
たくさんの出会いを大切にし、
能登とのつながりから防災士となり、
自分にもできることを日々、
ひとつずつ積み重ねている常盤貴子さん。
その飾らないうつくしさに心が惹かれます。
日常のおもしろいと思うことから、
未来に向けて今どう動くかまで、
とても気さくに、お話いただきました。
担当は「ほぼ日」下尾(しもー)です。
常盤貴子(ときわ・たかこ)
ヘアメイク|ナライユミ スタイリスト|梅山弘子 衣装協力|Le pivot
- ──
- 常盤さんはNHK朝の連続テレビ小説『まれ』で、
ヒロインのお母さん役を演じられて、
それが能登との最初の出会いだそうですが、
能登の震災がきっかけで、
防災士の資格をお取りになったそうですね。
きっかけは何でしたか?
- 常盤
- 能登に伺ったときに、
町に防災士の方がたくさんいらっしゃって、
こんなにたくさんの防災士の方々が
被災地に入ってボランティア活動をされていることが、
すごく頼もしかったんです。
私も能登に行かせていただいている中で、
そんなに何度も被災地にタレントが行って、
「大丈夫なの?」と不安に思う方も、
いらっしゃるんじゃないかと思いました。 - 防災士の資格を取ることによって、
ちゃんと勉強をして、その知識を持って
被災地に行っていることがわかると、
みなさん安心して、
その活動を見守ってくださるのかな
と思ったのがきっかけです。
- ──
- 大変だったことはありましたか?
- 常盤
- 講習が2日間あるんですが、
講習を聞いていれば
テストに合格できるタイプの試験ではなく、
事前に穴埋め問題を渡されて、
それを宿題のように、
勉強しておく必要がありました。 - 2日間の講習は、実践するAEDや、
事前勉強にプラスして覚えておくべきものを
直接先生方が教えてくださる講習なんです。 - むしろ初日の朝イチで提出した
穴埋め問題の中からテストが出題されます。
- ──
- 事前に自習が必要だったんですね。
- 常盤
- そうです。
ちゃんと自分で勉強しておかなきゃいけないと、
1日目が終わってから気がついたので、
そこから猛勉強しました。
これから受けられる方は、
心構えをしてから臨んでいただけたらいいと思います。
- ──
- さきほど出てきた大分県佐伯市でも、
能登のワークショップをされていますね。
- 常盤
- 震災後の2月に佐伯市でイベントがあったときに、
佐伯市の防災士の方が、
ちょうど能登に行かれるタイミングで、
能登の現状を知らせてくださいとお見送りしました。 - その後、能登の方々にとって
『まれ』というドラマが、
みなさんの心の支えになっているという話を聞いて、
『まれ』で知り合った人たちとともに、
何かできることを探しましょうと、
数人で集まって佐伯市の防災士の方といっしょに、
地震後、初めて能登に入りました。 - そういうご縁から佐伯市でも、
能登のために何かできないかなという話になって、
子どもたちのために、
漆のワークショップをやることになりました。 - 輪島塗の技術って、
基本的には輪島を出ないものなんですね。
だけど、こういう時期だから、
ぜひと言っていただきました。 - 輪島塗の職人さんと
蒔絵師の方にも来ていただいて、
子どもたちには蒔絵の体験をしてもらいました。
- ──
- 蒔絵師の方がマタタビの花を
描いていらっしゃったというお話が出てきますが、
マタタビの花自体を知らなかったので調べたら、
梅に似た白くてかわいいお花なんですね。
- 常盤
- そうなんです。
私も全然知らなかったんですけど、
マタタビの花は、ある時期になったら、
あそこに咲いているから、
それを見たらいいよと教えていただきました。 - その花が、どの時期に、
どこに咲いているかということも、
蒔絵師の方は頭に入っているんだということに、
すごく感動しました。 - しかも図鑑を見直したり、
写真を探したりすることもなく、
自分の頭の中にある、
記憶のマタタビの花をフリーハンドで、
どんどん描いてくれたことが、
これこそが伝統芸能なんだなと実感できて、
とても、かっこよかったです。
すごくいい出会いになりました。
- ──
- 能登の活動の中で、
印象に残っていることはありますか?
- 常盤
- 『一人一花(ひとりひとはな)運動』です。
去年の12月に福岡で国際映画祭があって、
能登のことも、お話させていただきました。
そのとき福岡には『一人一花運動』という、
企業に協賛をしていただいて、
福岡の街をお花でいっぱいにする
取り組みがあるということを伺いました。 - ちょうど解体が進んで、
能登に更地が多くなり、
寂しくなってきている時期でしたし、
もともと能登の方々は、
お花や畑が好きなので、
絶対喜んでくださるからと話をつなげて、
能登でも、できることになりました。 - 七尾市からキックオフをして、
輪島、珠洲、穴水、志賀町など、
続々と能登でガーデンを
つくることができているんです。 - 能登に実際には行けなくても、
協力したいという方が、
どんどん広がってきているのが、
すごくうれしいですね。 - まちの人たちも仮設住宅に入ったことで、
同じまちの人同士が
会う機会が減ってきていたので、
ガーデンをつくることによって、
いっしょに花植えをして土に触れたり、
お花の水やりで集まったりできるようになりました。
ガーデンには椅子も置いてあるので、
地元の方々のコミュニケーションの場に
してもらえたらいいなという思いもあります。
- ──
- 行動を起こしたいなと思ったら、
一般の人でも寄付できるんですか?
- 常盤
- もちろんです。
「一人一花 in 能登半島」で検索してみてください。
いちばんうれしいのは、
もし協賛してくださる企業さんや、
個人の方がいらっしゃったら、
能登に実際に来ていただいて、
いっしょに花植えができたら、
さらにまたうれしいなと思っています。
(つづきます)
2025-09-22-MON
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小さな幸せで満たす日々(主婦と生活社)

