群馬県、赤城山のふもとに、
白川小学校という学校があります。
卒業を控えた6年生のみなさんはいま、
「楽しく働くには」をテーマに、
生き方を考えるスタートラインに立っています。
そんな6年生を受け持つ先生が、糸井を
「楽しく働いている大人のモデル」として、
授業に招いてくださりました。
そこで、赤城山の頂上にある「ほぼの駅 AKAGI」で
ストーブを囲み、12名の6年生と糸井が話すことに。
たくさんの未来のいつかに思い出してほしい、
一歩目を一緒に踏み出しました。

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【番外編第2回】白川小学校6年生のみなさんの発表会におじゃましました。

2025年11月におこなわれた、
糸井と白川小学校6年生との交流会から4か月。
交流会での会話や、自分たちで調べたことをもとに、
6年生のみなさんが発表会をひらきました。
糸井とほぼ日乗組員も、そのようすを
見せてもらいました。
6年生のみなさんが次々と、
将来について考えたことや決意を
話してくれました。
前回からの続きをお届けします。
サッカー選手を目指すIさんの発表です。
交流会では、糸井に
「失敗をどう乗り越えるか」を質問しました。

プロゴルファーさん、パティシエさん、糸井に
インタビューをして、
「本当に強いということは、
いろいろな人に感謝をすること」
「失敗したときには、
『みんな失敗するんだ』という気持ちで
いるのがいい」
「思いついたことを頭の引き出しに入れておき、
あとから繋ぎ合わせて
新しいものをつくり出していく」
といったことを学びました。
また、元サッカー日本代表の
細貝萌(はじめ)さんにもインタビューし、
試合前は消化のよいものや
エネルギーのもとになるものを食べて、
試合に集中できるようにすること、
よいプレーを想像しながら練習することなどを
いっそう心がけるようになりました。
そして「次のワールドカップでは、
最年少で出場して優勝します。
応援よろしくお願いします。」と
宣言してくれました。

糸井
「サッカーをとっても一所懸命やっているんですね。
サッカーが『スポーツ』以上のもの、
人生になってるんだね。
そんなにひとつのものを好きになれることが、
羨ましかったです。
発表のなかには、食べもののこともたくさん
あったけど、じつは食べもののことって、
お母さんやお父さんの協力が
すごく必要なんですよね。
なので、感謝する相手のなかに、
お母さんやお父さんもぜひ入れてほしいです。
サッカー日本代表の森保監督とお会いしたとき、
いちばん印象深かったのは、
『森保さんは誰よりもサッカーのファンなんだ』
ということでした。
サッカーが大好きで、自分の集めた選手たちや、
集めきれなかった選手たちのことが大好きで、
ファンとしての心がベースにある。
それが森保監督の、ある種の謙虚さや落ち着きを
生み出しているんだと思いました。
みんな『勝たなきゃ』と
プレッシャーを感じてるなかで、
森保監督はそれ以上にサッカーが大好きなんだよ。
そんな気持ちがある人が監督をやっている
サッカー界はすばらしいなと思いましたので、
ぜひ、日本代表のチームに入ってください。
がんばって。」
続いて、文房具を集めるのが好きで、
将来は文房具メーカーのPILOTに入りたいという、
Eさんです。

実際にPILOTの方にインタビューをして、
「文房具をつくるときは、
使うお客さんのことをよく考えながらつくる」
といったことを教えてもらったそうです。
画像や動画をたくさん使い、
文房具メーカーの「企画」「生産」「営業」
という仕事をわかりやすく説明しました。
発表の最後には、「糸井さんの話を聞いて、
ほぼ日もとてもいい会社だと思ったので、
ぼくが採用試験を受けたら採用お願いします。」と
言ってくれました。

