群馬県、赤城山のふもとに、
白川小学校という学校があります。
卒業を控えた6年生のみなさんはいま、
「楽しく働くには」をテーマに、
生き方を考えるスタートラインに立っています。
そんな6年生を受け持つ先生が、糸井を
「楽しく働いている大人のモデル」として、
授業に招いてくださりました。
そこで、赤城山の頂上にある「ほぼの駅 AKAGI」で
ストーブを囲み、12名の6年生と糸井が話すことに。
たくさんの未来のいつかに思い出してほしい、
一歩目を一緒に踏み出しました。

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【第4回】手の感触はわからない。

先生
次、Kさん、聞きますか。
どうぞ。大きい声で。
Kさん
元気の秘訣はなんですか。
糸井
おれはね、本当は元気じゃないの。
一同
(笑)

白川小学校のみなさんと糸井が笑っている。

糸井
もうね、ひとりで家にいるときとか、
いまとは別人だよ。
お宅のお父さんもそうかもしれないけど(笑)、
家にいるときは全然元気じゃないです。
人といると、やっぱり、なんだろう‥‥
元気って、関係がつくるんじゃないかな。
さっきの、孔子の
「朋有り遠方より来たる、亦楽しからずや」
みたいに。
だって、こんな若い方々がさ、
この老人の話を聞いてくれるだけで
うれしいじゃない? 
それだけで元気になるんです、
本当は元気じゃないのに(笑)。
だから、元気の秘訣も気にしなくていいです。
一同
(笑)
糸井
「困難があったらどうしよう」と同じで、
元気じゃなくなったときのことを
考えなくていいからね。
生まれて生きてるだけで元気ですから。
あと、しいて言うなら、みんな、
少し声が小さいよね。
それをきょうから直そうよ。
バカみたいにでかい声出そうよ。
これから先、中学や高校に行ったり、
仕事したりするとき、
人はやっぱり声のでかいやつのほうを見るから。
バンバン声を出してる人のほうが、
「あいつと友だちになりたいな」と
思ってもらいやすい。
だから、「きょうから声をでかく」っていうのを、
この6年生の約束にしましょう。

次に質問する、白川小学校のHさんを先生が手で指し示している。

先生
まだ質問していない人、どうですか。
‥‥はい、Hさん、どうぞ。
Hさん
人と話すときに大切なことはなんですか。
糸井
さっきの約束の続きで言うと、
ちゃんと聞こえる声でしゃべること(笑)。
つまり、自分が話すっていうことは、
相手に自分のしゃべりたいことを渡すわけだから、
途中までしか近づかずに、
相手に取りに来させるのは不親切じゃない? 
だから、「届くように届ける」っていうことが、
まずは大事。
それから、相手も自分になにかを届けたいわけだから、
聞くためにも一所懸命になる。
これがいちばん基本的なことです。
いま、もしかしたらみんな
緊張しているかもしれないけど、
自分を硬くしちゃうと届かなくなるんですよ、
ボールが。つまり、しゃべりたい内容が。
でも、届かなかったら、
どんないいボールを投げても会話はできない。
だから、人と話すときには、
どんなつまんないことでも
届くボールを投げることと、
必ずキャッチするっていうことが大事です。
「聞く」のほうが、より大事かもしれないね。

糸井がHさんのほうを向いて、ものを手渡すジェスチャーをしている。

先生
ほかにはどうですか。
Eさん
‥‥はい。
先生
じゃあ、ぜひ大きい声で。

白川小学校のみなさんが糸井の話を聞いている。

Eさん
自分が考えたキャッチコピーとかが、
けっこう有名になったりしたときの感情は
どんな感じでしたか。
糸井
そうだね、キャッチコピーは、
「有名になれ」と思って書いていたので、
予定通りなんですよね(笑)。
だから、キャッチコピーの仕事は、
あまりワクワクしたりはしない。
仕事がちゃんとできたうれしさはあるけど、
「わあ、うれしい!」っていう感情はなかったな。
自分が作詞した曲がヒットして、
街なかの思わぬところで聴こえてきたりすると、
「おおーっ」って思ったけどね。
でも、たいしたことじゃないね。
他人がすごいことしたときのほうが、
自分がすごいことしたときよりも
喜びは大きいと思う。
自分のことって、やっぱり、
予想がついてしまうので。
熱測るときにさ、だいたい、
「たぶん熱あるな」と思って測るじゃない? 
だから、実際に38.5度の熱があっても
「やっぱりな」って感じだけど、
ほかの人が38.5度の熱を出してたら、
「うわぁーっ、大丈夫か!」ってなるでしょう。
それと同じようなことなんです。
ちょっと来てごらん。握手しようか。

質問したEさんと糸井が握手している。

糸井
おれの手の感触、わかるよね。
Eさん
はい。
糸井
はい、ありがとう。
つまり、ぼくの手の感触について、
あなたは感想を言えるんですよ。どうだった? 

質問したEさんが糸井の話を笑顔で聞いている。

Eさん
あたたかかったです。
糸井
あたたかかった? あとは、なんかある? 
「やわらかい」とか「硬い」とか。
Eさん
やわらかかったです。
糸井
あ、やわらかかった? そうなんだなあ。
一同
(笑)
糸井
ぼくは自分の手のあたたかさややわらかさを
感じてないんですよ。自分の手なんだけど。
相手は知ってるけど、僕は知らないんです。
一方で、あなたの手を握って、ぼくは
「なんと、思った以上に小さい」と思った。
でも、あなたは知らないよね、自分の手のことを。
っていうようなことで、キャッチコピーについても、
ほかの人が「いいなあ」って言ってくれるのが、
いちばん新鮮に喜べるんです。
自分の手の感触を教えてもらうのと同じで、
「ああ、そうなんだ。それはよかった」って。
みんなも、一回大ヒットとか飛ばして、
この気持ちを味わってほしいな。

白川小学校のみなさんが糸井の話を笑顔で聞いている。

(明日に続きます)

2026-01-24-SAT

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