こんにちは、ほぼ日の奥野です。
以前、インタビューさせていただいた人で、
その後ぜんぜん会っていない人に、
こんな時期だけど、
むしろZOOM等なら会えると思いました。
そこで「今、考えていること」みたいな
ゆるいテーマをいちおう決めて、
どこへ行ってもいいようなおしゃべりを
毎日、誰かと、しています。
そのうち「はじめまして」の人も
混じってきたらいいなーとも思ってます。
5月いっぱいくらいまで、続けてみますね。

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第21回 お店は2ヶ月も閉じてますけど、新しい時代への「期待感」もあって。[鮫島弘子さん(andu amet 代表・チーフデザイナー)]

──
そちらは、いま‥‥エチオピアですね。
鮫島
はい、首都のアディスアベバにいます。
朝の10時をまわったところです。
──
ああ、では、おはようございます。
鮫島
はい、おはようございます(笑)。
──
ふだんは、エチオピアと日本を
行ったり来たりだと思うんですけど、
しばらくは、そちらに?
鮫島
そうですね。2月初旬からこっちです。
コロナが広がってきて、
このまま、とどまろうと決めました。
エチオピアでも非常事態宣言が発出され、
何が起こるかわからなかったし、
もし何かあったとき、
離れていると、
社員や会社を守るのが難しくなるので。
──
なるほど、経営者としての判断で。
いま、エチオピアの状況はどうですか。
鮫島
感染者は「300名弱」くらいなので、
現時点では、
人数としては日本よりも少ないですね。
ただし、医療や水道などのインフラが
日本のように整っていないので、
いちど感染拡大してしまったら、
広がっていくスピードは、
すごく早いだろうと言われてはいます。
──
マスクをする文化とかは‥‥。
鮫島
ぜんぜん、なかったんです。
むしろ、外でマスクなんかしていたら
病原菌扱いされるほどでしたが、
つい先日から、
法律で、外出時には
マスクが義務づけられるようになって。
──
わあ、法律ができちゃったんですか。
鮫島
未着用だと逮捕されるようになって、
街の中に
一気にマスク姿の人が増えました。
でも、そもそも使い慣れていないから、
間違っている人もいて、
飛行機で配っている「アイマスク」を、
つけてたり。
──
なんと。

アイマスクを口にする人。 アイマスクを口にする人。

鮫島
サイズ的に鼻と口を同時に塞げなくて、
どっちかだけ、
まるまる出ちゃったりして。
──
Facebookだったかな、
鮫島さんの工房で、
マスクをつくってるところを見ました。
鮫島
日本で売ってるような医療用のマスクは
出回っていなかったり、
あっても極端に高かったりで、
一般の人には手が届かないんです。
ハギレなどで自分たちでつくった
粗悪なマスクが
道端で売られたりしてるんですが、
みんな、そういうのを使ってます。
──
そうなんですか。
鮫島
でも、そういうのだと、
効果がほとんどないどころか
逆に危ないなと思って、
うち、いちおう縫製工場なんで、
マスクをつくって
スタッフや近所の人に配ったら、
すごくよろこばれたんです。
──
プロの仕事ですもんね、なにせ。

鮫島さんの工房でつくったマスク。近隣や貧しい人たちに寄付している。 鮫島さんの工房でつくったマスク。近隣や貧しい人たちに寄付している。

鮫島
あ、求められてるんだなと思いました。
それで、実費だけもらって、
利益なしで販売したら
もっとたくさんの人に届けられると、
管轄の省庁を訪ねて相談したら、
「布製品をつくるライセンスを
取得しないとダメだ」って言うんです。
──
えーと、つまり、
鮫島さんのブランドは、革製品だから。
鮫島
そう、当社が持っているのは
革産業のライセンス。
布産業のライセンスを取得するためには、
新たに20万ドルかかるんです。
日本円でいうと、2000万円くらい。
──
はああー‥‥なんだか。
鮫島
こんな非常時まで、
いつもと同じ四角四面な対応で、
腹が立つのを通り越して、
もう、感心しちゃいました。
──
東京の表参道にある
鮫島さんの「andu amet」のお店も、
いまは、クローズ中ですか?
鮫島
そうですね。
4月の緊急事態宣言の出る前から
自己判断で閉めていたので、
もう、かれこれ2カ月になります。
──
そんなに。
鮫島
こんな状態がいつまでも続いたら、
倒産しちゃうかもしれないっていう
不安もあるんだけど、
でも、その一方で、
言葉の使い方が難しいんですけど、
世界が音を立てて変わるところを、
わたしたち、
いま、目撃してるじゃないですか。
──
そうですよね。さまざまな場面で。
時間の使い方も、人生観も、
はたらきかたも、いろんなことが。
鮫島
みんなが、内心「変えたい」って
思っていたけど、
これまで変えられなかったことが、
変わらざるを得なくなってる。
そのことにたいする「期待感」が、
もう一方で、あるんです。
こういう状況なのに‥‥なんだか。
──
具体的には、どういうことですか。
鮫島
たとえば、エシカルだとか、
インクルーシブなビジネスモデル、
つまり、
「誰も取り残さない社会をつくろう」
みたいな考えに対して、
いま、みんな、
真剣に考えるようになってると思う。
だっていまは、自分だけが
いいマスクをして清潔にしていれば、
安心ってわけじゃないから。
──
ああ、そうですね。
鮫島
となりの人が
ウィルスに感染してしまったら、
自分にも降りかかってくる
可能性があります。
つまり、みんなが健康で、
みんなが幸せになれないのであれば、
自分も、
本当には幸せにはなれない。
──
たしかに。
鮫島
そのことが、コロナの感染拡大という、
非常にハッキリしたかたちで、
わたしたちの前に提示されたというか。
わたし自身も、これまで、
エシカルとか、サステナブルとか、
ずっと取り組んできたつもりだったけど、
もしかしたら、
どこかで「他人事」みたいなところが
あったのかもしれないな、とか。
──
そう思われますか。
鮫島
そのときどきなりに、
一生懸命なつもりではいたんですが、
今回の件をきっかけに、
もっともっと本気で、
一生かけて追求していきたいと
思うようになりました。
──
コロナで、決意があらたに。

