toeというカッコいいバンドの山㟢廣和さんを
知人が紹介してくれました。
よく晴れていたし、家から遠くなかったので、
山㟢さんとこまで歩いていって、
中学のころに聴いていたBOØWYのこととか、
いまのバンドのことについて、
みごとに、とりとめもなくおしゃべりをして、
帰ってきました。
toeはこの2025年10月25日、25周年LIVEで、
両国国技館に8000人を集めます。
担当はほぼ日の奥野です。ゆっくり読んでね。

>山㟢廣和さんプロフィール

山㟢廣和(やまざきひろかず)

横浜市生まれ。中学時代からバンド活動を始め、2000年にポストロックバンドtoeを結成。インテリアデザイナーとしての顔も持ち、デザイン会社METRONOME INC.を主宰する。

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第2回 バンドやめたくないんで

──
ギターのフレーズの断片を
スマホにたくさん録っておくそうですね。
で、それを構築的に組み上げていく。
すると、あんなふうに、
どこか別の世界へ連れて行かれるような、
夢と現実の狭間みたいな曲がうまれる。
山㟢
つくりかたとしては、そんな感じです。
──
それって最初からそうだったんですか。
BOØWYからスラッシュメタル‥‥
の流れからは、
何だかちょっと想像しにくいなと思って。
山㟢
いや、最初はみんなでスタジオに入って、
せーのでつくってましたよ。
いわゆるロックとかパンクっぽい音楽を
やってたんで。
だんだん好みが変わってきたんです。
ベースラインが変わっても、
ギターがしばらく同じリフを続けてたり、
入れ子構造っていうか、
パズルみたいな曲が好きになってきて。
で、そういう曲って、みんなでせーので
つくるのが難しいんですよ。
──
そうですよね、きっと。
山㟢
もうひとりのギターの美濃(隆章)くんに
横でコンピュータを操作してもらいながら、
スマホで録ったフレーズから
「これを10回ループさせて、
ここにドラム置いて、ここは2回消えて‥‥」
みたいな感じでつくってます。
──
でも、断片を積み上げていく作業の場合は、
いつ「できた!」がくるんですか?
山㟢
何となく完成形のイメージがあるんですよ。
最終的に「こうしたい」という感じ。
それは、雰囲気のようなものなんですけど、
そこへ向かって断片を積み上げていく、
パズルのピースをはめ込んでいく感じです。
──
なるほど。
山㟢
そうやってえんえんふたりで組んでいって、
ほぼ完成形まで持っていってから、
みんなに聴いてもらって
「じゃあ、バンドでやってみよう」となる。
──
最終的に「バンドでやる」のはなぜですか。
山㟢
バンドが好きだから。
──
おお。じゃ、何でバンドが好きなんですか。
山㟢
みんなで音を合わせるのがおもしろいから‥‥
ですかね。ベース、ドラム、ギターが
「ワン、ツー、スリー」で曲がはじまって、
「ダンっ」って曲が終わる。
ギターだってベースだって、
一人で弾いてたって大しておもしろくないですよ。
だから、ギターをはじめた中学生は、
すぐにバンドを組んだほうがいい。
バンドをやってるから練習もするわけだし。
楽器は「みんなで音を出す」ところに、
おもしろさのほとんどぜんぶがあると思う。
──
そのおもしろさを体験できるのが、バンド。
なるほど。
バンドの楽器って、ひとつひとつは、
ぜんぜん違う音を出す楽器じゃないですか。
山㟢
うん。
──
ドラムなんてドレミファとかじゃなくって
何かを叩いてる音だし。
でも、それらがぜんぶ合わさった、
音で満たされた空気が目の前を通り過ぎると、
涙がこぼれたりするわけですよね。
そこに人間の可能性を感じたりしています。
山㟢
うん、カッコいいバンドを見ると
「やっぱりバンドって最高じゃん」ってなる。
でも、カッコ悪いバンドを見ると
「うわー、カッコ悪ぃ」って思う(笑)。
頂点が「最高にカッコいいバンド」とすれば、
次に「カッコいいダンスミュージック」‥‥
って並べていって最後、
