「まさかうちのコが」
「いつも気をつけていたんだけど」
たいていのご家族がそうおっしゃるそうです。
そうなんです、これはいつでも起こりえること。
犬や猫がもし迷子になったら、
まずは何をする?

語り手:ペットレスキュー代表 藤原博史さん
聞き手:ほぼ日「ドコノコ」タナカ
イラストレーション:ゴトウマサフミさん

犬や猫が迷子になったとき、
すぐ使えるわかりやすいマニュアルブックを、
ペットレスキュー代表の藤原博史さんといっしょに作りました。
こちらからからダウンロードして、
ぜひお役立てください。猫編と犬編があります。

>藤原博史さんのプロフィール

藤原博史 プロフィール画像

藤原博史(ふじわら ひろし)

1969年兵庫県生まれ。
ペットレスキュー代表。
幼少の頃から無類の昆虫、動物好きで
つねにさまざまな生きものたちと過ごす。
1997年、迷子になったペットを捜索する会社
ペットレスキュー設立。
20年あまりで3000件にものぼる
迷子の犬猫を捜索してきた。
人と動物の共生をめざし、活動中。
インスタグラム:petrescue1997

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第2回

犬は動く、


猫は動かない。

ほぼ日
猫はたいてい、隠れてジッとしますね。
藤原
性格と飼育状況で変わってきますが、
警戒心が強い猫であれば、平気で
1週間でも2週間でも、一歩も動きません。
ほぼ日
飲まず食わずで2週間? 

藤原
体毛についた水分ぐらいは摂りますが、
最長で1か月ぐらい食べない。
軒下、屋根裏、どこかにいます。
ほぼ日
猫がジッと隠れていた場合には、
迷子チラシをいくら撒いても無駄ですね。
藤原
その場合は効果がありません。
迷子チラシを撒いて、ある期間見つからなかったら、
ジッと隠れている可能性が高い。
長期間見つからない場合、
移動するときがきっと来るので、時期をずらして、
もういちどチラシを撒き直しましょう。
しかし、それどころか、
まず猫については、室内を探すことが肝心です。
ほぼ日
家の中を。
藤原
体調が悪くなって隠れている可能性があります。
ふだん入らないような押し入れや
ソファー内部や家具のすみっこなど、
考えつかないようなところに
もぐりこんだりすることがあります。
まず室内は、徹底的に探してください。
ほぼ日
ピアノの中にいた、というケースもあったそうです。
藤原
そして、外に出たとなっても、
マンションの場合は、建物の中にいる可能性が高い。
管理人さんに事情を話して、
メーターボックスはすべて開ける。
マンション内の、隠れられる場所を
すべて捜してから外に行きましょう。
ほぼ日
外に出るまでに段階がありますね。
藤原
さらに、外に出ても、
まずは家の壁沿いを捜します。
室内飼いの猫は外に免疫がないので、
多くの場合、道を渡りません。
家を出たら壁沿いに歩く。
からだの両面をさらすことをしないのです。

▲猫は壁沿いが基本。 ▲猫は壁沿いが基本。

藤原
ですから、猫が潜む可能性が高いのは、
自宅のあるブロックの中です。
同じブロック内の、
隣家の軒下、通路、簡易物置の下。
猫は快適な場所を見つける天才なので、
時間帯によって、滞在場所が変わります。
ゴトウマサフミさんがマニュアルに描いてくださった、
この絵がすごくわかりやすい。

▲たいてい、このどこかにいる。見つけたい。 ▲たいてい、このどこかにいる。見つけたい。

ほぼ日
臆病なコは、
大きな道路を横切ったり、橋を渡ることは、
しないんですね。
藤原
しかし、ほかの猫や犬に追われたりすると、
道を渡ってしまう可能性があります。
ですから、順序を踏んで、
家の中→敷地内→自宅のあるブロックを
徹底的に捜してから、次へ移ります。
自由外出の猫の場合は、
自分のテリトリー内であれば帰ってきます。
帰ってこられない要因として、
自分のテリトリー外、つまり、
遠くにいる可能性が高い。
ほぼ日
藤原さんと一緒に歩いていると、
「ほらあそこ、あそこ、あそこ」と、
猫をいっぱい見つけますよね? 
あれはなぜですか?
藤原
どちらかというと、猫が見えるんじゃなくて、
猫の視線にぼくが気づくんです。
猫の視線って、大事なんですよ。
ある猫の視線の先に、
捜している猫がいる場合もあります。
そういう猫は、
「見慣れない猫がいるときの警戒の顔」を
しているんです。
ほぼ日
へぇええ。
その地域にいる猫が何を見てるかが、
参考になりますね。
藤原
それは、ほんとうにそうです。

