
2026年3月6日から全国公開となる映画
『花緑青が明ける日に』が、
なんだか、とってもよかったんですよ。
とくに渋谷PARCO8階にある
「ほぼ日曜日」総支配人・ほぼ日山下の心を
ぷるぷるとふるわせ、2月28日から
「ほぼ日曜日」で映画の展覧会をやることに。
ついては、四宮義俊監督に、
映画についてあれこれうかがってきました。
日本画家出身の監督独自の映画観はじめ、
元ドワーフの松本紀子さんにも同席いただき、
プロデューサー目線、山下の大ファン目線、
いろーんな角度からのお話が飛び交いました。
担当は、ほぼ日奥野です。
撮影 清水洋史
四宮義俊(しのみや よしとし)
1980年生まれ。
日本画家として絵画を軸に、
立体、映像など多彩な創作活動を行う。
実写映画やアニメーション映画の美術や
特殊シーン演出を担当、
『君の名は。』(新海誠監督・回想シーン)、
『この世界の片隅に』(片渕須直監督・水彩画)等に参加。
渋谷スクランブル交差点での
四面連動ビジョン放映で話題になった
「トキノ交差」や「冒険隊~森の勇者~」(眉村ちあき)MVで監督を務める。
本の装丁、広告、CMなど各種メディアに携わる一方で、
日本画家として培った素材研究をベースに
異質なマテリアル同士やジャンル同士を
媒介・融合させながら作品を制作し続けている。
松本紀子(まつもと のりこ)
株式会社ノリ 代表/プロデューサー。dwarf studios プロデューサー、共同創業者。広告映像業界からキャリアをスタート。1998年の『どーもくん』、2003 年『こまねこ』が転機となり、ドワーフの立ち上げに参加。タイムレスに楽しめる高品質なコマ撮りのコンテンツの制作で、日本のスタジオとしては、いちはやく配信のグローバル・プラットフォームとの仕事を始めた。Netflix シリーズ『リラックマとカオルさん(2019)』『リラックマと遊園地(2022)』が話題に。 現在はコマ撮りやキャラクターを強みとしながら、その常識を超え、手法や会社の枠にとらわれない新しい才能や技術を使った作品を企画し、更には日本の枠を飛び越えて制作することを目指している。最新作は2025年度米アカデミー賞のショートリストになった堤大介監督(元ピクサー)の短編映画『ボトルジョージ』と、パイロット版で業界の度肝を抜いた『HIDARI』(長編企画進行中)。
- 山下
- 今回、ベルリン映画祭に選出されたことが、
わがことのようにうれしいです。
- ──
- なんかもう、
初孫に目を細めるかのような(笑)。
- 松本
- 本当におめでとうございます。
そういう作品になるなとは思ってましたが。
- ──
- あ、そうですか。
キービジュアルしか見てないような段階で。
- 松本
- 絵ヂカラがハンパなかったので。
- ──
- なるほど。結局、ぼくらが観たのも、
まだまだ未完成の段階だったわけですけど、
完成した絵で、
劇場のスクリーンで‥‥と考えたら、
また別の映画に出会えるかのような期待が
ありますよね。
- 山下
- お話じたいは知ってるのにね。
- 松本
- 構想自体は10年前からとのことですけど、
実制作がはじまってからは
けっこう早かったという印象があります。 - つくる作業って、大変でしたか?
- 四宮
- たぶん、いま、どこのアニメ制作の現場も
人手不足だと思うので、
その意味での大変さはあったと思います。 - これは日本のアニメのすごさなんですけど、
おそらく世界的に見ても
完成させるためのワークフローが成熟しているので、
放っておくと、
どうしても同じルックへと寄っていってしまう、
という感覚もあって。
- ──
- へええ、おもしろい。
- 洗練の度合いとか品質の高低についての
共通理解があるから、
見た目が収斂していってしまう‥‥んだ。
- 四宮
- 成熟さゆえに、少しはみ出そうと思っても
暗黙の了解で、
落とし込む場所が定まってきてしまう。
- ──
- いわば「標準化」みたいなことですね。
いい面と、そうでない面とがありそうです。
- 松本
- そこを、べりっと剥がしたりしたんですか。
- 四宮
- ただ、それを回避するためには、
言葉なのか、絵なのか‥‥。 - 人の手がかかればかかるほど、
いま「いい」とされるルックに寄っていく。
関わる人が多ければ多いほど、
もっと同じものになっていくと思いますが、
でも人手がなければ、つくれない。
そういうジレンマは、つねにありました。
- ──
- 想像したこともなかった話です。
- 山下
- ねぇ。まったく知らないからね。
- 四宮
- 逆に、海外のアニメが新鮮に見えるのって、
制作のワークフローが
確立していないからじゃないかと思います。
- ──
- それぞれ独自にやってる、みたいな?
