南伸坊さんと糸井重里が
あちこちを小旅行しながら、
めくるめく雑談をくりひろげる、
そこそこ人気のシリーズ、黄昏。
思えばずいぶん久しぶりの新作です。
奈良に居を移したゲージツ家、
「クマ」こと篠原勝之さんと話します。
それぞれが二十代のころから
とっくに雑談し合ってる3人、
はたしてどこまで行くのやら。
どうぞ、のんびりおつき合いください。
必然、「老いと死」についても語ります。

>糸井重里

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糸井重里(いといしげさと)

コピーライター
株式会社ほぼ日会長

雑談オールラウンダー。
ダジャレもシモもどんどん行く。
タコの話なども得意。

>南伸坊

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南伸坊(みなみしんぼう)

イラストレーター
エッセイスト

蓄積した雑学から雑談を展開。
さまざまなモノマネ経験あり。
タコの話なども得意。

>篠原勝之

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篠原勝之(しのはらかつゆき)

ゲージツ家
作家

鉄や土の作品をつくる一方、
文筆家としても活躍し、
泉鏡花文学賞を受賞する。
過去のエピソード豊富。

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第23回 雑草も木も虫も


糸井
今さ、雑草に興味あってさ。

篠原
雑草。
糸井
雑草の先生と知り合ったら、
ほんっとにおもしろいんだよ。
南
うん。
糸井
草ってどこでも生えるじゃん。
とんでもないところに花が咲いてたり。
だから雑草って強いんだなと思うじゃない。
でもあれは、ものすごい数のなかから
生き残ってるわけだよ。
数億の精子から1つが受精するのと同じで、
ものすごい中で、
「これがここでは行けたんだよ」
ってやつだけが生えてるわけだから。

南
ああ、なるほどね。
糸井
「雑草は強いからどこでも生える」
っていうのは、まずはない。
南
踏まれても踏まれても起き上がる、
って思ってるよね、みんな。
糸井
それも違うらしいんだ。
草は踏まれたら、そのまま生きたほうが
エネルギーをつかわなくて済むから、
起き上がらないんだって。
つまり、踏まれたまま、生える。
篠原
へーー。
糸井
そういうことをいろいろ教えてもらって、
おもしろいなぁと思ってるんだよ。
南
アジアンタムっていうさ、
観葉植物みたいなのがあるんだけど、
けっこう弱い植物なわけ。
前に築地にいた頃に買ってきて、
家に置いたんだけど、すぐダメになった。
で、それからずいぶん経って、
鎌倉を歩いてたらさ、
溝の網目のフタの下のほうに、
アジアンタムがものすごく茂ってる。

糸井
ああ、うんうん。
南
なんだよ、うちの植木鉢はだめなのに、
ここだったらいいのかよって思ったけど、
つまり、そこがちょうどいい環境だった、
っていうことなんだろうね。
糸井
そうなんですよ。
その場所のナンバーワンっていう。
だからそれをひっこ抜いて、
自分ちのいい場所に挿しても、
たぶん枯れるんですよ。
南
ああ、それはおもしろいね。
篠原
俺も、奈良に来てから、
木とか植物とか詳しくなってきたんだけど、
植物って、基本的には1年で死ぬんだ。
木は何百年も生きて‥‥っていうけど、
そういうわかりやすいことでもない。
このあと、春日山の林を歩くんだったら、
見てほしい木があるんだけど、
その木は真ん中に大きいウロがある。
すぽっと穴が空いてるような木なんだ。
もしそこに行けたら、そのウロの中に
3人で入るといいんじゃないかと思っていて。

糸井
おお、いいね。
篠原
木って、真ん中から死んでいくんだよ。
外側は柔らかくて、生きていて、
どんどん新しくなってるんだよ。
だからね、木っていうのは、
死というものを真ん中に秘めながら生きてるわけ。
すごいやつなんだよ。

糸井
すごいねぇー。
篠原
その、真ん中の死んだやつを材木にして、
人間は使ってたりするわけだな。
南
おもしろい。
糸井
おもしろいんだよ、雑草も木も。
「雑草という植物はありません」
っていう昭和天皇の有名なことばがあるけど、
雑草のひとことでくくって、
終わらせちゃったらもったいない。
南
あのことばは、
「どんな植物にも名前がある」
って続くんだよね。
篠原
でも実際には、
名前がついてない植物も多いんだよな。
分類学では、全てのものには
名前がついてるって言うけど、
ほんとは、まだ名前がついてないのも
たくさんあるんじゃないか。
糸井
というか、ものにはぜんぶ名前がある、
っていうことが文明のベースなんだよね。
南
まだ発見されてないものもあるわけだからね。
篠原
ぜんぜんある。

南
日本は、植物もそうだけど、
いろんなものの種類がすごく多いんだってね。
イギリスなんかは、虫の種類とか、
すごく少ないらしい。
糸井
それで思い出したけど、
俺、パリで動物園に行ったんですよ。
で、いろいろ見てたら、
「虫」っていうのがあってさ。
南
「虫」(笑)。
糸井
ゾウです、キリンですみたいな、
感じで、「虫」なのよ。
なんだよ「虫」って。雑草どころじゃないよ。
でも、そこはパリの人たちにとっては、
ぜんぶ「虫」なんだって。

篠原
へーー、そうかい。
糸井
虫の名前を詳しく知ってると
むしろ驚かれる。
アゲハチョウとモンシロチョウの違い、
みたいなことじゃなくて、
トンボとコウロギの違いも
ほとんどの人は知らなくて、
ぜんぶ「虫」なんだって。
南
ははははは。
篠原
おもしれーもんだな。
でも、ちょっとわかる気もするな。
俺、植物好きだけど、
「これはガクアジサイで
アジサイとはちょっと違って‥‥」とか、
そういうことはどうでもいい。
そのへんはぜんぶアジサイでいい。

糸井
(笑)

(日本人は分類が好きなのかもしれない。つづく)

2026-03-19-THU

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  • 写真・山口靖雄(MountainDonuts)

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