
たくさんの出会いを大切にし、
能登とのつながりから防災士となり、
自分にもできることを日々、
ひとつずつ積み重ねている常盤貴子さん。
その飾らないうつくしさに心が惹かれます。
日常のおもしろいと思うことから、
未来に向けて今どう動くかまで、
とても気さくに、お話いただきました。
担当は「ほぼ日」下尾(しもー)です。
常盤貴子(ときわ・たかこ)
ヘアメイク|ナライユミ スタイリスト|梅山弘子 衣装協力|Le pivot
- ──
- 『ななおの海』という、
お子さんたちの心のケアのための映画にも、
ご参加されていますね。
- 常盤
- はい。能登半島地震で被災した
女の子「七緒」が友達と探検する中で、
地震でさまざまなものを失った悲しみと
向き合っていく物語です。
- ──
- 仕事とプライベートの境目が、
曖昧になってきているというお話を、
本の中でもされていましたけれども。
- 常盤
- 最近、その境目を
意識しなくてもいいのかも
と思うようになりました。 - 線は、自分が勝手に引いてるだけで、
本当はなくてもいいんじゃないかなと、
よく思っています。 - だから『ななおの海』に関しても
子どもたちが初めてお芝居をするから、
ちょっとアドバイスありますかと言われて。 - 今までだったら、
- 「いやそんなおこがましい、もう演技なんて、
みなさん自由にやっていただければ」 - と言っていたと思いますが、
- 「初めてお芝居に触れる人たちが、
なんでもいいからアドバイスがあると、
ちょっと道が開けることも、あるのかもしれない」 - と思えたんですね。
- もう本当に単純なことで、
セリフを言う時に、
お友達に話しているセリフだから、
お友達の顔を見て言いましょう
ということだけだったんです。
- ──
- カメラがいっぱいあると、
どこを見たらいいか、わからないですもんね。
- 常盤
- そうそう。
だから、みんなだいたい下を向いて
セリフをしゃべっていたから、
「お友達の顔を見て言おう」と伝えたら、
もうそれだけで、すごく生き生きとして。
私にとっても勉強になりました。
すごくいいクリエーションでした。
- ──
- 子どもたちも、
きっと心が動かされたと思います。
- 常盤
- 地球のステージさんの取り組みで、
その先生は、
ガザなどの戦地の子どもたちの心のケアのために、
そこでも映画の撮影をしています。 - 最初は絵を描いたり、
みんなで話し合ったりする
ワークショップから始めて、
段階を追って、
最終段階として映画があるそうです。 - 自分の体験を話をして、
それが台本になって、その台本を読んで、
それを自分の言葉として、セリフとして発して、
それを多くの人が映画として見る。 - その全部がトラウマ克服につながる
という考え方みたいです。 - だから、その映画をつくられた先生は、
ラッシュという仮編集をみんなで見たときに、
ものすごく泣いていらっしゃいました。
トラウマをたくさん抱えている段階から、
子どもたちをずっと見てきたから、
ようやくここまで来たんだと思われたようです。 - 「すごいな、映画にはそういう力があるんだ」
と、私も初めて学びました。
- ──
- 能登以外にも、戦争や原爆などについても、
SNSなどで発信されているなと感じるのですが、
さまざまな作品の中で出合った
問題提起に対して、問題解決のために、
ご自身で動こうとされているような気がします。
- 常盤
- 解決は、すぐにはできないですけれども、
問題に出合ったからには、
そこを担わされていると思っています。
次の世代にバトンを渡す準備を
しなくてはいけないと思うようになりました。 - 例えば仕事でも、たまたま読んだ本でも、
たまたま見に行った映画でもよくて、
そのことを知ってしまったら、
知った責任があって、
それを伝えていかなければならない。
そのことに気づいた私だからできること、
という役割もあると意識しています。
- ──
- そういうことも含めて、
これから俳優として
こうなれたらいいなという目標はありますか。
- 常盤
- それは今までもそうだったんですけど、
本当に、その都度「わー、おもしろい」
と思うことに、乗れる自分であれば、
たのしいかなって思っています。 - こういうものがやりたいと言って、
そこに行くというよりも、
なんにも考えていないところに、
ふわっと舞い込んだことに乗れる自分でありたい。
そうしたら思わぬことにも出合えると思うんです。 - タンポポのフーって綿毛があるじゃないですか。
あれにつかまるみたいなイメージ(笑)。
ふわ〜って飛んできたものに、
ワッと、つかまって飛んでいくみたいな。
- ──
- めちゃくちゃ、すてきですね。
では、ひとりの人間としては、
どんなおばあちゃんになっていきたいですか?
- 常盤
- うーん。たぶん、こうやって今、
いろんなことに興味を持ち出して、
吸収しようとしているので、
めんどくさいおばあちゃんになると思うんですね。
- ──
- え!? そうなんですか?(笑)。
- 常盤
- うん。なりたいし(笑)。
そうなって笑顔で「ねえ、こうして!」
と言ったときに、
みんなが言うことを聞いてくれるような
おばあちゃんになりたい。
でも笑顔で言ってるから、
「もうなんかさ、言うこと聞いちゃうんだよね」
と言ってもらえるところまで頑張る(笑)。
- ──
- 最高ですね。
- 常盤
- うん。そうなれたらいいな。
(おわります)
2025-09-23-TUE
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小さな幸せで満たす日々(主婦と生活社)

