
- 開始から、約1時間が経過しました。
- Iさん
- ここまでうかがったことを理解するために、
いったん自分のなかで
反すうする時間が必要そうです。
- 糸井
- そういうものだと思いますよ。
僕は、講演のあとなどに
「レポートを書いてください」と
言ったことがないんです。
AIが的確に要約できるような内容よりも、
ボワッとした「おもしろかったなあ」
という感覚のほうが大事だと思うから。
その「おもしろかったなあ」から、
「どこがおもしろかったんだろう」
「あそこが一番気になったな」
「あのあたりは飽きたから、
あまり聞いてなかったな」と、
身体全体が感じた印象を
覚えていてくれたほうが、うれしいです。
- 糸井
- 昔、友だちだった任天堂の社長の岩田さんと、
交代で講演会をやったことがあります。
僕が任天堂で話して、岩田さんがほぼ日で話した。
岩田さんは、
「糸井さんがせっかく来てくれたから、
感想を送りましょう」と、
社員のみなさんからの感想を送ってくれました。
岩田さんは、
そんなふうにしっかりしたいい人だったんです。
でも、僕は
「岩田さん、申し訳ないけど、
うちからは感想送れないよ」と、正直に伝えました。
ほぼ日のメンバーには
「どうしても岩田さんに感想を送りたければ、
いつでも伝えるよ」と言いました。
失礼だったかもしれないけど、
それがこの会社の生き方なんです。 - うまくまとまった感想よりも、
「この話を聞けて、よかったーっ!」という、
心が膨らんだような気持ちのほうが、
じつは大事なんだと思います。
心が膨らむというのは、
新しい意味や知識や考えを入れられるお皿が
大きくなるということですから。
だからきょうも、
みなさんはレポートを出さなくていいですからね、
と、ずっと言いたかった(笑)。
- Iさん
- ありがとうございます。
一方で、絶対に書かないといけないレポートも、
ときにはありますよね。
僕は、すごく真面目な話ではない限り、
レポートの書き方で遊んでもいいんじゃないかと
思っているんです。
「与えられたこの枠のなかでどう遊ぼうかな」
と考えて実行できる人が、
「おもしろい人」なんじゃないかと。
だけど、そのおもしろさって、
学んで身につけていくものではない気がします。
となると、
おもしろさは先天的なものなんでしょうか。
- 糸井
- うーん、それは違うと思います。
「トライしていい環境」が、
おもしろいことをさせるんだと思う。
たとえば、
「きょうの僕の話を、
きちんと要約したレポートを出しなさい」
という課題に加えて
「もう1通、別のレポートをつくりなさい」
という課題が出されたら、悩むでしょう?
それは「自分にとって、この場とはなんだったのか」
を考えなければならなくて、
「自分」を出さざるを得ないからです。
そこで、「どうやって自分を出そうか」と悩むのが
「トライする」ということですよね。
そのトライする環境、あるいは時間を
どういうふうにつくるかが、
とっても大事なんじゃないでしょうか。 - なので、「誰が見るわけでもないけれど、
自分が満足するレポートを書いてごらん」
と言われたときは、
「先天的な才能」で対応するわけではなくて、
「その場をどうつくるか考える」ことで
対応するんだと思います。
「場」をどうつくるか、という試行錯誤が
いいクリエイティブだと思うし、
それは自分ひとりでできますからね。
- Iさん
- 「場」という言葉のとおり、
自分の頭を自由にのびのびさせる環境は
大事だと思います。
一方で、社会のなかには
「なんでこれをしなきゃいけないんだ」
「なんでこんなふうに言われるんだ」という
理不尽もあるように感じます。
人間の社会だけじゃなくて、
自然のなかにもきっと、理不尽はありますよね。
「ほぼ日」という場所にも、
理不尽さはあるのでしょうか。
それとも、意識してなくしていっていますか。
- 糸井
- 理不尽なことがなるべくないようにはしているけど、
それで会社がめちゃくちゃになってしまったら
生活できないので、たぶん、
めちゃくちゃにならないための対策は
していると思います。
それは僕よりも、乗組員の永田さんのほうが
よくわかっていそうだから、
聞いてみましょうか。
永田さん、ほぼ日のなかで、
「めちゃくちゃにはならないけども、自由」
という環境が成り立っているのはどうしてですか。
- 永田
- 一例ですが、パッと思いついたのは、
「時間を守る人が、時間を守らない人に対して
偉そうに言うのはよくないので、
ほぼ日ではあまり『時間を守れ』と言わない」
ということです。
そうすると、逆にみんな、
時間を守るんです(笑)。 - ほかには、たとえば「企画をいくつ出せ」のような
ノルマは、ほぼ日にはないです。
だから、企画を出さないでいようとすれば、
ずっと出さないでいることもできます。
でも、だんだん「出さない自分」が嫌になってきて、
企画を考えるようになるんです。
不条理で押さえつけないぶん、
自分で自分に課している人が多い気がします。
- Iさん
- 糸井さんが、
乗組員さんたちをすごく信頼しているんですね。
- 永田
- いや‥‥信頼されてるかはわかりません(笑)。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- いま、聞いていて思ったんだけど、
僕だけがみんなを信頼してても成り立たないね。
乗組員同士、お互いが信頼していないとね。
- 永田
- そうですね。
だから、ルールがないというのも、
けっこう厳しいことなんです。
「この人と仕事をしたいな」と思われる人には
仕事が集中するけれど、
逆に、あまり仕事を頼まれなければ
「自分は、一緒に仕事をしたいと思われる
信頼をされていないのか」と肌で感じるので。
- 糸井
- そういう環境が好きな人が、
この会社には多いのかな。
- 永田
- 反対に、守るべきルールが
明確に決められているほうがやりやすくて、
ノルマを達成していく環境のほうが楽な人は、
ほぼ日で働くのは向いていないのかもしれないですね。
- 糸井
- あと、これはきちんと
言っておかなきゃいけないんですが、
遅刻するのが褒められてるわけじゃないからね。
- 永田
- そう、遅刻の推奨はされてないですよ。
- 一同
- (笑)
(明日に続きます)
2025-06-10-TUE


