
ホストクラブ、キャバクラ、シャンパンタワー‥‥
現実から一歩離れたような場所、新宿歌舞伎町を、
ライターの佐々木チワワさんは
「社会学」の視点で研究しています。
自身も歌舞伎町の住人でありながら、
冷静に夜の街を見つめる佐々木さん。
お金でつながり、演技し合う歌舞伎町の人間関係の裏には、
「現代の誰もが持っている本心」が隠れているといいます。
知らなかった歌舞伎町が見えてくるお話、
ほぼ日の玉木がうかがいました。
佐々木チワワ(ささき・ちわわ)
文筆家。2000年生まれ。
慶應義塾大学総合政策学部卒業、
立命館大学院社会学研究科在学中。
高校生の頃から歌舞伎町に足を運び、
トー横キッズやホストクラブの現場を取材し、
「歌舞伎町の社会学」を研究。
自身もホスト通いを重ね、
消費者としても参与観察を続ける。
著書に『「ぴえん」という病』(扶桑社新書)、
『歌舞伎町モラトリアム』(KADOKAWA)、
『ホスト!立ちんぼ!トー横!
オーバードーズな人たち』(講談社)
『歌舞伎町に沼る若者たち 搾取と依存の構造』
(PHP新書)がある。
- ──
- ある意味とてもチャレンジングで
新しい労働である感情労働を
24時間やっていたら、人間はどうなっていくのか、
ということは、歌舞伎町に限らず、
日本全体に問われている気がします。
テレビに出るような一般的なスターじゃないけど、
自身の生活を切り売りして
消費の対象にしている、
動画配信者のような職業も増えていますよね。
- 佐々木
- そうですね。
個人の名前でお仕事をしてる方や、
会社の名前を背負っている方のように、
「労働者」としての生活する時間が
長くなれば長くなるほど、
なにかしらの感情労働はせざるを得ないと思います。
感情労働が加速するとどうなっていくのか、
まだ誰もわかっていないけれど、
「じつはAIのほうが感情労働が得意なのでは」
という説もあるんです。 - いま、AIに感情労働が
どこまで代替可能かを調べるため、
ホストの方に「AI使ってる?」と訊く調査を
しています。
これは、やっていてすごく面白いですね。
とくに面白かったのは、回答くださったみなさん、
「AIを使うか」と訊くと否定したのですが、
「AIに相談することはあるか」と訊いたら、
相談してると言っていたんです。
- ──
- AIを仕事道具ではなく
「相談相手」として見ているんですね。
- 佐々木
- 「AIを使ってる」というと、
仕事を完全に任せてるというイメージなんですよね、
おそらく。
というよりは、AIに相談して
自分の考えをブラッシュアップしている。
人間のAIとの微妙な関わり方が見えて
興味深かったです。
人間とAIの境目が
どんどんあいまいになっていくなかで、
今後、プロポーズの言葉も
「それ、どうせAIに言わせたんでしょ」
と疑われたりすると思うんですよ。
- ──
- あー、ありえますね。
- 佐々木
- 「いや、たしかにAIには相談したけど、
200回は相談したよ」って弁解するとか。
- ──
- そうなってくると、どこに主体があるのか、
誰が感情を使ったのかがわからなくなってきますね。
- 佐々木
- 最近は「デジタルデバイスを使わずに恋愛する」
という企画の番組が放送されていましたが、
数年後は「AIを使わずに恋愛してみましょう」という
恋愛リアリティショーが
始まるんじゃないでしょうか。
AIに相談せずに人と向き合った場合、
関係はどう変化するのか、
AIにアドバイスしてもらったとおりに
会社でふるまっていたとき、
その人格を評価されたら承認欲求は満たされるのか、
とか‥‥
AIでつくったものや
AIに相談したもので承認を得ることの苦しみは、
AIが当たり前になった社会で新しく出てくる
社会問題だと思います。
それを歌舞伎町という、
「自分じゃない人格を演じる」ことが
当たり前の街から考えてみたら、
面白いんじゃないかなと思っています。
- ──
- 歌舞伎町では、これからの社会の
テーマや問題が「先取り」されることが
あるのでしょうか。
- 佐々木
- それもありますし、感情労働に関しては、
夜職との相性がよかったのも大きいでしょうね。
ホストは、お客さんから連絡がきたらすぐ返す、
お客さんが落ち込んでいたら優しい言葉をかける
など、メンタルのケアが求められます。
「メンケア」と呼ばれているんですけど。
それは、メンタルケアといいつつ、
福祉的なカウンセリングではない「なにか」
なんですよね。
- ──
- カウンセリングとも違うんですか。
- 佐々木
- たとえば、お客さんからの
「落ち込んでる」というLINEに対しての
「好きだから元気出して」という返信は、
根本的な解決にはなっていないですよね。
解決、寛解を求めるケアではない「メンケア」は、
チャットGPTにできる部分もあれば
できない部分もあると思います。
チャットGPTを使ってる人は
歌舞伎町にも多いので、AIが当たり前になった時代、
どう使っていくつもりなのかについては
聞いてみたいなと思います。
- ──
- 歌舞伎町を歩きながら、新しい社会問題について
「もしかしてこうなんじゃないか」という
仮説が見つかることもあるんですね。
- 佐々木
- 歌舞伎町で見聞きすることを当たり前だと思って、
大学の教授や同じ分野の仲間に話すと、
「いやいや、なにそれ」と
驚かれることがあるんです。
なので、歌舞伎町と大学、昼と夜の2拠点を
反復横跳びすることで、
客観的な軸が保てているんだと思います。
引き続き現場調査と、言語化して理論の枠組みに
当てはめる作業の両方をやっていく形で
歌舞伎町と関わり続けたいです。
- ──
- ありがとうございました。
すごく面白かったのですが‥‥
編集して、公開できる部分が
短くなってしまったらすみません。
- 佐々木
- 使いづらい話を
たくさんしてしまいましたよね(笑)。
注釈を入れたほうがいいところがあったら
入れるので、言ってください。
- ──
- いや、本当におもしろかったので、
できるだけそのまま記事にできるよう頑張ります。
佐々木さんが歌舞伎町に入って
関係性をつくっているからこそ、
ディープな話をたくさん聞けるんだろうなと
思いました。
- 佐々木
- いつか「ほぼ日の學校」のゲストで、
ホストを呼んでも面白いかもしれないですね。
ホストを辞めた人や、歌舞伎町を出てから
「全身ブランドもの」が
恥ずかしくなった子にも来てもらって。
(終わります。お読みいただき、ありがとうございました)
2026-05-07-THU
