群馬県、赤城山のふもとに、
白川小学校という学校があります。
卒業を控えた6年生のみなさんはいま、
「楽しく働くには」をテーマに、
生き方を考えるスタートラインに立っています。
そんな6年生を受け持つ先生が、糸井を
「楽しく働いている大人のモデル」として、
授業に招いてくださりました。
そこで、赤城山の頂上にある「ほぼの駅 AKAGI」で
ストーブを囲み、12名の6年生と糸井が話すことに。
たくさんの未来のいつかに思い出してほしい、
一歩目を一緒に踏み出しました。

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【第5回】自分も思いやってください。

先生
Sさん、聞いてみますか。どうぞ。

Sさん
私は将来、介護士になりたいんですけど、
人の役に立つためにはどうすればいいですか。
糸井
ああ‥‥介護士さんか。
ぼくは「本当にいてくれてありがとう」
と思っている職業がものすごくあるんですが、
介護士さんはそのひとりです。
毎日、自分を維持しながら
人の役に立つ仕事を続けてる人を、
ぼくはものすごく尊敬しています。
そんな存在になりたいっていう
小学生の子がいるだけで、
すごくうれしいです。
「どうしたらいいですか」というと、
ぼくはほんとのこと言うとわかんないんですけど、
最初の質問の答えに戻るような気がするんです。
やっぱり「思いやり」なんですよね。
さらに、人を思いやることが仕事の人にとって
いちばん大事なのは、自分もその「人」のなかに
入れてあげること。
「自分に対する思いやり」っていうのが、
誰しも欠けがちなんだと思うんですよ。
「人の役に立つにはどうしたらいいですか」
っていう質問の答えになってるかどうか
わかんないけど、
「なんか、自分を思いやれって言われたんだよね」
くらいでいいから、ちょっと覚えておいてほしいな。

糸井
小学校6年生のとき、
担任の先生が、ぼくにいろんな用事を
言いつけてたんですよ。
で、怒られる回数も、ほめられる回数も
ものすごく多かったんです。
卒業してからも「遊びにおいで」って言われて、
よく先生のところに遊びに行きました。
なんだかすごく大事にされてる気がして、
ぼくも先生のことが好きだったんですよね。
ずーっと時間が経って、
ぼくがすっかりおじいさんになってから、
やっとわかったことがあるんです。
小学生のころ、
ぼくの家はわりと複雑な事情のある家だったので、
たぶん、先生はそのことを
心配してくれてたんですよ。
一般的な、お父さんがいて、お母さんがいる
幸せな家庭とはちょっと違うところにいたぼくを
思いやってくれていたんだなと。
「そこまで考えてくれていた人がいたんだ」
と思うだけで、ものすごく、なんていうんだろう、
社会に対するうれしさがわいてきました。
「社会なんて、おれの味方じゃない」
と思う時期だってあるかもしれないけど、
「みんなが案外、
自分のことを大事にしてくれてるんだ」
ってわかるときが来るんです。
そんな社会のなかで、介護や看護のような、
人を支える仕事の人たち自身が
喜びを感じながら働けるようになると
いいなあと思います。
なので、「人の役に立とうとするなら、
自分も思いやってください」っていうのは、
ちょっと言っておきたいです。

糸井
‥‥なんか、えらそうなことばっかり
言ってる気がするね。
ぼくは、普段は
こんなちゃんとした人じゃないんだよ。
一同
(笑)

Kさん
糸井さんは転職したいと思ったことはないんですか。
糸井
転職? 
仕事、一回もしたいと思ったことないんですよ。
先生
あはははは。
糸井
みんな、大人たちが意欲的に、
「これはこうするんだ」とか「こうやるんだ」と
考えてると思っているかもしれないですが、
本当はもっと、もっとぼんやりしたもんですよ。
昔、お見合い結婚というものがあって、
初めて会った人同士がお付き合いして、
結婚したりしたんです。
それって、お互いに最初から「大好きだ!」と
思って始まった関係じゃないですよね。
なのに、一生一緒にいたりする。
仕事も、お見合いの連続みたいなところがあって、
最初から「絶対これをやりたい!」と思って
始まるものばかりじゃないんです。
でも、始めると、ちょっとおもしろいんですよ。
だから、思いがけない仕事が急に降ってきても、
やりたければ自由に飛びつけるような仕事のしかたを、
ほぼ日はしています。
言ってしまえば、
毎日転職してるようなものかもしれない。
きょうここに来たのだって、
東京で普段している仕事をやらずに、
赤城に行こうと決めたからです。
そして、来てみたらみなさんに会えて、
やっぱり新しいおもしろいことがありました。
こんなふうに、
なにが起こるかわからないことに対して、
いつでも「オッケー」って向かっていけるような
仕事のやり方も、じつはあるんです。
だから、その日に遊びたかったら、
遊べばいいんだよ。
あとで「あのとき遊んでたおかげで、
いま大変なんだよ」っていう日が
来たとしても、そのとき対処すればいいんです。
いつ遊ぶかは、自分で決めたんだから。
ぼくは、こういう働き方が
自分に合ってたのかもしれないし、
仕事を自分に合うようにしてきたんだと思います。
あなたは、どんな仕事をしたいとか、あるんですか。
Kさん
ウエディングプランナーになりたいです。

糸井
はあーっ。結婚式のプランを、ああ‥‥。
いいね。楽しそうだね。
毎日どこかで結婚してるもんね、人はね。
まあ、なってもなんなくてもいいんだよ。
「絶対なる!」って夢を目指すのも、
それはそれでひとつの方法なんだけど、
「ウエディングプランナーになったら
楽しいだろうな」って楽しみにしてるあいだは全部、
もうなってるも同じだから。
そのあいだはお金はもらえないけど、
かせいでますよ、イメージをね。

(明日に続きます)

2026-01-25-SUN

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