
いつ頃からトレジャートローブに作品を
出品していらっしゃるのですか?
ノーマ
2012年からです。
当時5歳の孫娘と、この近くの公園に行く途中で、
偶然通りがかって見つけたのです。
私はエディンバラ生まれ、エディンバラ育ちなのに、
それまで、このお店のことはぜんぜん知りませんでした。
ウィンドウに出ていたパンダのあみぐるみを
孫娘が欲しがったので、
「私にも編めるから、つくってあげるよ?」
と言ったのですが、
「あれがほしい! あれじゃなきゃやだ!」って(笑)。
それでパンダを買うためにお店のなかに入って、
いろいろ品物を見ているうちに
ああ、これなら私にもできるかなぁと思って、
ルイーズさんに話を聞いたんです。
ちょうどフルタイムの仕事を引退した後で、
ものをつくる時間があったので、
その場で、メンバーになるための申請用紙をもらい、
後日、作品サンプル2点と一緒に提出しました。
それでメンバーになられたのですね?
ノーマ
はい。メンバーになってすぐに、
大きなウサギのあみぐるみと、
てっぺんにテディベアのついたリブ編みの帽子を
つくって出品しました。
ところが、その後なん度かお店をのぞいてみたけれど、
一向に帽子が店頭に並ばないので、疑問に思って、
「あの、帽子のほうはどうなりましたか?」って聞いたら、
「えっ、あの帽子、本当にノーマさんが
つくったものだったんですか?」って。
「あんまりキレイでプロフェッショナルなので、
お手製ではなく、どこかで買ったものを出品したのかと
運営委員が勘違いしてしまい、よけていました」
と言われて(笑)。
手編みではなく、家庭用の編み機を使って
リブ編みをしたので、あまりに目がそろっていて
誤解されたのかもしれませんね。
編み機は、それまでも使っていらしたのですか?
ノーマ
はい、20代の頃からずっと。
特に、子育てをしながら仕事をしているときは、
時間に追われていたので、
手編みはほとんどしませんでしたね。
息子ふたりが小さいときは、
常におそろいのセーターをつくって着せていました。
3人目が女の子だったのは嬉しかったですね。
ピンクのかわいいものをつくることができて。
たしかに女の子のものをつくるのは、楽しそうです。
最近では、なにをつくっているときが
いちばん楽しいですか?
ノーマ
あみぐるみがいちばん楽しいですね。
正直なところ、あみぐるみをひとつつくるよりも、
編み機でセーターを1枚編むほうが速いんです。
でも、あみぐるみは、クリエイティブなアイデアを
たくさん投入できるところが楽しくて。
たとえば、アイデアを探すときは
手芸店や本屋さんで、あみぐるみの本を見たり、
ネットでパターンを探したりしますが、
それをそのまま使うということはありません。
頭の部分はここから、足はここから、
服は自分のさじ加減で、というように、
手法も手編みと機械編みを組み合わせながら、
自分のつくりたいものに近づけていきます。
なかなかうまくいかなくて、
「ああ、もう、二度とこんなことしない!」って
思うこともありますが、ひとつできあがると、
またすぐ次のものがつくりたくなってしまいますね。

同じものを再現することができるように、
作業をしながら目数や段数を記録しておくのですか?
ノーマ
はい。クリアファイルに整理しています。
なので、同じものを何回でもつくることは可能です。
でも、ちょっと肌や髪の色を変えてみたり、服を変えたり、
なにかしか変化をつけたくなってしまいますが。
トレジャートローブに出品するものをつくるときと
個人的に家族や友達のためになにかをつくるときでは、
やはり違いはありますか?
ノーマ
うーん……いずれにしても完璧主義者なので、
作業そのものに関しては、特にどっちがどう、
ということはないです。
でも、知り合いに向けてつくるときは、
渡したときのリアクションを見られるのが
やはりうれしいですよね。
ついこの間も、ゴルフをやっている友人に頼まれて
ゴルファーのあみぐるみをつくったんですよ。
彼女が属しているクラブのロゴまで、
そっくりにつくりました。
片手だけのグローブや、
ちいさなバイザーとゴルフクラブまで。
こんな感じです。

わぁ、すごいですね。
それに、ハリネズミ夫人のシールも!
三國さんの著書『I PLAY KNIT. 』のシールですね。
ノーマ
ふふふ。
自分のつくったハリネズミが本に載って、
なにか話しているのを見て、楽しかったですよ。
では次回では、ハリネズミのあみぐるみについての、
お話をうかがっていきましょう。

(つづきます。)

2021-11-30-TUE

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  • 12月2日(木)午前11:00 販売スタート!

    「トレジャートローブ」から、
    4種類のあみぐるみが“来日”します。
    表情がひとつひとつ異なる、
    愛嬌たっぷりのあみぐるみたちです。