いちばん下に「カッコ悪いバンド」が来る。
──
つまり、カッコ悪いバンドは
他のどんな「カッコ悪い人たち」よりも
カッコ悪い、と(笑)。
山㟢
最高にも最低にもなれるっていうのが、
ぼくにとっての「バンド」ですね。
──
カッコいい、っていうのも難しいですけど。
山㟢
言葉にするのはね。
──
ある様式が必ずカッコいいわけでもないし。
山㟢
ひとつのバンドでも
「めちゃくちゃカッコいい」時期もあれば、
ちょっとなって時期もある。
ただ、バンドの場合は人間がやってるんで、
長く活動していると、
楽曲の出来不出来だけじゃなくて
「人間性の発表の場」みたいになってくる。
それが、
いまの自分に響くかどうかじゃないかなあ。
──
なるほど。
山㟢
あとは「何でこんなことしてんの?」って、
そういう人たちには惹かれますね。
それは音楽だけじゃなくて、
絵とか他の表現の人とかでもいいんだけど、
ただただオシャレで美しいモノではなく
「何でこんなものをつくってるんだ?」
って思わせてくれるものを、
ぼくは、お金を払って見に行きたいと思う。
仮にできあがったものが好みじゃなくても、
「何でこんなことしてんの?」が観たい。
自分でも、そういう音楽をやりたいですし。
──
唯一無二ってことですね。わかります。
現代の表現者でいうと、
ぼくは、美術家の森村泰昌さんだとか、
シャンソンの美輪明宏さんなんかは、
本当に「唯一無二」のことをしてると思う。
ゴッホになりきって写真を撮ったり、
老女優の人生を曲間で語り上げたり、
たぶん最初の最初は、
あまり受け入れられなかったと思うんです。
そんな「表現」は前代未聞だったから。
山㟢
すごいですよね。
──
いまでは、森村さんも美輪さんも、
そのジャンルとイコールみたいな存在です。
ジャンル自体をつくりあげてしまった。
山㟢
だから、長くやるってこと自体に力が宿る。
──
山㟢さんたちも、もう「25年」なんですね。
その間、メンバーも変わらず?
山㟢
そうですね。
長くやる秘訣とか聞かれるんだけど、
ふだんから連絡取り合って遊ぶような
ベタベタした関係性のグループではないってことも、
続けてこれた要因かもしれないです。
いい言い方をすれば、
おたがいの生活を尊重して距離を保つ。
それと、
そもそも「解散→再結成」が嫌いなんですよ。
「再結成するなら解散しなきゃいいじゃん」
って思うし。
──
ああー‥‥。
山㟢
俺たちもライブやらない期間が1ヶ月あいちゃったら、
ライブのグッとした感じを取り戻すのって
けっこう大変なんです。
昔、好きだった再結成バンドを観に行って、
がっくりして帰ることが多くて。
だったら、世間的な人気があっても無くても、
ずっと現役で、
月に何本もライブやってるバンドのほうが、
ずっとカッコいいと思う。
──
うんうん。
山㟢
だから、やめたくないんですよ。バンド。
──
おお。素敵だ。
山㟢
何らかの問題が起きたとしても、
その場の感情で「やめる」とは言わない。
何でも、だいたい一晩寝たら落ち着くし、
解決策も見えてくるでしょ。
──
いいなあ、「バンド、やめたくない」って。
グッときました。
布袋さんのギターを手にした中学生みたい。
山㟢
バンド、やめたくないんですよ。

写真:太田好治 写真:太田好治

2025-10-24-FRI

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  • 約8000人を集める
    toe 結成25周年記念特別公演のチケットは
    すでにソールドアウト!
    でも、あきらめるのはまだ早い。
    チケット完売につき
    YouTubeでの無料生配信が決定しました。
    詳細は、toeのYouTubeチャンネルで。

    日程:2025年10月25日(土)
    会場:東京・両国国技館
    開場/開演:16:00開場/17:30開演
    チケット: SOLD OUT!!
    特設サイト: https://www.toe.st/25th/