こんにちは、ほぼ日の奥野です。
以前、インタビューさせていただいた人で、
その後ぜんぜん会っていない人に、
こんな時期だけど、
むしろZOOM等なら会えると思いました。
そこで「今、考えていること」みたいな
ゆるいテーマをいちおう決めて、
どこへ行ってもいいようなおしゃべりを
毎日、誰かと、しています。
そのうち「はじめまして」の人も
混じってきたらいいなーとも思ってます。
5月いっぱいくらいまで、続けてみますね。

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第18回 毎日、空と雲を撮ってました。地球のことを思いながら。[瀧本幹也さん(写真家)]

──
瀧本さんは、外出自粛期間中に、
ご自宅で、広告の撮影をされていたって、
御社の池田さんからうかがって。
瀧本
ええ、そうなんです。
──
サントリーさんの「話そう。」っていう
キャンペーンで、
瀧本さんの撮影された空と雲の映像に、
俳優さんはじめ、
たくさんの著名人の方の声が、
ナレーションとして重なってくるという。
瀧本
はい。

──
拝見したんですが、すごくよかったです。
最後、カメラが止まったときの
空と雲と太陽の光に、
言いようもなく感動しました。
瀧本
ああ、そうですか。よかった。
──
自分も、こういうオンライン取材を
続けている毎日で、
「話すこと」の大切さを感じていたので。
瀧本
4月の頭くらいかな、
緊急事態宣言の出るギリギリ直前に、
最後の撮影があったんです。
──
ええ。
瀧本
人数の多い撮影だったので、
終わったあと、
ねんのため自主隔離をしたんですよ。
──
えっと、つまり、おひとりで、どこかに。
瀧本
ええ。家族と離れて、ビジネスホテルに。
撮影が終わって、
ある程度の人数での仕上げが落ち着いて、
そのあと2週間くらい、
完全に人と接さないようにしていました。
──
万がいち、ウィルスに感染していた場合、
ご家庭にも持ち込まないように。
瀧本
そうなんです。ずっと、こもってて。
何にもやることがないから、
えんえんニュースを見てるわけです。
ちょうど感染者の数が、
日に日に増えていた時期だったんで、
どうなるんだろうって、
すごく不安な気持ちになってました。
──
先行きが見えない中、ひとりきりで。
誰とも、しゃべれずに‥‥。
瀧本
それで、ビジネスホテルの部屋から、
電話するようになったんです。
──
ああ、ご家族や、お知り合いに。
瀧本
メールでもやりとりしてたんですが、
誰かの声を聞くというのは、
やっぱり、とても安心するんですね。
人と話すことで「保てる」というか。
鬱々とした気分も晴れますし。
──
わかります。とってもよく。
瀧本
で、そういう経験をしたあとに、
久々に家へ帰ってきたタイミングで、
あのお仕事の話を、いただいて。
──
え、あ、「話そう。」の。
瀧本
そうなんです。
自宅で撮影できませんか‥‥って。
で、キャンペーンの内容だったり、
メッセージを見てみたら、
まさしく、
自分が実感したことだったんです。
──
誰かと話すことで安心するという。
瀧本
そう。いまのこの時期に、
ぜひ伝えたい、
大切なメッセージだと思いました。
──
いや、すごいめぐりあわせですね。
ご家族と自粛の生活をしていたら、
そこまで
「誰かと話すことで安心する」
って、切実に、
実感しなかったかもしれませんし。
瀧本
たしかに、そうですね。
で、時間はたっぷりあったから、
1週間くらいかけて、
自宅のテラスから、いい雲を狙って。
──
たったひとりの広告撮影。
瀧本
はい。誰とも接触することなく、
この季節の夕景を、
ずっとひとりで撮影してました。
──
撮影以前の打ち合わせなんかも、
じゃ、非接触で?
瀧本
ええ。まずステートメントになるコピーが
あったんです。
「話そう。」っていうね。
──
はい。
瀧本
自分の内側にこもっているものを、
人に話し、聞いてもらうことで、
気持ちは晴れるし、
ひとりっきりにならなくてすむと。
そのメッセージが、最初にあった。
──
はい。
瀧本
ぼくのほうにも、人と会わないで、
家のなかで何ができるだろうって、
いろいろアイディアを考えていて。
監督はじめクリエイティブの方と
オンラインで話し合って、
こういうことならできるよねって。
──
いちども、誰とも会わずに。
瀧本
ZoomとLINEだけで。

