群馬県、赤城山のふもとに、
白川小学校という学校があります。
卒業を控えた6年生のみなさんはいま、
「楽しく働くには」をテーマに、
生き方を考えるスタートラインに立っています。
そんな6年生を受け持つ先生が、糸井を
「楽しく働いている大人のモデル」として、
授業に招いてくださりました。
そこで、赤城山の頂上にある「ほぼの駅 AKAGI」で
ストーブを囲み、12名の6年生と糸井が話すことに。
たくさんの未来のいつかに思い出してほしい、
一歩目を一緒に踏み出しました。

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【第6回】思い出をつくるほうへ。

先生
きょう早退してしまったKさんから
糸井さんへの質問を、代わりにさせていただきます。
彼は、将来の選択肢のなかに「会社を起業したい」
という気持ちが少しあるみたいで。
ほぼ日さんならではの働き方やシステムがあったら
教えていただきたいと話していました。
糸井
それは、いっぱいあります。
ほぼ日のおおもとのもとは、
「大勢が集まりたくなる場所をつくりたい」
という気持ちでした。
経営をしたいと思ってほぼ日を始めたんじゃなくて、
場をつくりたくて始めたんです。

糸井が話しているのを隣で先生が真剣に聞いている。

糸井
よく「みんなが喜んで来てくれる場所をつくったら、
集まった人のために自動販売機を置くだけでも仕事になる」
という言い方をしてきました。
実際には、自動販売機がTシャツや手帳になって、
だんだんとほぼ日の経済が回っていくようになりました。
『すいません、ほぼ日の経営。』(日経BP)っていう本には、
いまの質問に対する答えも載っていると思うので、
よろしければ、それを伝えてください。
先生
わかりました。ありがとうございます。
そろそろ時間になるんですけど、
「もう1個聞きたいよ」っていう人は、
手を挙げてください。
おっ、ふたりかな。
糸井
はい。じゃあ、ふたり片づけちゃおう。
一同
(笑)

次に質問するAさんが背筋を伸ばして座っている。

Aさん
Kくんが、もうひとつ質問があると言っていて、
代わりにききたいなと思ったので、ききます。
小6とか、幼いころにやっていたことで、
いまの仕事とか生活とかに生きていることは
なんですか。
糸井
ああ‥‥。これは長くもしゃべれるけど、
ものすごく短く言うと、
毎日友達と遊んでたことです。
学校が終わったら、まず家に帰って、鞄を置いて、
待ち合わせをして。
小学校の校庭が多かったけど、河原や公園もあった。
いろんなところで待ち合わせして、とにかく毎日、
寒くても暑くても友達と遊んでました。
それがすべてです。
さっきも自慢そうに言ったけど、
ぼくは勉強ができたんですよ(笑)。
勉強のできる子で、
そんなに遊びに一所懸命になる子は
近所では珍しかったらしくて、
「あの子は遊んでばかりいる」
とも言われたけど、遊びが結局、
いちばん大事だったと思う。
で、大人になってからも同じことをしてます。
ほかにもいろいろ言えば言えるんでしょうけど、
でも、遊んでいたことにまさる、
役に立ったことはないです。
遊んでください。

次に質問するHさんが身を乗り出している。

先生
じゃあ、最後の質問になるけど、
Hさん、お願いします。
Hさん
年をとってもできることはありますか。
糸井
なんでもできるよ。
一同
(笑)

糸井とHさんが笑い合っている。

糸井
いまから年とるつもりなのか。
だいぶ時間かかるぞ。
一同
(大笑い)
糸井
これからのあなたくらい、おれも生きてみたいね。
でも、年とってからできること、いっぱいあるよ。

糸井とHさんが笑い合っている。Hさんは少し照れた感じ。

糸井
先生からは大丈夫ですか。
先生
私も、聞きたいことがあったんですけど‥‥
もしかしたら、ここまでの糸井さんのお話のなかに
答えがあったかもしれません。
糸井
遠慮なく、どうぞ。
先生
じゃあ、いいですか。
自分はいま「時間の使い方ってむずかしいなあ」
ということに悩んでいます。
時間には限りがあるけれども、
仕事には限りがないですから。
糸井
そうですね。
先生
限りなく出てくる「やりたいこと」と、
時間の限界とに、
どう折り合いをつけたらいいのでしょうか。
先ほどの、介護士さんを目指している
Sさんの質問へのお答えを思い返すと、
「自分に対する思いやり」と、
「人に対する思いやり」のバランスをとることで
折り合いをつけられるのかなと思うのですが。
糸井さんはどのような考えをお持ちか、
お聞きしたいです。

