
群馬県、赤城山のふもとに、
白川小学校という学校があります。
卒業を控えた6年生のみなさんはいま、
「楽しく働くには」をテーマに、
生き方を考えるスタートラインに立っています。
そんな6年生を受け持つ先生が、糸井を
「楽しく働いている大人のモデル」として、
授業に招いてくださりました。
そこで、赤城山の頂上にある「ほぼの駅 AKAGI」で
ストーブを囲み、12名の6年生と糸井が話すことに。
たくさんの未来のいつかに思い出してほしい、
一歩目を一緒に踏み出しました。
- 交流会から約4か月が経った3月、
6年生のみなさんは卒業を
目前に控えていました。
そのころ、担任の先生が、
ふたたびほぼ日にメールをくださいました。 - そのメールには、6年生のみなさんが、
糸井との対話をとおして考えたことや、
見えてきた将来なりたい姿について、
発表会をすると書かれていました。
そして、そのようすを糸井とほぼ日乗組員に
見てもらえたら、とお誘いの言葉もありました。
糸井も乗組員たちも、
「もちろん、ぜひ行きたいです」と、
白川小学校を再訪することを決めました。 - 先生のメールからは、
「子どもたちの成長した姿を見てほしい」
との思いが、静かに強く伝わってきました。
4か月のあいだに、
生徒さんたちはどんなことを考え、
どんなふうに変化したのだろう?
わくわくしながら、発表会当日、
私たちは赤城へ向かいました。 - 今回は、その発表会のようすを
まとめてお伝えいたします。 - 私たちがまず到着したのは白川小学校の駐車場です。
私たちが「どこから校舎に入るんだろう」と
ワタワタしていると、
6年生のみなさんがやってきて、
案内してくれました。
そして、大きな声で
「こんにちは!」とあいさつをしてくれました。
- 校長室で出迎えてくださった校長先生によると、
今回の発表会は案内や進行も先生たちではなく、
すべて6年生のみなさんがするとのこと。
11月の糸井との対話を受けて、
「働くのは不安なことばかりではない。
自分は働くことによってなにができるかな」と
考えてきたことを、それぞれの言葉で
プレゼンテーションするのです。 - 糸井は
「初めて6年生のみなさんに会ったときは、
ぼくはさんざん『声が小さいよ』と言ったけど、
きょうはあいさつの声がとても大きかったです。
もう、そこから変わっていましたね」
と、感心していました。
校長先生も
「そうなんですよ。気づいていただけましたか」
と、顔をほころばせました。
生徒のみなさんが、あの日糸井から聞いたことを
しっかりと自分のものにして、
実践していることがさっそくわかりました。
- そこへ、6年生のみなさんが、
校長室まで迎えに来てくれました。
発表会の準備ができたようです。
- 生徒さんのあとに続いて、体育館へ。
見学をする、3、4、5年生のみなさんも
拍手で出迎えてくれました。
- 6年生代表のAさんがマイクをとり、
「はじめの言葉」を述べます。
- 「本日はお忙しいなか、
白川小学校にお越しいただき
まことにありがとうございます。
これから『わくわくライフプラン』の
発表会を始めます。
私たちはこの1年間、糸井さまをはじめ、
多くの大人の方との交流を通して、
自分の将来について考えてきました。
わくわくライフプランは、
私たちが考えた将来の夢や理想の生き方、
働き方をまとめたものです。
私たちの思いを、糸井さまとの約束通り、
大きな声で伝えますので、
どうぞ最後までお聞きください」 - 「相手に届く声で」という糸井の言葉が、ここでも!
発表への期待がさらに高まります。 - トップバッターは、建築家を志すKさん。
建築家になるための目標と中間目標を
具体的に発表してくれました。
- 英語や数学の力をつける、二級建築士の資格をとる、
といった目標の先にある最終的な目標は、
「好きなことを追求し人助けをしたい」
ということでした。
家を建てたあとも、依頼者やその家族に寄り添い、
リフォームの依頼も受ける建築家になりたいと
話してくれました。
また、最後に、Kさんが実際に考えた
「障害のある人も住みやすい家」の間取りを
紹介してくれました。
リビング、ダイニング、キッチンを広く取り、
1階だけでも生活に必要なことのすべてが
完結するように工夫されています。 - 発表を聞いた糸井が、
ひとことコメントを述べました。
- 「もう、すばらしいですね。
とくに『家が建つまで』を
箇条書きにしていたところ。
『土木工事会社に依頼する』で終わったら
おしまいなんですけど、
そのあと、その家に住む方と付き合っていく
ということまでも、将来の計画に入っているのが、
住む側の人にとってとてもありがたいと思います。
家や人と長く付き合っていくことを前提に
『家を建てる』ということを考えているのが、
すばらしかったです。
ぜひがんばって、実現してください。」 - 次に発表したのは、
土木作業員を目指すIさんです。
建設業をなさっているお祖父さんが、
工事をしたり設計図をつくったりしているのを見て、
「かっこいい」と思ったのがきっかけです。
- 土木作業員になるには、
体力やメンタルの力が重要であること、
これからの自分に必要なのは、
チームで仕事をするための
コミュニケーション能力だと話してくれました。