糸井
「何年後かわからないけど、
ぜひほぼ日を受けてください(笑)。
大好きな文房具のことを話しているのを聞いて、
文房具というものも、サッカーや建築と同じように
考えられるものなんだと、
『職業っておもしろいな』と思いました。
なにより印象的だったのは、
プレゼンテーションの資料を、
見る人が喜ぶようにつくっていることです。
猫の画像を入れたり、
ちょっと愛嬌のある画面にしたりね。
その気持ちは、文房具をつくるのにも、
野球するにもサッカーをするにも、
全部に必要な気持ちです。
このことにあなたはもうすでに気づいてるから、
その気持ちを生かしていけば、
きっといい文房具がつくれるし、
いいところで働けると思います。
思いついたアイディアや
『こうしたらいいんじゃないかな』と考えたことは、
書いておくといいよ。
きっと実現すると思います。」
次に発表したのは、Nさん。
交流会では、糸井に
「困難の乗り越え方」を質問し、
「心配するな」と言われました。
そんなNさんの夢は、県知事になることでした。

群馬県の山本一太知事にインタビューをして、
個性を尊重することと誠実さの重要性を学びました。
政治家になってやりたいことは
「ほぼの駅のような建物を建てて、
赤城山を富士山ぐらい有名にすること」
「福祉を充実させて、
いろいろな人を幸せにすること」
「3Rを徹底し、環境に配慮した街づくり」。
修学旅行で会った政治家さんをモデルに、
人とたくさん話して、自分を笑顔にし、
人を大事にしていきたいと話してくれました。

糸井
「政治家という仕事って、
本当に他人のためにある仕事なんですよね。
いままでの発表では、みなさん
『趣味や好きなことを生かして働く』と、
わりにのびのびと考えることができたんだけど、
政治家という立場になると、そうはいかない。
自分のことを差し置いてみんなのために
生きなきゃならないし、
そうでないことを考えていると、
信頼される政治家になれません。
心から『どうしたらみんなが幸せになるだろう』と
考えなければならない仕事だと思うので、
自分をコントロールしながら、なおかつ
人のために働くことを喜びとするのが求められます。
そんな難しい山を、小学校6年生の段階で、
あえて選んで登り始めた人がいるんだということに、
感心しました。
モデルになる方が
すでにいらっしゃるということなので、
その方をよく見ていれば、
学べることがたくさんあると思います。
文字になっていないことも
たくさん学べると思います。
‥‥ちょっとだけ意地悪しますけど、
マスクを外して笑顔を見せてください。
こういうことなんです。
『自分を笑顔にする』と言ったら、
実際に笑顔を見せなきゃいけない。
それが政治家の、たぶん仕事なんです。
がんばろう。」
続いて、ネイリストを目指すHさんの発表です。
お母さんがネイルをしているのを見たり、
ネイリストさんの動画を見たりして、
興味を持ったそうです。

パティシエの方に「自分のお店をひらくにあたって
大変だったことは、お客さんを迎える場所の
雰囲気づくり」と教わりました。
また、ネイリストになるには、
ネイルスクールや美容専門学校へ行く道があること、
ネイリストとして働くメリットや大変なことを調べ、
発表してくれました。
接客業の大変さを踏まえ、
お客さんへの気遣いのできるネイリストに
なりたいと締めくくりました。

糸井
「もう、すでにネイリストになった気持ちでいるのが
すばらしいと思いました。
見本となる人が近くにいて、
目指す職業のいいことも悪いことも
全部見えているので、
実際にはまだ仕事はしていないけど、
もう始めているような気持ちでいるのが
伝わってきました。
これまでに話したことと重なりますが、
自分はなにをきれいだと思ったか、
なにをかわいいと思ったか、
なにを好きだ、素敵だと思ったかを
ぜひ覚えておいてください。
自分の心が動いて『いいな』と思うものや、
ほかのみんなが『いいな』と言っているものが
世界にはいっぱいあります。
たとえば、雪が降ってきた最初のとき、
ふわーっと飛んでいる雪を見て
『やだな』と思ったのか、それとも
『今年の雪が始まった』と思ったのか。
心って、必ずなにか動いてるんです。
そういう経験をたくさん持っている人は
いい作品がつくれます。
とくに、ネイリストさんは、
人が美しさを求めてやってくる仕事ですから、
美しさに対して敬意があるとお客さんもつきますし、
喜ばれます。
それから、ネイルの学校に行くのもいいけれど、
ほんとはきょうから練習を始めてもいいんだよ。
『できる』ということを前提にして、
『誰よりも素敵なネイリストになりたい』って
欲張りになったほうがいいかもしれない。
がんばってください。」
そして最後に、司会をつとめていた
Aさんの発表です。