先生が話している。糸井は耳を傾けている。

糸井
そうですね、おっしゃるとおり、
正解は「自分と人に対する思いやりの
バランスをとる」ということなんでしょうね。
でも、正直なところ、ぼく自身が
折り合いをつけられていません。
最良の時間の使い方を教えてくれる本は
いっぱいありますけど、
それでもできないから、
絶えず「時間の使い方」の本が出てるんですよね。
ですから、どうしたって、
「うまく時間を使えた」っていう人なんか
いないんですよね、たぶん。
最近、ほぼ日では「ほぼ日手帳アプリ」
というアプリを出したんです。
そのアプリのキャッチフレーズをぼくがつくって‥‥
ぼくはいま、コピーライターじゃないんで、
この仕事にはギャラが出ないんですけど。
一同
(笑)
糸井
タダの仕事のなかでは、
最良の仕事をしています(笑)。
で、「生きてるって、思い出をつくること。」
っていうキャッチフレーズをつくったんですよ。
これは自分で「いいなあ」と思ったんです。
どうしてかというと、「あるイベントに行こうかな、
めんどうくさいからやめようかな」と、
ソファーに横たわっていたときに、
「生きてるって、思い出をつくること。」って、
自分のつくったキャッチフレーズを思い出して、
「あ、行こう」と思ったんですよ。
「行ったぶんだけ、生きてるっていうことに
さわれるな」って。
そして、行ってみたら、本当によかったんですよ。
そのことがあって、
「思い出をつくろうと思ってつくってもいいんだ。
ちょっと無理してつくってもいいんじゃないか」
と感じたんです。
きょうの話に出た
「人の役に立つ」ことにしても、
「思いやり」にしても、
ちょっと他人になにかしてあげるだけで、
自分も気持ちがいいし、
小さい思い出ができるじゃないですか。

糸井が話している。先生は糸井のほうを向いて聞いている。

糸井
そんなことを思ってたら、
体が不自由で、ずっとベッドの上で暮らしている方の
ドキュメンタリーを見る機会がありました。
じつは、「生きてるって、思い出をつくること。」
というキャッチフレーズつくったときから、
「ずっと病床にいる人は、
このキャッチフレーズを聞いてどう思うだろう」と
心配な気持ちがあったんです。
でも、ドキュメンタリーのなかで、
患者さんがお医者さんに
「なにか、したいことはありますか」ときかれて、
「うーん、行けたら近くのスーパーに
行ってみたい」と答えたんです。
で、みんなでその人の車イスを押して
スーパーマーケットに行ったんです。
そうしたら、それだけで、
患者さんの顔が変わったんですよ。
「ずっと見ている天井や壁だけじゃないなにかが、
自分にあるんだ」と感じられたこと、
それこそ「思い出」が、翌日にも翌々日にも残って、
彼の人生をつくっていくんですよね。
そういうふうに感じて、
「自分も『生きてるって、思い出をつくること。』
というキャッチフレーズに
動かされるほうがいいな」と思ったんです。
読みかけの本があったら、
読んだぶんだけ思い出をつくれるし、
読まずに置いてあるだけでも
なにかの思い出にはなりますから。
だから、時間の使い方を考えるとき、
「思い出をつくる」という軸を
ひとつ入れてもいいかもしれません。
そんなふうに考えることに、
ぼくはもう決めちゃいました。
先生
ありがとうございます。

糸井がほほえんでいる。先生も笑顔で聞いている。生徒さんたちも糸井と先生のほうを向いて聞いている。

糸井
みんな、
普段の授業より長い時間座らせてしまって、
大丈夫だったかな。
生徒さん
大丈夫です。
糸井
おれ、声、でかいだろ? 
みんな、真似しろ。
一同
(笑)
生徒さん
はい。
糸井
歌を歌うときとか、声は大きくなるの? 
先生
歌はみんな、きれいに歌います。
糸井
ああ、そう。いいよ、でかければ。
先生
はははは。
じゃあ、お礼を言いましょう。
大きな声で言いましょうね。
Hさん、号令をお願いします。
Hさん
ありがとうございました。礼。

輪になって座った生徒さんたちと糸井が頭を下げている。

糸井
こちらこそありがとうございました。
一同
(拍手)
ほぼ日スタッフ
では、いま、ソフトクリームを用意しているので、
みんな、順番にカウンターから受け取ってください。
糸井
ここのソフトクリームは、おいしいよぉ。

生徒さんたちが「ほぼの駅AKAGI」の売店のカウンターでソフトクリームを待って列をつくっている。

女子生徒さんがふたりで並んでソフトクリームを食べている。

男子生徒さんが6人並んでソフトクリームを食べている。

糸井が白川小学校のみなさんに贈った色紙。「白川小学校のみなさんへ やさしく、つよく、おもしろく。糸井重里 2025・11・13」と書いてある。

(終わります。お読みいただき、ありがとうございました。)

2026-01-26-MON

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