- 松本
- MIYUなんかは、そういう人たちですよね。
つねに新しい手法を探してますし。 - だから、いろんなルックが出てくるんです。
- 山下
- でも、そういう意味で言うと、
今回の『花緑青が明ける日に』の新鮮さは、
もう、すぐに伝わってきますよね。
- 松本
- はっきりちがいますもんね、他とは。
- 山下
- 見た目としても独特だなあと思いましたし、
あと、やっぱり、
ぼくたちほぼ日で取り上げたいなと思った
勝手な理由が「ストーリー」でした。 - 派手なファンタジーとかじゃないのに‥‥
つまり、時空を超えたり、
魔法でどうにかしたり、
怖いモンスターが出てきたりじゃなくって、
単純に、
素晴らしい絵で観るおもしろい映画だった、
ということが大きかったんです。
- ──
- なるほど。
- 山下
- いい映画を一緒に観ませんかって、
お客さんに落ち着いてお誘いできるなあと。
- 四宮
- たとえば主人公たちのキャラクターなどは、
アニメらしい顔をしています。
スッと入ってこれる映画にしたいなあって、
考えていたからです。 - ぼくはずっとファインアートをやってきて、
その「入口の狭さ」みたいなものを‥‥
それは、アートが狭いんじゃなく、
ぼくの表現が狭いせいだとは思うんですが、
とにかく、その難しさを感じていました。
だから、エンタメとして
「入りやすさ」は大事にしながら、
内容で、自分なりのものが出せたらいいな、
と思ってつくりました。
- 松本
- いい監督だなあ。
- ──
- プロデューサー的実感のこもった言葉だ。
- 松本
- それに派手なファンタジー要素はないけど、
絵づくりに関して言えば、
めちゃくちゃファンタジックですもんね。
- 四宮
- 飽きさせないようにはしなきゃと思って。
- 松本
- あと、長くない。絶妙な尺。
- 四宮
- 長編ギリギリです。
- 松本
- 1時間16分だけど、すごく見応がえあって。
- ──
- 見逃さないほうがいいシーンとか、
聞き逃したらダメなセリフもありますけど、
あの長さだから集中できたような。
- 山下
- あと、ネタバレが気にならない映画ですね。
- 松本
- たしかに(笑)。
- 四宮
- アスミック・エースさんの予告の動画では
わりと全開な感じで(笑)、
最後「花火が上がるかどうか」というより、
もう上がってる‥‥。 - あのトレーラーを見て、
みなさん花火、上がると思いますか?(笑)
- ──
- わはは、われらは答えを知っているけど。
- 松本
- でも、あの本編の尺を観ないと、
たぶん最後、グッとはこないんでしょうね。
なので、
あの予告のちょいかじり感は大丈夫。
本当のスペクタクルは、
ちゃんと劇場の絵と音で魅せられますから。
- ──
- それと、冒頭で山下さんも言ってたように、
こまかい部分で
「なるほど~、こういうことかぁ」
みたいなことが随所に仕込まれてますしね。
- 四宮
- 日本画をやってきたので、
アートっぽいアニメをつくるんでしょって、
よく思われていたんですけど、
ぼくとしても、この作品は、
やっぱり「まずはストーリー」なんです。 - ストーリーが弱ければ、
たった5分で飽きちゃうのがアニメだから。
- ──
- 幻の花火が上がるまでのストーリーですね。
「上がるかどうか」と言うより、
「どんなふうに上がるのか‥‥?」という。
- 山下
- 本当に。そこを見てほしいです。
(つづきます)
2026-03-02-MON