▲捜索中の藤原さん。 ▲捜索中の藤原さん。

ほぼ日
犬の場合はどうでしょうか。
一頭で歩いているとそうとう目立ちますが。
藤原
犬は1日で数km移動することもあります。
また、犬は条例で
自由に歩き回ることが許されていません。
ですから、交番への届け出がまず必須です。
ほぼ日
犬も猫も、基本的に届け出は翌日までに。
提出する先は交番(警察署)、
保健所、愛護センター、そして
清掃事務所、近くの動物病院です。
動物病院に迷子チラシを置いてもらうことも有効です。
それぞれの届け出の意味を、
マニュアルに簡潔にまとめたので、
それぞれ確実に連絡しましょう。
藤原
犬は隠れてジッとしてることは、
ほぼありません。
見つからない場合は、
捜索範囲を超えている場合がほとんどです。
ですからやはり、
捜す距離を伸ばしていくのが効果的です。
ほぼ日
犬は最終的に、愛護センターに
移送されていくことも多いです。
地域の愛護センターにいないかどうか
確かめておきましょう。
飼い主が赤毛で幼犬だと思っていても、
保護した人からすれば茶色の成犬だったりします。
愛護センターの情報は開示されているし、
電話すれば教えていただけます。
似てるかもしれないと思ったら、
まず見に行きましょう。
犬の場合は「県またぎ」も普通に起きるので、
隣の県の保健所や愛護センターにも連絡が必要です。
チラシを送っておけば、
センターの方が見てくれると思いますので、
似ている犬が入った場合は
連絡をもらいやすくなると思います。
また、犬の場合はドコノコ以外のSNS、
TwitterやInstagramで拡散するのも
たいへん有効です。
犬は広範囲に移動しますから、
たくさんの人が見て広めてくれたほうがいい。
逆に猫は、ほとんど意味がありません。
捜したい100m、200mの範囲に
そのツイートを見ている人が
どれだけいるか、ということになります。
猫の場合はドコノコの迷子掲示板をフルに活用しましょう。
ご近所のドコノコユーザーのみなさんが見てくれます。
藤原
そうですね、
犬は移動距離が長いので、完全なる情報戦です。
目撃情報が最も有効。
いかに多くの目で捜してもらうかによって
保護できるかどうかが分かれます。
ですから犬の場合、迷子チラシは
配布するのではなく、
人目につくところに貼っていきましょう。
1軒ずつ地域のポストに投函して、
1週間かけて500枚投函したとしても、
その距離を、犬は3分くらいで
抜けている可能性があるんです。
猫は立体的な動きをしますが、
犬は平面しか移動できない。
ポスティングでは犬の足に間に合いません。
ですから、1日の移動距離で計算して、
おおよそのめやすで直線的に、
地図で放射状に印をつけながら、
チラシやポスターを貼っていきます。

ほぼ日
ただ、チラシやポスターを
無断で街に貼るのは法律・条例違反です。
必ず許可をとってから貼ってください。
藤原
ほんとうは、できるだけポスターを貼りたい。
みなさんの家の門柱に貼っていただくことが、
犬の発見にものすごく効果があるんです。
これはもう、門柱のある家に住んでいるみなさんに、
ぜひやっていただきたいです。

▲捜しはじめて3秒で見つかったおみくん。 ▲捜しはじめて3秒で見つかったおみくん。

(つづきます)

2019-11-09-SAT

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  • 迷子捜しマニュアルができました!

    犬や猫が迷子になったとき、
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    ほぼ日の「ドコノコ」がいっしょに作りました。
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