山㟢

小学校のころは、BOØWYが好きだったんですよ。

──

あ、ぼくもです。でも、何だか意外。

山㟢

最初に買ったギターも、布袋モデルの廉価版だし。
ジャクソンヘッドのテレキャス。

──

ぼくは出身が群馬県なんで、
BOØWYは、クラスの男子みんな聴いてました。

山㟢

群馬といえばBOØWY。と、BUCK-TICKか。

──

はい。BUCK-TICKは
櫻井さんが倒れる少し前のライブにも行っていて。
でも、BOØWYはすでに解散していたので、
あとからアルバムを追っかけていった感じですね。

でも、いま山㟢さんのやっている音楽からすると、
けっこう意外でした。

山㟢

ぼくは『LAST GIGS』に行ってますから。

──

ええっ、ビデオにもなってるやつ！
めちゃくちゃ見てました、中学のとき。VHSで。

あの場にいたんですか！　
群馬の山奥の中学生が
毎晩のようにビデオで見ていたライブの現場に
ほぼ同世代がいたとは！　いいなあ～。

山㟢

あのときの東京ドーム２日間って、
解散宣言から半年近く経ってるんですよね。
「解散します」って言ったのが、
渋谷公会堂のライブで、前の年の年末。
そのチケットは、
ぴあに朝イチからずーっと電話をかけ続けたけど
繋がらなくて取れなかったんです。

──

６年前は新宿ロフトで60人しかお客がいなくて、
みたいなＭＣを氷室さんがしてますけど、
それからたった６年で、
２日で10万人を東京ドームへ集めたんですよね。

あらためて、ものすごいバンドだったんですね。

山㟢

かなりのペースでアルバムを出してますもんね。
３年で４枚とか。

──

はじめて買ったアルバムは何でした？

山㟢

『BEAT EMOTION』ですかね。

──

あ、ぼくもだ。あれ、いちばん好きかも。

山㟢

いいですよね。フジちゃんって
音楽を教えてくれたビデオ屋の兄ちゃんから、
「次は、これを聴け！」とかって教わって。

布袋さんのコード感がカッコいいんですよ。
さり気なく中間コードとか入ってきて
20代であんなギター弾くの「天才！」って感じ。

──

はい。『BAD FEELING』のリフとか最高です。

ぼくら世代がはじめてギターを買ったら、
だいたい挑戦しますよね、あれ。難しいけど。

山㟢

いまだに弾けると思う（笑）。

──

でも、さっきも言いましたが、
いまやってらっしゃるバンドの音とは、
けっこう距離があるのかなと思うんですけど。
BOØWYって。

そこからの音楽遍歴はどんな感じなんですか。
やっぱり、いちどは洋楽へ‥‥ですか。

山㟢

ガンズアンドローゼズとかメタリカとか、
ハードロックや
スラッシュ・メタルの方向へ行きました。
いわゆる
「テレビから流れてこない音楽」を探してた。

BOØWYも、当時小学生のぼくにしてみたら、
そういう音楽のひとつだったんです。

──

なるほど、いまでこそ有名なバンドですけど。
でも、ありますよね、そういう時期。

山㟢

ぼくは、いまだにそういうところがあります。

だから、自分の父親とか母親に
「あなたたちの音楽、とってもいいわね！」
とかなんか言われたら最悪。
本気で「やめようかな‥‥」って悩むと思う。

──

わはは、いまだにそのスピリッツが（笑）。

山㟢

あんたらにわかってたまるかって感じ（笑）。
ちょっと売れたりすると、
そういうこと言い出したりする人いるじゃないですか。
「あなたの音楽、いいと思ってた」みたいな。

そこに抗ってやってる感じがする。いまだに。

──

ご両親はライブとかには来ないんですか？

山㟢

ないない。ないと思いますよ。
こっそり来てたらわかんないけど、たぶん。

──

山㟢さんたちの音楽って、
すごく緻密で構築的な印象があるんですが、
そういう「反骨」が支えていたとは。

山㟢

そのまま50まで来ちゃったんですよ。

──

ああ、でもライブは激しかったりしますよね。
ハードなロックみたいなのもやってたんですか。

山㟢

高１のときに１年だけ留学したことがあって。
ロサンゼルスなんですけど。
ギリギリ世間がバブルの余韻があったんで、
親父も小金を持ってたのかなあ、
「留学したい」っていったら「いいよ」って。

──

何してたんですか、１年間。

山㟢

まあ、勉強はわかんなかったです。英語だし。
でも、そこでバンドをやってました。

──

ええ、すごい。あっちの人と？

山㟢

そう。

当時は、スラッシュ・メタルが好きだったから、
髪がこれくらいのロン毛で、
耳のピアスと鼻ピアスを鎖でつなげてて。

──

おおお（笑）。

山㟢

スケーターのＴシャツに短パン穿いてました。
そんな格好してると、
みんな話しかけてくるんですよ、あっちだと。

「おまえスラッシュ好きなの？」みたいな。

──

スラッシュ・メタルというと、
メタリカ、メガデス、アンスラックス的な。
でも、そんな転校生があらわれたら、
ぼくら日本人だと、
少々話しかけづらいような気もしますけど、
アメリカでは「話しかけられる」んですか。

山㟢

英語もできないのにバンドに混ぜてもらって、
ベースを弾いてました。

誰かんちのガレージで、爆音で。
昼になるとママが「ランチよー」って（笑）。

──

本来的な意味での「ガレージバンド」ですね。

でも、そういう音楽もまた、
いまやってる音楽とはちょっとちがいますね。
ギターって、
じゃあ、そうやっているうちに上手くなって。

山㟢

ギターは別にうまくないですよ。

──

いやいや、そんなことないでしょう。

山㟢

ほんとに。

──

でも、練習とかしてますよね‥‥って、
いや、当たり前のことを聞いてしまいました。

山㟢

それは、まあ、人並みには。

──

ビジュアル系の人たちって、
まずは「ビジュアル」に目がいっちゃうけど、
総じてテクニックがすごいじゃないですか。

山㟢

そうですよね。

──

見えないところですごく練習してるんだなあ、
というのがわかってグッとくるんです。

お化粧とかする時間だってあるでしょうに。
とにかく
見えないところで努力を重ねてきた結果が、
このプレイなんだーって思うと。

山㟢

そうですよね、たしかに。
でも、
自分ではギターがうまいとは思わないんです。

バンドをやりたいのがいちばんで、
バンドをやるには曲をつくんなきゃいけない、
曲をつくるには楽器ができなきゃいけない。
で、唯一、弾けるのがギターだったんですよ。

写真：太田好治