こんにちは、ほぼ日の奥野です。
以前、インタビューさせていただいた人で、
その後ぜんぜん会っていない人に、
こんな時期だけど、
むしろZOOM等なら会えると思いました。
そこで「今、考えていること」みたいな
ゆるいテーマをいちおう決めて、
どこへ行ってもいいようなおしゃべりを
毎日、誰かと、しています。
そのうち「はじめまして」の人も
混じってきたらいいなーとも思ってます。
5月いっぱいくらいまで、続けてみますね。

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第19回 入所者のみなさんと向き合う、豊かな時間を過ごしています。[山下完和さん(やまなみ工房施設長)]

──
おひさしぶりです、山下さん。
いかがですか。やまなみさんの状況は。
山下
コロナの影響、もちろんありますけど、
感染者の多い地域の施設にくらべたら、
日常の生活については、
さほど切羽つまったところはないです。
──
ああ、そうですか。それは。
山下
入所者のみなさんの支援をするという
仕事にあたっては、
いわゆる「テレワーク」であったり、
仕事のやり方を変えるということが
当てはまらないので、
そういう意味でも、変わってないです。
──
なるほど。
山下
ただ、この2020年という年には、
障がいのある方々のアートの
イベントや企画が、
たくさん、予定されていたんですね。
──
オリンピック・パラリンピックに、
照準を合わせるかたちで、ですよね。
山下
5月、6月、7月にも、
大きな展覧会やシンポジウムなどが、
開催されるはずでした。
なのでぼくらも、そこをめざして
気持ちのピークを持ってきていたんですけど、
そういったものは、
一切、なくなってしまいましたね。
──
やまなみさんでも、敷地内に
アートセンターを建設されたりとか。
山下
来週、開所式の予定だったんですが、
それも、しばらく延期です。
あとは、まあ、入所者のみなさんは、
やなまみを通じて、
海水浴へ行ったり、山にのぼったり、
街へ買い物に出たりしていた、
そういう人たちばっかりなんですよ。
──
ええ、ええ。なるほど。
山下
毎日のように来ていた
外からのお客さんや見学の人たちも、
いまはゼロなので、
そういった「社会との関わり」も、
一時的にですが、遮断されています。
みんなでたのしみにしていた部分は、
いろいろ、なくなってますね。
──
そうですよね、やっぱり。

岡元俊雄さん「男の人」(最近のやまなみ工房さんのFacebookより) 岡元俊雄さん「男の人」(最近のやまなみ工房さんのFacebookより)

山下
でも、本当の豊かさみたいなことは、
こうなって、あらためて考えますね。
──
どういうことですか、それは。
山下
いや、これまでは、
さまざまなイベントや経験を通じて、
「豊かさ」というものを、
享受しているんだと思っていました。
もちろん、それは、そうなんですが。
──
ええ。
山下
でももう3週間、4週間、1ヶ月と、
ここだけの生活をしていると、
これは無駄だったかもしれない、
これはやっぱり必要だということが、
明確になってくるんですよね。
──
なるほど。
山下
勢いだけでやっていた部分と、
本質的な部分が、
わかるようになったというか。
──
本質的な部分というのは、たとえば。
山下
いまは、彼らにだけ向き合う時間を、
持つことができています。
1日30通も40通も返信していた
メールの業務もなくなって、
身体的にも頭の中も、忙しくないし。
──
うん、うん。
山下
これまで、ぼくらと彼らの関係性は、
外部の人たちも加えた
「大きな社会」だったんですけれど、
外部が遮断されることによって、
毎日ダイレクトに、
彼らと向き合うことができています。
──
なるほど。
山下
この人、こんなことできるんだとか、
こんな表情するんだとか、
彼と話すと、
こんなにも楽しかったんだ、とかね。
恥ずかしながら、
そういう時間を取り戻してる感じで。
──
そのことについてだけ言えば、
とっても「いいこと」なわけですね。
山下
そうですね。
──
施設長は、そこに豊かさを感じてる。
山下
大切なことって、やっぱり、
現場で彼らに向き合うことなんだと
あらためて、わかりました。
それは、何が起こっても
絶対に変わらないことだったんです。

神山美智子さん「なんきょく」(最近のやまなみ工房さんのFacebookより) 神山美智子さん「なんきょく」(最近のやまなみ工房さんのFacebookより)