街のあちこちに増設された手洗い場。 街のあちこちに増設された手洗い場。

鮫島
だって、このまま放っておいたら、
さらに
二極化が進んじゃうと思うんですよね。
エシカルな方向と、自分だけ助かろう、
自分さえよければいいという
エゴイズムやナショナリズムの方向と。
なんとか、前者への流れを
つくっていきたいなと思っています。
──
最近、新しくはじめた取り組みとかは、
なにか、あるんですか。
鮫島
ZOOMを使った
バーチャルショッピングをやってます。
──
それって、つまり‥‥。
鮫島
お客さまとお店をZOOMでつないで、
接客させていただくんです。
実際、お店にいらしたような感覚で、
オンラインで
お買いものしていただける企画です。
──
へええ。おもしろそう。

バーチャルショッピングのようす。 バーチャルショッピングのようす。

鮫島
お店もクローズしちゃってるし、
こんなのやったらどうかなと思って
軽い気持ちではじめたことですけど、
びっくりするくらい好評なんです。
これまで、実際にお店に行くのには
ハードルの高かった、
地方や海外にお住まいのお客さまも、
たくさん参加してくださって。
──
行きたくても行けなかった人にとっては、
すごくありがたい企画ですね。
鮫島
お友だちどうし、
何人かでいらしてくださったりとか。
──
それ、つまり約束をして、
それぞれ、別々の場所から集まって。
鮫島
そう、お友だちが連れ立って何人かで
いっしょにご来店されて、
ショッピングを、楽しんでらっしゃる。
──
オンラインで、ですよね。
未来だなあ(笑)。
鮫島
わたしたちも想定してなかったことが、
どんどん起こるので、
状況は厳しいですけど、
おもしろいことも、あるんですよねえ。
──
エチオピアの工房スタッフさんたちは、
どんなご様子ですか。
不安がったりとか、されてないですか。
鮫島
それがなんか、
そんなに心配してないみたいなんですよ。
──
えっ、そうなんですか。

自分たちでつくったバッグを手にして笑顔の職人さん。 自分たちでつくったバッグを手にして笑顔の職人さん。

鮫島
もちろん、細かい部分では、
いろんな不安ごとはある思うんですが、
総じてポジティブ、楽天的。
わたしたち日本人って、
考えてもしかたないことに対して、
先回りして悩んじゃうような、
そんなところがあると思うんです。
──
ええ、ええ。わかります。
正直、自分もかなりの心配性ですし。
鮫島
その点、アフリカの人びとにとって、
「未来がわからない」なんて、
ただの日常。ふつうのことなんです。
──
ああ‥‥そうか。
鮫島
明日でさえ、
急にどうなるか、わからないんです。
政治体制や法律がとつぜん変わっちゃって、
いろんなことが、
ひと晩でひっくり返るなんてことが、
実際に起こりますから。
──
なるほど。
鮫島
コロナなんて、
目の前にあるたくさんのトラブルのひとつ、
って感じなのかもしれないですね。
──
じゃあ、みなさん、ふだんどおりに。
鮫島
そうですね。
工房でも手洗い、マスクをして、
感染対策を守りながら、
新しい商品に取り組んでくれてます。

──
いまは「輸出」ってできるんですか。
つくったものを、国外に出すことは。
鮫島
ええ、日本行きの旅客便は
止まっちゃってるけど、
貨物の便はたまに動いてるんです。
──
ああ、そうなんですか。
鮫島
来週、また動くようなので、
そこに乗っけようと思って、
みんなでラストスパートかけて
つくっているところです。
──
じゃあ、お忙しいんですね。

鮫島
いま、新しい商品としては、
おうちをかざるインテリアだったり、
日常づかいできるアクセサリー類を、
開発してるんです。
──
バッグや洋服だけじゃなくて。
鮫島
はい。おうちの時間が長くなるので、
ふだんの暮らしの場面を
もっと豊かにしてくれるような‥‥
そういう商品なんかも、
いろいろ考えているところです。
──
アフリカっぽい鮮やかな色づかいの
雑貨があったら、
日々の暮らしも元気になれそうです。
鮫島
これまで、日本とエチオピアの間を
行ったり来たりだったので、
ぐっと本腰を入れて開発する時間が
あんまりなかったんですよ。
──
なるほど。でも、いまは、ある。
鮫島
そうなんです。たっぷりあるんです。
なので、しばらくは、こっちにいて、
新しい商品の開発と、
それから、
エシカルでサステナブルな輪を
広げていく企画のほうに、
時間をかけて取り組もうと思います。
──
楽しみにしてます!
鮫島
はい。ありがとうございます(笑)。

2020年5月12日 東京都世田谷区←ZOOM→エチオピア・アディスアベバ 2020年5月12日 東京都世田谷区←ZOOM→エチオピア・アディスアベバ

2020-05-24-SUN

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