以前、ほぼ日曜日でおこなった
「本屋さん、あつまる。」というイベントで、
写真家の幡野広志さんと、
「夢眠書店」の店主である夢眠ねむさんが、
「恋と本」をテーマにトークをしてくれました
（司会はほぼ日の山下が担当しました）。
今回、幡野さんの新刊『ラブレター』の
発売を記念して、このときのお話を
ゆるゆるとした読みものとしておとどけします。
最初から最後まで、恋の話たっぷり。
「恋愛マスター（？）」のおふたりが、
いろんな方からの恋の相談に、どしどし答えます。
恋バナの時間、どうぞお楽しみください。
※ただいま渋谷PARCO８階の「ほぼ日曜日」では、
幡野広志さんのことばと写真展「family」を開催中！
（～8/21）ぜひ、ご来場ください。
夢眠ねむ（ゆめみ・ねむ）
三重県に生まれる。
年の離れた姉の影響で「渋谷系」の音楽が好き。
小さい頃からの夢である広告デザイナーを目指し、
多摩美術大学に進学したが美術家に転向。
2009年、アイドルグループ、でんぱ組.incに加入。
2019年1月にでんぱ組.incを卒業。
2019年3月に芸能界を引退した後は、
東京・下北沢にて、
これからの本好きを育てる書店「夢眠書店」を開業。
2021年には出版レーベル「夢眠舎」をたちあげる。
現在はキャラクターデザイナー、
プロデューサーとしても活躍。
Twitter @yumeminemu
Instagram @yumemibooks
幡野広志（はたの・ひろし）
写真家。
1983年、東京生まれ。
2004年、日本写真芸術専門学校中退。
2010年から広告写真家・高崎勉氏に師事。
2011年、独立し結婚。
2016年に長男が誕生。
2017年、多発性骨髄腫を発病し現在に至る。
著作・写真集に、
『他人の悩みはひとごと、自分の悩みはおおごと。
#なんで僕に聞くんだろう。』（幻冬舎）
『なんで僕に聞くんだろう』（幻冬舎）
『ぼくたちが選べなかったことを、
選びなおすために。』（ポプラ社）
『ぼくが子どものころ、
ほしかった親になる。』（PHP研究所）
『写真集』（ほぼ日）など。
最新刊は、2022年７月に発売したばかりの
単行本『ラブレター』（ネコノス）。
Twitter @hatanohiroshi
note
写真｜仁科勝介
- 山下
- 続いて、26歳の女性の方からの質問です。
- 幡野
- どうして人の結婚を
素敵だと思っちゃうんでしょうね。
実際に会ったわけでもないのに。
- 夢眠
- まぁまぁ。素敵に見えてるんですよ。
- あとは今、そのくらい
切羽詰まっているんじゃないですか？
- 幡野
- 人の結婚をいいと思いすぎてて、
それと自分を比較して
「自分は幸せじゃない」とか
決めちゃってる気がしますけどね。
- 夢眠
- そもそも「結婚をいいものだと思ってる」
ってことですし。
- 幡野
- もしかしたら、すこし幻想を
抱きすぎちゃってるかもしれない。
- 夢眠
- ‥‥あの、私はマッチングアプリを
やったことがないんで、
その点では、全然、言えないんですけど。
- 幡野
- 僕もマッチングアプリはわかんないです。
要は、婚活？
‥‥いや、そうとも限らないか。
でも「結婚したいです」って言ってますね。
- 夢眠
- 「結婚が目的」という人たちの
マッチングアプリなら、利害一致だと思うんです。
私の周りでもマッチングアプリで結婚してる子はいるし、
成功例はたくさんあるんですけど。 - ただマッチングアプリって、
ちょっと「オーディション」に近いから、
しんどいのかなと思うんですよね。
- 幡野
- ああ、選び選ばれ。
- 夢眠
- そう。指でシュッシュッてやる、みたいなのって
「情報がすごく少ないなかでの書類審査落ち」
みたいなことじゃないですか。 - で、会ったら会ったで、
「違った」とか「騙された」とか。
そういう経験ばかりが増えていくのが
しんどいのかなあ。
- 幡野
- 友達の20代後半の女性に、
マッチングアプリですごく婚活してる女性がいて、
アプリの中身を見せてくれたんですよ。 - いろんなのやってて、サービスごとに
出てくる男性のタイプが本当に全然違うの。
- 夢眠
- 「港区系」とか、「サーファー系」とか？
- 幡野
- 要は、遊びっぽいアプリはイケメン率が高いけど、
「ちょっとチャラいですよね」って人ばっかりで。 - ちょっと硬めの婚活メインみたいな感じのアプリは、
ほんとに結婚相談所的な、
手堅い感じの男性ばかり出てくるんです。 - だけどその友達は、結婚したいんだけど、
ちょっとチャラめで、仕事もややイケイケみたいな
イケメンと結婚したいんですね。
けど「手堅い結婚アプリにはそういう人が
出てこない！」と熱弁してましたね。 - そういう意味では
「アプリ自体とマッチングしてない」っていう。
- 夢眠
- なるほど、ノーマッチング（笑）。
- 幡野
- だから、会うだけだったら
たぶんいくらでも会えると思うんです。
だけど、目的がちょっと違うかなって。
- 夢眠
- だけど今、コロナ禍だから
リアルで会いづらいじゃないですか。 - 合コンとか婚活パーティーみたいな
「生で会って印象を知る機会」がないから、
アプリしかないんですよね。
- 幡野
- でもアプリって、本人同士だけで
やりとりして会うわけですよね。
けっこうリスクありません？
- 夢眠
- ある。でも職場によっては、
出会えないとかあるだろうしなぁ‥‥。 - 私、自分はどうやって出会ってたかと思うと