──
逆に、入所者のみなさんのようすは、
どうですか。
山下
まったくブレてないですね。
──
ああ、そうですか。
山下
地球や世界がどういった状況であれ、
描きたい、つくりたい、
そこの欲求は、まったく、ブレない。
ひとつのものに集中する力の塊だし、
さまざまな制約がある中、
日々、最大限の力を発揮しています。
──
お地蔵さんの山際正巳さんなんかも。
山下
はい。まったく変わらず。
彼らは、周囲がどんなに変わっても、
自分自身でいられる人たちでした。
──
そのことが、あらためて、わかった。
山下
あこがれますよね。
決して、美化するわけじゃないけど。
ぼくも、彼らみたいに、
つねにフルボリュームで取り組める、
そういう人でありたいから。
──
あの、最近、いろんな用事で
やまなみ工房のスタッフさんたちと
やりとりすることがあって。
山下
ええ。
──
そうすると、みなさん、なんかもう、
ホントですかってくらい、
いい人たちばっかり、なんですよね。
これは、昨年、取材に行ったときも、
思ったことなんですけど。
山下
いやいや。
──
あれ、何でだと思います?
山下
うーん‥‥やっぱりね、
そういうことがもしあるとするなら、
障がいのある人たちから、
「本来、こうあるべきだよね」って、
教えてもらってるんです。
ぼくら、毎日。
──
ああ‥‥。
山下
嘘偽りなく自分の意見を言う力とか、
他人のせいにしない力だとか、
受け入れる力とか、
やりたいことだけに集中する力とか。
そういう彼らの姿を見ていると、
ぼくらも、
あんなふうになりたいと思うんです。
──
なるほど。そうか。
山下
いっしょにいると、
進むべき方向性が見えてくるような、
そんな気がします。

栗田淳一さんの絵画作品(最近のやまなみ工房さんのFacebookより) 栗田淳一さんの絵画作品(最近のやまなみ工房さんのFacebookより)

──
では、従業員のみなさんは、
どんな感じで、はたらかれてますか。
山下
こういう時期でも、いち職員として、
目の前にやるべきことが変わらずあります。
でも、今は、
それらはなるべくパッと片付けて、
どうすれば
一緒に過ごす時間の中で
この人がもっとよろこぶだろうとか、
そんなことばっかりやってます。
──
みなさん、原点に戻ってらっしゃる。
山下
ええ、それはそれでいいことですが、
もうじき
ウズウズしてくるんじゃないかなと、
自分も含めて期待してます。
この時間にためたパワーをつかって、
コロナが収束したあとは、
いろんなことをやっていきたいなと。
──
また多忙な山下さんに戻るんですね。
山下
まあ、仕事だと思ってないので、
忙しいって感覚はないんですけどね。
──
でも、土曜も日曜も関係なく、
日本全国を飛びまわってましたよね。
山下
正直、自分からやまなみを引いたら、
何も残らないくらいの男なんです。
やりたくてやってるというか、
最大で最高の「遊び」なんですよね。
──
たしかに、そんな感じします(笑)。

岩瀬俊一さん「ライオン」(最近のやまなみ工房さんのFacebookより) 岩瀬俊一さん「ライオン」(最近のやまなみ工房さんのFacebookより)

山下
だって、もともとは、
作品を展示したって誰も来なかった、
何にも認めてもらえなかった、
そういう人たちばっかりなんですよ。
やまなみのアーティストの作品を
もっと知りたいと言って
呼んでくださるなら、
もうね、よろこんで、どこへでも。
──
施設長みずから、クルマを運転して。
山下
それがぼくの役割であり、
ポジションなんだろうと思ってます。
ぼくには「地蔵」はつくれませんし、
よろこばれる絵も描けないし、
細かい刺繍だってできないけれども。
──
ええ。
山下
彼らの作品をクルマに積んで、
日本全国どこへでも運んでいって、
一生懸命しゃべって、
紹介して、伝えることはできます。
それが、ぼくの唯一の特技であり、
役割なんだと思ってます。
──
で、向いてますよね、その役。
山下
それがあるから、
やまなみに混ぜてもらえてるって、
思っています(笑)。
絵も、刺繍も、お地蔵さんも、
映画も、洋服も、
はやくクルマに積み込んで、
まだ出会ったことのない人たちに、
見せにいきたいです。
──
アートセンターも、楽しみです。
山下
秋くらいに仕切り直しですかね。
入所者のみなさんの
制作環境をよくすることに加えて、
もっとたくさんの人が、
遊びに来たり、意味なく寄ったり、
元気になったりしてもらえたら。
──
そういう気持ちで、つくった。
山下
はい。もっともっと、
会いたい人に会えるんじゃないか。
そんな思いを込めた場所なんです。

2020年5月7日 東京都世田谷区←FaceTime→滋賀県甲賀市 2020年5月7日 東京都世田谷区←FaceTime→滋賀県甲賀市

2020-05-22-FRI

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