2020年5月12日 東京都世田谷区←ZOOM→東京都のどこか 2020年5月12日 東京都世田谷区←ZOOM→東京都のどこか

──
はぁー‥‥それで、
あんなにすばらしい作品ができた。
瀧本
撮影した映像の色合わせなんかは、
本来は、現場で、
みんなで同じモニターを見ながら
やるものなんですけど。
──
ぼくもこの間、
書籍を一冊、つくったんですけど、
編集さん、デザイナーさん、
印刷所の職人さん、
みなさんプロ同士、会えないけど、
たがいの仕事を
信じ合いながら進めていく感じが、
すごいなあ、
かっこいいなあと思ってました。
瀧本
うん、そういうところありますね。
──
あの、こういう事態で、
家から出られなくなったりすると、
手に武器がないと言うか、
丸腰な感じになるじゃないですか。
瀧本
ええ。
──
否応なく、その人の経験や技術が、
問われるようなところがあるなと。
瀧本
なるほど。
──
自分の経験と技術、
それに最低限の道具しかないとき、
どういうものがつくれるか。
あの広告を手掛けたみなさんは、
だから、瀧本さんをはじめ、
本物のプロなんだろうなと、
できたものを見れば、わかります。
瀧本
ぼくたち写真家って、やっぱりね、
外へ出て、いろいろ動いて、
何か発見してとらえるってことを、
つねにやってきたと思うんです。
──
ええ。
瀧本
だから、外に出るなと言われると、
無力を感じてたんですよ。
今回は、ずっとこもっていたから、
「撮影できるよろこび」が
まずは、最初にあったんですよね。
──
なるほど。
瀧本
リモートって目新しいし、
ふだんやってないことだったから、
そのぶん楽しかったけど、
でも、そのうち、
だんだん寂しくなってくると思う。
人に会わない仕事って。
──
ああ‥‥そうですね。
瀧本
結局、ぼくが、仕事を好きなのは、
人の間でやってるから、
なんじゃないかなって思いました。
──
そうですよね。ぼくも同じです。
この取材だって、
できれば、お会いしてやりたいです。
瀧本
はじめて奥野さんにお会いしたのは
『LAND SPACE』という
写真集のときだったと思うんですが。
──
スペースシャトルの写真と、
地球上の風景の写真からなる作品集。
はい、めっちゃカッコいいですよね。

瀧本幹也『LAND SPACE』(青幻舎) 瀧本幹也『LAND SPACE』(青幻舎)

瀧本
あ、ありがとうございます(笑)。
でね、なんとなく思ったのは、
コロナウィルスも、
地球規模のできごとじゃないですか。
──
ええ。
瀧本
ぼくは専門家じゃないけど、
なんかもう、
文明とか開発のスピードが速すぎて、
動物たちの生態系や環境の破壊が、
ここ100年くらいで、
急激に、一気に、進みましたよね。
だから、今回のコロナの感染拡大を、
自然から人類への警告だと、
受け止める人がいるのもよくわかる。
──
いま、自然の方へ顔が向いている人、
取材していても、たくさんいます。
瀧本
地球や自然との接し方を、
今後、考えていかなきゃいけないと、
思うようになってますよね。
──
はい。ここ1ヶ月で
30人弱の人の話を聞きましたけど、
その感じ、すごく強いですね。
瀧本
ぼく、いろんな仕事で、
誰ひとり住んでいないような僻地へ、
行くことがあるんです。
そこでボーッと景色を眺めていると、
自分の立っているこの場所も、
「ああ、天体なんだ」と思うように
なってくるんです、だんだん。
──
宇宙に浮かぶ、ひとつの星だと。
瀧本
そう。そして、
ぼくたち「人間」の住んでいるのは、
その星の上のほんの一部分。
でも、そのほんの一部分に、
一説には生物の99%以上を占める
人間と家畜が密集している。
──
ええー、そうなんですか。
ごくわずかな面積に「99%」って。
それ、仮に人体とかの話だったら、
かなりバランスを欠いた状態ですね。
瀧本
病気になっても不思議じゃないです。
これは先日ラジオで聞いたんだけど、
この50年で、地球上の湿地帯が、
50%も、減ってしまったそうです。
──
半減。
瀧本
その一方で、調べてみたら、
「200年前」の全世界の人口って
「10億人」くらいで、
「100年前」でも「16億」ほど。
それがいまや80億人近いわけです。
──
ええ。すごいな‥‥。
瀧本
地球が誕生してから46億年のうち、
この100年で、
半端じゃない速度で増えてるんです。
──
地球にしてみたら、ぼくたち人間が、
ウィルスみたいな増え方ですね。
そりゃ、いろいろ影響が出ますよね。
瀧本
だから、少なくとも、
ぼくたち人間はそのことを自覚して、
いろんなことを
考え直さなきゃならないと思うんです。
──
この、いまの不思議な時間を使って。
瀧本
うん。そういう機会にしてかないと。
──
雲を撮りながらも、そんなふうに?
瀧本
太陽が地平線に沈んでいくところを、
撮ってたんですよね、ぼく。毎日。
──
ええ。
瀧本
そしたら、どうしたって思いますよ。
地球という星のことは。

2020-05-21-THU

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