「偶然行った場所にいて好きになった」とか、
だいたいそんな感じなんですよね。
- 幡野
- これが30、40年前だと、お見合いとかですよね。
親戚や地域の人とかが仲人で。
- 夢眠
- 「△△さんにちょうどいい人いるのよ」
みたいな。 - 私、20歳のときに必要かと思って、
お見合い用の写真を撮りましたよ。
「恋愛できないかも」と思って（笑）。 - あとで見たら顔がパンパンで
「こんな写真使えるか！30歳の方がかわいいわ！」
ってと思ったんですけど（笑）。
- 幡野
- ああ、そうですよね。
成人式のときとかにみんな写真撮るけど、
絶対10年後には使えないと思う。
あれ、撮り方の問題もあると思うんですよ。
- 夢眠
- その写真はほんと「今の方がまし」
みたいな感じでしたね（笑）。
- 幡野
- でもいまも仲人さんみたいな、
ちょっとお節介な人がいれば、
わりとみんな結婚できる気がしちゃいますけど。
- 夢眠
- うーん、どうだろう。わかんない。
- このおたよりの方のように
「好き」って感情がわからなくなる方って
「ストライクゾーンが狭いのかな」
と思うんですよ。
- 幡野
- たぶん元彼のことが好きなだけじゃない？
引っ張られてるというか。
- 夢眠
- まだ１年でしょう？
でもまぁ、26歳にとっての１年は長いかな。
- 幡野
- そうか、まだ１年。もう１年。
- 夢眠
- あと別れ方によりそうですね。
- 幡野
- よりますよねえ。
- ‥‥でも「好き」がわからなくなるって、
どういうことなんだろう。 - 「好き」って、後追いで来る気がするけどなあ。
付き合い出してから、徐々に
どんどん好きになっていくものというか。
- 夢眠
- たぶん本当は「好き」っていう感情は
わかると思うんですよ。
だけど、今すごく好きな人がいないだけなんで、
安心してOKって感じですよね。
- 幡野
- そうですよね。
好きな人、自然と出てくるんじゃないかな。
- 夢眠
- 私、この「好きがわかりません」という質問は
いつもうまく答えられないですね。
「私は好きな人、ずっといたなあ」みたいな。
- 幡野
- 恋愛マスター（笑）。
- 夢眠
- 恋愛マスターなので（笑）。
- 付き合う付き合わない関係なく、
「あの人カッコいいかもしれん」みたいなことって、
いつもふんわりあったというか。 - 結婚してからはないけど、若い頃って
「このグループのなかでは、この人がカッコいい」
みたいなのがあるじゃないですか。
- 幡野
- はいはい。
- 夢眠
- だからこの方、マッチングアプリじゃなくて、
極端な話、道を歩いてすれ違う人をバーっと見て、
「いま通り過ぎたなかで誰となら恋愛したいか」
みたいなことをやるのはどうですか？ - 現実世界で「好き」の感覚を鍛える。
「‥‥違う、気になる、違う」みたいな。
- 幡野
- 人生、楽しそう（笑）。
- 夢眠
- ちっちゃい画面の写真で
「どうなんだろう？」と思うより、
生の人間を見て、
目を鍛えた方がいいんじゃないのかな。
顔だけじゃなくて清潔感とか、
自分の中のルールもわかりそう。
もちろん口に出しちゃダメですよ！
- 幡野
- たしかになあ。
これ、写真家が言っちゃいけないですけど、
写真なんてどうとでもなるんで、
全然あてにならないって思うんですよ。 - 大事なのは、喋ったときの雰囲気とか
相性ですから。
どんなイケメンでも、生理的に自分と
合わなかったら、無理でしょう。
- 夢眠
- あと私、昔買ってたティーン雑誌に
「背が高くて、運動神経抜群の人が
カッコいいと思う人の割合、90パーセント」
みたいな円グラフが書かれてて。
- 幡野
- ええっ（笑）？
- 夢眠
- それを見て
「そうなんだ！ 背が高くて、
運動神経がいいのがカッコいいんだ」
と思って。 - さらに下に「好きな女の子のタイプは？」
というのもあって、そこには
「背が低くて髪がロング」
みたいなことが書かれていて。
- 幡野
- うわー。
- 夢眠
- そのとき
「まずい。身長が170センチある」
みたいなね。
そこで私、一回絶望してるんですよ。
「私はもう男にモテないんだ」って、
その円グラフで思い知った。
- 幡野
- ああ‥‥。
- 夢眠
- でもアイドル活動していく中で
「身長170センチだから好きだ」って
言ってくれる人もいるのに気づくんです。
- 幡野
- うんうん。そうだ。
- 夢眠
- 活動のなかで、たくさんの人の統計を
とれるんですよね。
「背が高くて、ショートが好き」
みたいな人ってこんなにいるんだって。
そこで克服できたっていうか。 - で、自分も暮らすなかで
「私は背が低い男の人が好きだな」
って経験を積んで、今の人と出会ってるんで。
- 幡野
- そうですよね。なんか
「人口の99パーセントから嫌われてます。
でも１パーセントから好かれている」
という場合でも、
１億２千万人いたら、120万人ですからね。
合う人は絶対どこかにいますよね。
- 夢眠
- そうなんですよ。
だからその円グラフみたいなことを
「一回忘れて」みたいなのは大事な気がします。
- 幡野
- そう。
- 夢眠
- ‥‥ってことで、
いろんなところへ話が飛んだけど（笑）、
いつかいる。
- 幡野
- うん、いつかはいるんじゃないかな。
全然いると思うんですけどね。
（つづきます）
2022-08-17-WED
-
渋谷PARCO８F「ほぼ日曜日」で開催中！
