
群馬県、赤城山のふもとに、
白川小学校という学校があります。
卒業を控えた6年生のみなさんはいま、
「楽しく働くには」をテーマに、
生き方を考えるスタートラインに立っています。
そんな6年生を受け持つ先生が、糸井を
「楽しく働いている大人のモデル」として、
授業に招いてくださりました。
そこで、赤城山の頂上にある「ほぼの駅 AKAGI」で
ストーブを囲み、12名の6年生と糸井が話すことに。
たくさんの未来のいつかに思い出してほしい、
一歩目を一緒に踏み出しました。
- 先生
- 次、Kさん、聞きますか。
どうぞ。大きい声で。
- Kさん
- 元気の秘訣はなんですか。
- 糸井
- おれはね、本当は元気じゃないの。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- もうね、ひとりで家にいるときとか、
いまとは別人だよ。
お宅のお父さんもそうかもしれないけど(笑)、
家にいるときは全然元気じゃないです。
人といると、やっぱり、なんだろう‥‥
元気って、関係がつくるんじゃないかな。
さっきの、孔子の
「朋有り遠方より来たる、亦楽しからずや」
みたいに。
だって、こんな若い方々がさ、
この老人の話を聞いてくれるだけで
うれしいじゃない?
それだけで元気になるんです、
本当は元気じゃないのに(笑)。
だから、元気の秘訣も気にしなくていいです。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- 「困難があったらどうしよう」と同じで、
元気じゃなくなったときのことを
考えなくていいからね。
生まれて生きてるだけで元気ですから。
あと、しいて言うなら、みんな、
少し声が小さいよね。
それをきょうから直そうよ。
バカみたいにでかい声出そうよ。
これから先、中学や高校に行ったり、
仕事したりするとき、
人はやっぱり声のでかいやつのほうを見るから。
バンバン声を出してる人のほうが、
「あいつと友だちになりたいな」と
思ってもらいやすい。
だから、「きょうから声をでかく」っていうのを、
この6年生の約束にしましょう。
- 先生
- まだ質問していない人、どうですか。
‥‥はい、Hさん、どうぞ。
- Hさん
- 人と話すときに大切なことはなんですか。
- 糸井
- さっきの約束の続きで言うと、
ちゃんと聞こえる声でしゃべること(笑)。
つまり、自分が話すっていうことは、
相手に自分のしゃべりたいことを渡すわけだから、
途中までしか近づかずに、
相手に取りに来させるのは不親切じゃない?
だから、「届くように届ける」っていうことが、
まずは大事。
それから、相手も自分になにかを届けたいわけだから、
聞くためにも一所懸命になる。
これがいちばん基本的なことです。 - いま、もしかしたらみんな
緊張しているかもしれないけど、
自分を硬くしちゃうと届かなくなるんですよ、
ボールが。つまり、しゃべりたい内容が。
でも、届かなかったら、
どんないいボールを投げても会話はできない。
だから、人と話すときには、
どんなつまんないことでも
届くボールを投げることと、
必ずキャッチするっていうことが大事です。
「聞く」のほうが、より大事かもしれないね。
- 先生
- ほかにはどうですか。
- Eさん
- ‥‥はい。
- 先生
- じゃあ、ぜひ大きい声で。
- Eさん
- 自分が考えたキャッチコピーとかが、
けっこう有名になったりしたときの感情は
どんな感じでしたか。
- 糸井
- そうだね、キャッチコピーは、
「有名になれ」と思って書いていたので、
予定通りなんですよね(笑)。
だから、キャッチコピーの仕事は、
あまりワクワクしたりはしない。
仕事がちゃんとできたうれしさはあるけど、
「わあ、うれしい!」っていう感情はなかったな。
自分が作詞した曲がヒットして、
街なかの思わぬところで聴こえてきたりすると、
「おおーっ」って思ったけどね。
でも、たいしたことじゃないね。 - 他人がすごいことしたときのほうが、
自分がすごいことしたときよりも
喜びは大きいと思う。
自分のことって、やっぱり、
予想がついてしまうので。
熱測るときにさ、だいたい、
「たぶん熱あるな」と思って測るじゃない?
だから、実際に38.5度の熱があっても
「やっぱりな」って感じだけど、
ほかの人が38.5度の熱を出してたら、
「うわぁーっ、大丈夫か!」ってなるでしょう。
それと同じようなことなんです。 - ちょっと来てごらん。握手しようか。
- 糸井
- おれの手の感触、わかるよね。
- Eさん
- はい。
- 糸井
- はい、ありがとう。
つまり、ぼくの手の感触について、
あなたは感想を言えるんですよ。どうだった?
- Eさん
- あたたかかったです。
- 糸井
- あたたかかった? あとは、なんかある?
「やわらかい」とか「硬い」とか。
- Eさん
- やわらかかったです。
- 糸井
- あ、やわらかかった? そうなんだなあ。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- ぼくは自分の手のあたたかさややわらかさを
感じてないんですよ。自分の手なんだけど。
相手は知ってるけど、僕は知らないんです。
一方で、あなたの手を握って、ぼくは
「なんと、思った以上に小さい」と思った。
でも、あなたは知らないよね、自分の手のことを。
っていうようなことで、キャッチコピーについても、
ほかの人が「いいなあ」って言ってくれるのが、
いちばん新鮮に喜べるんです。
自分の手の感触を教えてもらうのと同じで、
「ああ、そうなんだ。それはよかった」って。
みんなも、一回大ヒットとか飛ばして、
この気持ちを味わってほしいな。
(明日に続きます)
2026-01-24-SAT