「私はまだ具体的な将来の夢はありません。
なぜかというと、遠い未来のことを考えるのが
苦手だからです。」
そう話し出したAさんは、11月の交流会の際、
糸井に「いろいろな仕事に共通して
必要な力はなにか」を聞きました。
その質問に対して、糸井が「思いやり」と答え、
過去の話などを交えながら話したことを、
「糸井さんは、小学生の私たちにも
わかりやすく説明しようと
意識しているように見えた。
わかりやすく説明するように意識すること自体が
思いやりにつながるんだと感じた」
と話してくれました。
また、インタビューしたカメラマンさんの
「仕事の楽しさはやったあとにわかる」
という言葉や、パティシエさんの
「楽しくないと続けられない」という言葉から、
自分にとって楽しいと思える仕事を見つけたい、
絵が大好きだからイラストレーターになりたいと、
少し思うようになったそうです。
将来の夢は無理にいま決めなくてもいいこと、
いまの趣味を続けることも
将来のためになる可能性があることを覚えておき、
焦らずに自分のなりたい職業を探していきたいと
発表を終えました。

糸井
「もしかしたら、昔の自分にいちばん近いのは
あなたかもしれません。
ぼくも、なにになりたいかわかってなかったから。
きょうのように、みんなが『なにになりたい』と
発表するとき、自分は思いつかなくて、
いつも苦しまぎれに話していました。
『なにになるって決めなきゃいけないのかな、
決まってる人はいいな』と思っていたんだけど、
なんとなく毎日楽しく生きていて、
友だちと遊ぶのが好きだったので、
一所懸命遊んでました。
ぼくは『人生あみだくじ説』という説を
持ってるんです。
こっちに曲がったおかげでこの人に会ったとか、
あっちに曲がったおかげでなにかが始まったとか、
そういうことの連続なんです。
角を曲がっていくうちに『もっとここにいたいな』
と思えるところにとどまったり、
新しく知り合った人となにかを始めたり、
そういうことがたくさんあります。
本当に、無理に決めなくても、
いちばんいいところに向かうと思います。
『やろうかな』って思うことができたら、
始めちゃったらいいです。
もうすでに絵を描いているんですよね。
発表のなかに出てきた絵からも、
いろいろ考えて楽しんで描いていることが
よくわかりました。
そのまま楽しんで続けていったら、
先になにかあるかもしれないから、
明るく元気にやっていってください。
きっと楽しいことがあります。」
6年生全員の発表が終わり、
糸井が総評を求められました。

糸井
「総評か、どうしようかな。
あの、みんな、無理することないからね。
ぼくたち、じつはきょう『仕事』っていう名目で
ここに来てるんですよ。
でも、これ仕事に見えないでしょ。
こういう仕事をしてもいい会社もあるんだよ。
みんながいま想像していることのなかに
全部があるわけじゃなくて、
これから知ることのなかに、きっと
おもしろいことがいっぱいあります。
だから、いま、こうやって元気でここにいるだけで、
100点だから。全然もうこれでオッケー。
あとはおまけだよ。
おまけがちょっと大きくなると、
『自分、昔よりちょっといいな』とか
『なんだか上手になったな』とか、
『あの夢に近づいたな』とか、
『こうするはずだったけど、やっぱりやめた』とか、
いろいろ出てきます。