理想の働き方は、定時に退社すること。
そしてお給料が上がるように、
人の上に立ちみんなをまとめる人に
なってみたいとのことです。
- 糸井
「Iさんは、自分のやりたい仕事が近くにあって、
よく見えてるということがよくわかりました。
遠くのものを想像しているんじゃなくて、
『土木作業員ってこういう仕事をしてるんだ』
と見ているから、すごくリアリティがありました。
だから、まだ力は少ないかもしれないけど、
いまからでも作業員さんの真似ごとくらいは
できちゃいそうじゃないですか。
Iさんはきっと『本当にやれるぞ』という自信が
心の奥にあって、
『できる』を前提として自分の夢を考えているのが、
すばらしいです。
夢って、遠くにあるものじゃなくて、
近くに引き寄せるものだと思います。
応援してます。
きっとなれるから、楽しみにしてます。」 - 次に、交流会の際、糸井に
「なにかを続けることが苦手です。
どうしたら糸井さんみたいに、
コラムを20年以上書き続けることが
できるのですか」と質問した、Yさん。
- 以前は「まわりの働いている人は
あまり楽しそうではない」
「働くのは嫌だ。仕事しないでお金が欲しい」
と考えていたそうです。
しかし、糸井からの
「なにかを続けることが苦手なら、
そのことを楽しそうにやっている人を見つけてみたら
どうだろう」というアドバイスを受け、
「野球を楽しそうにやっている人」を見つけて、
ストレッチを続けられるようになったといいます。
そこで考えた理想の仕事の条件は
「楽しく働きたい。怒られない。
お金がたくさん欲しい。野球がしたい。
休日がある」ということ。
その理想をもとに「プロ野球選手」を目指そうと、
群馬ダイヤモンドペガサスの髙橋主樹選手に
インタビューしました。
髙橋選手から学んだ、プロになるために必要なことを
身につけられるよう努力し、
将来はWBCの舞台に立てるようにがんばる、と
決意を示してくれました。
- 糸井
「Yさんは、自分っていうものをよく知ってるなと
思いました。きれいごとを言わないで、
いまの自分がどう思っているか、
全部正直に本当のことを書いてた。
それが、まずはとてもすばらしいと思います。
『じゃあ、こんな自分はどうしたらいいんだろう』
と一所懸命考えて、髙橋選手という
いいモデルを見つけたんですね。
髙橋選手は、たぶん、Yさんから見たら
ずいぶん大人だと思うけど、
きっとすごく正直に答えてくれたんだと思います。
そんなモデルを見つけて、
自分が髙橋選手みたいになるにはどうしたらいいかを
聞いて、答えてもらって、
具体的な方法が見えてきた時点で、
山に登るための一歩がもう始まっています。
30歳になっても、40歳になっても、
遠くの山に登るために具体的になにをしたらいいか
わからない、と、人間は案外思ってるんですよ。
でも、Yさんはすでにだいぶ
自分の進む景色が見えているから、
その景色を大切なものとして、
これからもっと細かいところを描いたり、
もっと大きいところに広げていったり
できるといいなと思います。
一所懸命野球を見て、一所懸命練習してください。
元気でいないといけないので、
練習のしすぎには注意ね。がんばりましょう。」 - 続いて、自身がよくおもちゃを買ったり、
使えなくなったおもちゃを売ったりしている
おもちゃ屋さんの店員さんになりたいという
Hさんの発表です。
- 古くなったものをほかの人に使ってもらえると
うれしいので、そのおもちゃ屋さんで
働きたいとのことです。
でも、「楽しいことがなかったら」
「もしやりたい仕事に就けなかったら」と
不安に思っていたといいます。
そこで、担任の先生、カメラマンさん、
糸井に、仕事についてインタビューし、
「仕事は楽しいことと組み合わせる」
「思いやりがなければ信用されない」
「大きな声を出す」
「仕事の楽しさはやったあとにわかる」
といったことを学びました。
楽しく働き、楽しく生きるために、
また落ち込んでもすぐ立ち上がれるように、
将来、後悔しないように、
いろいろなことに挑戦していきたいと
話してくれました。
- 糸井
「正直に自分と向き合っているのが、
とてもよかったです。
どう言ったらいいかな、『その通り』と思った。
ぼくも心配性な子だったので、
気持ちがよくわかるんです。
でも、もうちょっと心配しなくてもいいよ。
心配したり、緊張したりするのは
『もっとうまくやれるんじゃないかな』と
思っているってことだから、
『失敗してもいい』と思ったほうがいい。
いまのままのあなたはじゅうぶんすばらしいから。
そのまんまで100点だから。
あとは、20点、30点と加えていくだけなので、
『自分は50点だったらどうしよう』なんて
考えなくていいです。
『楽しくやるにはどうしたらいいかな』と考える
暇もなく楽しくやるのがいちばんいいから、
友だちと遊んだり、好きなおもちゃで遊んだり
しているときの楽しさを、記録しておくのが
いいかもしれません。
自分が楽しいと思ったことを書いておくと、
『ぼくはこれが好きなんだ』と思い出して、
いつでも励みにできるから。
そういうことをやると、
もっと前に進めると思います。がんばろう。」
(発表会は明日へ続きます)
2026-04-20-MON