ぼくは漫画家になろうとしたことがあったんですが、
大人になってから、ものすごく上手な人たちが
いっぱいいるのを知って、やめたんです。
でも、漫画家になろうとしていたときに
考えていたこと、思いついたおもしろいことは、
そのまま自分のいまの仕事になっています。
たとえば、目指していたラグビー選手には
なれなくても、ラグビーならではの
助け合い方やたたかい方を
自分の仕事で生かしている人もいっぱいいます。
反対に、僕自身、作文は嫌いだったのに、
いま『言葉のプロ』と紹介されることもあります。
好きでやっていたことがなににつながるか、
嫌いだったはずのことがどう仕事になるか、
ということは自分でもわからないんです。
だから、まず、いまの時点で満点なんです。
みんな勇気を出して手を上げたし、
発表してくれたし、11月からの短い期間に
いろいろ考えてくれただけでも、
すばらしいことです。
いまの自分は素敵なんだ、素晴らしいんだって、
認めてあげてください。
そこからおまけがどんどん増えていくから。
そこでまた新しいやりたいことが
わかるかもしれないし、
新しい友だちに刺激されて
違う道に進んでいくかもしれない。
それを楽しみにしてください。
先のことを楽しみにできるという力が、
いちばん必要です。

じつは、コンピューターは『明日が来る』って
断言できないんですよね。
『おおむね明日が来るということになってます』
という言い方しかできない。
でも、みんなは明日起きて学校に行くとか、
いつ試合があるとか、想像してるでしょう。
『明日が、未来がある』って考えるのは、
人間の力なんだよ。
人間は明日が来るって信じてるんだ。
そうやって、明日を楽しみにしている子どもたちを
見ていると、大人たちは嬉しいです。
明日が楽しみな子どもがいっぱい増えると
いいなと思っています。
もう一回言うと、いま、みなさんは100点です。
オッケーです。その上で、おまけがどんどん
増えてきて、自分が変わっていきます。
その変わる自分は未来にいます。
未来っていうものを信じて生きてください。
大人はそれが見たくてみんなを育てています。
‥‥これが総評でいいかな。
ありがとうございました。」

最後に、11月の交流会の日に
体調不良で早退しなければならなくなってしまった
Kさんが、糸井の前に立ちました。

Kさん
「交流会の日は、37度9分と
すごい熱があったんですけど、
帰ったら熱が下がっていて、
早退したあとの1時間ぐらい、
『あの熱はなんだったんだろう』と
ずっと考えてました。
こうやって、もう一度糸井さんと
会う機会があったことは、すごくうれしいです。
ぼくらは、ちっちゃくて13人しかいない
学級ですけど、2、30年後には、このなかに
サッカーのワールドカップに出る選手や、
有名なイラストレーターが
いるといいなって思います。
糸井さんにもそう願ってもらえたらうれしいです。
きょうは本当にありがとうございました。」

▲6年生のみなさんから糸井へお手紙をいただきました。 ▲6年生のみなさんから糸井へお手紙をいただきました。

こうして、白川小学校6年生のみなさんの
「わくわくライフプラン」の発表会は
おひらきとなりました。
帰りの道中も、糸井は「小学生ってすごいな」と、
ずっと感心していました。
校長先生が
「子どもたちが、『思いやりを大事にしよう』
『声を大きくしよう』と考えるだけじゃなくて、
実際に行動に移せたのがすごくよかった」
とおっしゃっていたとおり、
生徒さんたちがそれぞれ自分なりに考えて
発表していたことがとても印象的でした。
白川小学校のみなさんが、楽しく、元気に、
自分が100点だということを忘れずに
人生を歩んでいけるよう、
ほぼ日はずっと応援しています。

(終わります。お読みいただき、ありがとうございました。)

2026-04-21-TUE

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